王様、募集中
【急募】王様:サインをするだけのカンタンなお仕事です
年中無休、24時間営業。
※他人より偉い権限はありません。
※たぶん、すごいと褒めてもらえます。
「何、これ?」
「求人」
募集が殺到しそうだと、ドヤ顔を決める俺。
「いや、そうじゃなくて」
「王様辞めちゃうの?」
「いずれ引退するって言ってるじゃん」
優秀な人材が集まるといいな……。
「っていうか、サインするだけの王様って完全に傀儡じゃん」
「代官や大臣が優秀なら、王様なんてそんなもんじゃないの」
「いやいやいや……」
と俺とライナがかけあい漫才のような話をしている裏で……
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「緊急速報 王様、ご乱心!」
などというニュースが飛び交っていた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
けれど、周囲の予想に反し応募者がやってきた。
とことこと歩いてくる。
とても背が低い。
いや、子どもじゃん。
いや、見た目で判断するのはよくない。
エリナのケースもあるし、聞いてみないとわからないな。
「え~と、お嬢ちゃんいくつ?」
「レイニ、6歳。王様になりにきたの」
子どもじゃん。めっちゃ、子どもじゃん。
「ここに来た理由を聞いてもいい?」
「王様なんて人生に1度なれるかどうかだから、
いっぺんやっとけってママが言ったの」
「へ、へぇ」
保護者公認なのか。
「ついでに高い宝石とか、
コッソリ買って毎月ママに送り続けるように言われたの」
ライナが頭をかかえる。
「傀儡の傀儡きたぁ~」
「ごめんね。その理由じゃ王様には採用できないんだ」
俺はできる限り優しくそう言った。
「ううん、今のはウソだよ。ホントはレイニとってもいい子」
「ホントは違う理由なの?」
「うん。パパが、新しいママを3人くらい雇うから、
毎月、お金を送ってくれって言っていたの」
ママを雇うってどゆこと?
ライナが頭をかかえる。
「父親まで、そう来たかぁ~」
ひとりめの応募者はこんな感じだった。
「次の人どうぞ」
ライナが棒読みで言う。
ものすごく厳つい顔をした大柄の男性が入ってきた。
スキンヘッド。眉ぞり。頬にキズ。
両手の小指がない。
「ダイン、52歳」
いや、歳は聞いてないよ?
「応募理由を教えてください」
「募集してたから」
うん、そうだけど。そうだけど。
「ダイン、70歳」
いや、さっき聞いたけど……って歳変わってるし。
バタバタ……と人が入ってくる。
「こんなところにいた、おじいちゃん」
「すみません。最近、この人ボケていて……」
家族が回収していった。徘徊老人だったらしい。
えぇぇ……。
「これ、もうちょっと条件出して、仕切り直さない?」
と、ライナ。
「ダメ?」
「国民全員と面接する気?」
「いや、そんな気はないです」
結局、条件を付けて募集し直すことになった。
王様に必要な条件を、代官、大臣たちと話し合うことになった。
条件かぁ。
リベル国内は、ローラの強制脳内教育で国民全員の教育が終わっている。
2歳の子でも、日本の大学並みの論文が書けちゃうくらい。
その上、何が必要?
「年齢制限をつけましょう」
「どして?」
「子供だと、
さっきの子みたいに親の言いなりで来るかもしれません」
「なるほど……」
「ボケていないことっていう条件もつけましょう」
「いや、それ見分ける方法ないじゃん」
「とりあえずは自己申告で……」
「なるほど……」
「変な人が来ないように推薦者同伴の面接にしましょう」
「推薦者が来れない時は?」
「確かめられないので落選で」
「ふむふむ……」
「顔がいい人に限定しない?」
レスタが変なことを言い出した。
「どして?」
「国の顔じゃん。カッコイイか、カワイイほうがいいじゃん」
「なるほど」
そこ! 頷くな! ライナ。
「それは却下で……」
とかいう議論の末、条件が固まった。
【急募】王様代理:サインをするだけのカンタンなお仕事です
年中無休、8時間交代制。
給与:ふつうの人と同じくらい。
年齢:20歳以上
推薦者同伴で面接に来ること。
※ボケていないこと(自己申告)。
※他人より偉い権限はありません。
※たぶん、すごいと褒めてもらえます。
これなら、まともな人が来てくれるだろう。
……たぶん。
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次回
『引退したいだけなのに』
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