忘れてた
「何やってんの? バカなの?」
ライナにバシッと叩かれる。
俺はエリナに手伝ってもらって、これまでについた「ウソ」のうち、エイジア皇国にも影響しそうなものを確認している。
その中に、確認のためにテキトーについた「ウソ」があった。
「ネコは空を飛ぶ」という「ウソ」だ。
「それの何が問題なのじゃ」
ね? そう思うよね?
「肉屋などは肉を吊るすだろう」
「なるほど、ネコが飛んでいるから食われるのか」
苦情が結構出たんだよなぁ……。
「あと、空からネコが降ってきて、爪で引っかかれる被害も出た」
主に、俺が引っかかれていたけど……。
「どう対処したのじゃ」
「道路や市場の上を網で覆った」
「すまんが、ここでも、それをしていってくれ」
「わかった。結構大変じゃな」
皇帝は真摯にメモを取っている。
やりやすい人だ。
「他には?」
「灰も言っておいたほうがいいんじゃない?」
さすがエリナ。
俺より、俺の言ったことを覚えてる。
「灰?」
「『灰を土に撒くと、一瞬で作物が育つ』ということにしたんだ。
俺の領土になったから、ここで出た灰も同じになるはずだ」
「おぉ。すごいのぅ」
「俺の国で出た灰でしか効かないから、他国には欲しがるところも多い。かなり高値で売れる」
「そうじゃろうな」
「だから、民が木を切りすぎないように注意してくれ」
「なるほど」
そう言いながら、皇帝はメモを取る。
「それを使えば、今後、食糧には困らないのじゃな」
「その代わり、作物が余って困るから覚悟してくれ」
「あははは。民が飢えないのなら大歓迎じゃ」
エリナが、ヤバい指摘をしてくる。
「そういえば、北西部にこの石でできた山ができる。南西部にもできるって言ってもらってた」
そうだった。
100兆ガルド稼ぐために、希少鉱石の塊を作っていた。
「うっ!」
「どこかの平地が、いきなり山になってるかもしれません」
「なんじゃと」
皇帝は地図を広げる。
南西部と北西部は農村があったようだ。
「希少鉱石が採掘できるので許して……」
精製済みの希少鉱石の塊だから……許して。
「急ぎ調査させる。民が犠牲になっていないといいが……」
そう言いながら、皇帝はメモを取る。
表情は、かなり険しくなった。
さらに、ローラがトドメを刺しにいく。
「更地のことを忘れてますわぁ~」
「え? 何かあったっけ?」
「『西側の山は平地に変わる』って言ってましたわぁ~」
「え? あ? あれも?」
「場所限定せずにスキル使ってましたわぁ」
「この国って西側の山ってある?」
地図を出してもらった。
「8000m級の山脈があるぞ……」
「すみません、たぶん、そこ更地になってます」
やばいじゃん。
気流が変わって気象にも影響が出そうだな。
異常気象にならないといいけど。
その後も、エリナに思い出してもらいながら、いろいろな「ウソ」の影響を確認していった。
ひと通り終わった頃には、俺も皇帝もグッタリしていた。
……俺、いったいどれだけ「ウソ」をついたんだよ。
突然できた山と、気象への影響だけは、今後もお互いに注意しておくことにした。
さて、これで外遊の予定は一段落だっけ?
あ?
ベスティア王国に行くの忘れてた。
予定は……。
昨日じゃん。
まぁ、こっちにはベスティア王国の王様もいるし大丈夫。
……だよな?
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次回
『疑惑の人』
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