疑惑の人
「どうしてこうなった」
俺は今、ベスティア王国で牢に入れられている。
容疑は「国王誘拐疑惑」である。
ベスティア王国の国王ヴィクトリア・ベスティア。
なぜかうちの国に居候している、謎の女だ。
ベスティア王国ニュースでは「ベスティア王行方不明」と報道されていた。
普段は幼女の姿だが、さまざまな姿に化けられる。
うちでは、オレンジ色のネコの姿から「ミカン」と呼んでいる。
そんな中、俺がベスティア王を連れて港に寄港したせいで、誘拐疑惑をかけられた。
ライナは俺を釈放するために動き回り、ローラは「おもしろいから」と事態をややこしくしているらしい。
当のミカンは、溜め込んだ政務で忙しく、俺に構っている暇はないそうだ。
というか、俺は何のために、この国に外遊に来たの?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「いやぁ、これは大変失礼いたしました」
ベスティア王国外交官ニアム・レイドルフが、ライナに連れられてやってきた。
無理矢理連れて来られている感がある。
ところどころに矢のような傷跡が見えるんだが?
ライナ、実力行使してないよね?
こうして、俺は釈放された。
レイドルフ外交官がチッと言っていた気がするが、まぁ、気のせいだろう。
一応、ミカンが俺による誘拐ではないと証言したらしい。
ベスティア王国ニュースを見ると、ミカンが俺の無罪を証言している動画が流れていた。
さすが、ミカン。頼りになるじゃないか。
仕事の束を見てウンザリした顔のミカンが映る。
「リベルオウハ、ワラワヲユウカイナド、シテイナイノジャ」
めっちゃ棒読みだ。
聞き取りにくいな。
あまりにもうさんくさい。
言わされたのではないかと報道されていた。
困るな、ミカン。ややこしいじゃないか。
「せっかくだから、ベスティア王国の王都を見て回りましょう」
腕を絡めてくるライナ。
ライナは、なんだかご機嫌だ。
魔物相手に100発くらい矢を放った後のようだ。
なんだか、スッキリしている。
ホントに誰かに矢を放ってないよね?
外交官に矢の傷みたいなのがあったのは気のせいだよね?
エリナは大反対していたけど、リヴァイアサンでお留守番だ。
ベスティア王国は、クフィール王国と戦争中。
亡命中とはいえ、エリナは敵国の王族だ。
連れていくのはまずいだろう。
ということで、ライナと町を見て回ることにした。
歓迎の式典とかもないらしい。
町を見たら、外遊終わりってことにして、国に帰ろうと思う。
「あ、疑惑の人だ」
「アーク容疑者だわ」
なんて声が聞こえて来るが、気のせいだろう。うん。
王都は、日本のような街並みだった。
でも、地上には自動車が走っていない。
地下に、運河、自動車道路、地下鉄があり、地上は自転車道と歩道になっていた。
歩道と自転車道の段差は日本より高く、歩道の幅も広い。
歩行者や自転車が自動車に轢かれることはなさそうだ。
いい町だと思う。なにより歩きやすい。
ラーメン屋、カレー屋、コーヒーショップ、スイーツのお店などなど。
食べ歩きをしながら、エリナへのお土産を見繕っていた。
せっかくだから、おいしいものがいいよね。
試食しすぎて、お腹がパンパンになってきた。
次で最後にしよう。
最後に寄ったスイーツのお店で声をかけられた。
「すまないね。うちの王様が……」
友好的な人でホッとした。
「いえ、問題ないですよ。すぐ釈放されましたし」
「あの人はネコみたいにフラッといなくなるんだよ」
あぁ、うん。
実際、ネコだしな。
「動物のう○こでも、踏んだと思ってガマンしておくれ」
そう言って、注文したチョコレートを差し出した。
ちょ……。
チョコ食べる前に聞くようなたとえじゃないんだが……。
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次回
『計画的犯行』
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