王様、単独で敵国へ
「大変だ。王様がいなくなったぞ」
国内は大騒ぎだったらしい。
俺はそんなことを知らぬまま、隣国クフィール王国にいた。
「こちらでお待ちください」
俺は個室に通された。
見知った顔が、そこに待っていた。
「まさか、単独で乗り込んでくるとはね」
レイノルド・チャールズ。クフィール王国の全軍司令官だ。
もちろん、単独で来る前に、保険をたっぷりかけておいた。
「俺を傷つけることはできない」
「俺に毒は効かない」
「俺の能力を損ねることはできない」
「俺を拘束することはできない」
という4つの「ウソ」だ。
《フェイク》のスキルだ。
4つ全てが発動するまで1週間かかった。
加えて、もう1つの「ウソ」も……。
だから、ここに直接乗り込んできた。
ちなみに、俺はこれまでに、
「どこにいても、リヴァイアサンとの間を瞬間移動で行き来できる」
「俺は、絶対に殺せない!」
などの「ウソ」を発動させている。
盲点はない……はずだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
だいぶ待った。
何も動きはない。
まぁ、電撃訪問だしな。
向こうも準備が必要なのだろう。
その間、この人と2人っきりか。
この人、怖いんだよな。
投げナイフだけで、複数人を同時に殺せちゃう人だしな。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
さらに待って、やっと動きがあった。
「ようこそ、お越しくださいました。リベル王。
クフィール王国宰相エルディオ・ヴェルナーです」
握手を求められる。
手のひらに画鋲とか仕込んでないよな?
うん、大丈夫そうだ。
「リベル王国の王、アーク・リベルだ」
「このたびのご用向きは?」
「和平交渉だ」
宰相は顔をしかめる。
「内容は?」
「貴国は我が国を何度も侵略してきている。
我が国および同盟国への侵攻を全てやめてもらいたい」
「条件は?」
「本来なら賠償を求めるべきところだが、
それを無しにしてもいいと考えている」
「はははは……」
宰相は大声で笑い出した。
その後、こう続けた。
「全然、誠意が見えませんなぁ」
誠意の意味がわからん。
そっちが侵略してきたんだが?
すげぇ、ムカつく。
「ちなみに、断った場合は?」
宰相は強気で煽ってくる。
まだ攻め足りないとでも思っているのかな?
「断った場合は、貴国は消失する」
もちろん、ハッタリだ。
断っただけで国を消すつもりなんてない。
「は?」
「言葉通りだ。ハッタリと受け取るなら、それでも結構。
だが、本当にこの世界から貴国がなくなる」
「それは脅しでは?」
「我が国に頻繁に侵略を試みる連中を無くしたいだけだ。
和平に応じるなら、貴国をそういう連中とはみなさない」
宰相の手が震えている。屈辱だとでも思ってるのか?
そもそも、侵略してきたのはそっちだぞ。
「あらかじめ言っておく。
私を害そうとするなら、即刻、貴国は消えるからな」
しかし、彼らは俺に武器を向けてきた。
「これは? 一応、確認するぞ?
貴国は消失を望んでいる……ということでいいんだな?」
これで引いてくれたらいいんだけど。
「えらい自信だな。ここから無事に帰れるとでも」
ですよね~。そうきちゃいますよね。
「私が戻らなければ、この国が消える。それだけだ」
もちろん、これもハッタリだ。
だけど、こう言えば、次の対応に出るだろう。
「ハッタリだ。やってしまえ」
あ~ぁ、警告したのに。
この瞬間、俺が仕込んでおいた「ウソ」が発動した。
ふわっと世界が書き換わる感覚と共に、周囲の情景が一転した。
「クフィール王国が俺を殺そうとしたら、クフィール王国はこの世界から無くなり、国土は更地になる」
という「ウソ」が発動してしまったのだ。
武器がなくなっただけでなく、彼らは一糸まとわぬ姿になっていた。
彼らの頭の中は真っ白になった。
国という概念そのものが、消えていた。
指揮命令系統など、あったものではない。
「警告したんだがな。では、失礼する」
ちょっと強引すぎる気もしたが、このくらいやらないと、この国との戦争は収まらない気がしたんだ。
悪く思うよな。
俺はリヴァイアサンに瞬間移動する。
続けて、リベル城に瞬間移動した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
実は、これまでの「ウソ」によって、リヴァイアサンを経由することで、世界中どこでも行けるようになったのだ。
まだ行ったことない場所は無理なのだろうけど。
「お~もしろかったですわぁ~」
さっそく、ローラがやってきた。
いや、おまえの楽しみのためにやってたんじゃないからね。
その声に、周囲も反応する。
「「「王様!」」」
「これまで、一体どこに?」
「何やってんの? かきおきくらい残しなさいよ」
俺に飛びついてきて、泣き崩れるライナ。
こいつ、こんなに涙もろかったか?
「ごめんな」
エリナがとことこやってきた。
俺とライナを引き離し……
パシッ……。
エリナには、平手でぶたれた。
「心配したんだから……」
「ごめんな」
そう言って、エリナの頭をなでなでした。
ともあれ、1つ悩みの種が片付いた。
これで引退に向けて1歩前進だろう。
前進したよな?
だよな?
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次回
『王様、募集中』
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