スマホって、こんなに怖かったっけ?
「どうしたのじゃ?」
オレンジ色のツインテールの幼女が現れた。
ここでは、ミカンと呼ばれているが、正体は魔王だ。
「ローラに周辺諸国の話を聞いてまして、そろそろ役職も決めないといけないかと……」
「なるほどのぅ」
そうだった。少なくともいくつかは決めておかなければ……。
直近は、大蔵、外務、運輸くらいは必要かな。
「大蔵大臣をエリナに任せたいんだけど、いいかな?」
「いいけど。お金ってどうするの?」
そうだった。ダウト王国から独立したばかりで、
国内にはダウト王国の通貨しか出回ってない。
「とりあえず、ダウト王国の通貨はナシだな」
「ところでローラ、貨幣を作る機械とか持ってない?」
「魔王領の貨幣を作る機械ならありますわぁ~」
「あぁ。でも、この際、魔王領の通貨を使えばいいか」
うちは、まだまだ小国だしな。
「通貨名はなんていうの?」
「ガルドですわぁ~」
「うちでも同じ通貨使って構わないの?」
「構わないのじゃ」
まぁ、ミカン(魔王)が言うなら、それでいいか。
「銀行はどうします? そのまま魔王領の銀行使われます?」
「それもいいかもしれんな」
「銀行の支店とかって建てないといけない?」
「エムワンを持ってくれば大丈夫だと思いますわぁ~」
エムワン?
漫才チャンピオンを異世界召喚しろということだろうか?
え? 日本から? 漫才師限定で?
「それじゃ、呼びますわぁ~」
え? 何を?
謎の機械人間が登場した。
「名前はエーティ・エムワンいいますねん。よろしゅう」
見た目は手足の生えたATMだ。
ロボが案内してくれるなら、初めてでも使えそうだ。
「ダウト王国の通貨を、ガルドに変えていきたいんだが……」
「同型がぎょうさんおるんで、国中に置けますで」
それなら、任せてみようかな。
「お金は、どこに収納されているの?」
「出金の都度、作って。入金の都度、銀行に転送や」
作るんかい?
そして、転送されるんかい?
……まぁ、奪われる心配がないのは、良いことか。
「とりあえず、これ両替してくれない」
エムワンは、音声で会話するだけでも操作できる。
これなら、機械に不慣れな人でも使いこなせるだろう。
バラバラバラ……。
ダウト王国のお金を投入した。
ATMでありがちのガ~~ッて音が続いて、
ジャララ……と、お金が出て来た。
ピピ―ッ、ピピーッ。「取り忘れとるでぇ!」
電子音だけじゃないのも素晴らしい。
関西弁なのは、どうかとは思うが。
よくできた機械だ。
そうして得た1万ガルド金貨を眺めていた。
かなり精巧で、美しいデザインだった。
熟練の職人でも、ここまで細密なものだと偽造は難しいだろう。
美しい画像と数字や文字が書かれている。
ベスティア王国国営銀行1万ガルドと書いてある。
「あれ?
今まで、魔王領って聞いてたんけど……
ちゃんとした国名あるじゃん」
「クフィール王国に、
魔王領と言われ続けて、面倒になったのじゃ。
好きな方で呼んでくれたらええのじゃ」
「それじゃ、これからは、ベスティア王国で……」
「あれ? ということはミカンにも、ちゃんとした名前が?」
「ふふっ、それは内緒なのじゃ」
ミカン(魔王)は、小悪魔っぽく笑った。
そういえば銀行って言ってたな。
「口座ってすぐ作れる?」
「もちろん、できまっせ」
「でも、スマホが必要ですわぁ~」
「スマホ持ってないんだが……」
「もぅ! 仕方ないですわぁ~」
ローラは、スマホをバラバラと20台ほど取り出した。
色も、大きさも様々だ。
「好きなの使うといいですわぁ~」
「最初にアカウント作って……、面倒なので細かい話は、エムワンに聞いて欲しいですわぁ~」
エムワン?
えーと……あぁ、例のATMロボットか。
エーティ・エムワンだっけか。
エムワンって聞くと、漫才チャンピオンを想像してしまう。
「一応、その方向を目指してるらしいですわぁ~」
ローラは俺の心を勝手に読んで、そう答えた。
こいつは、いつも勝手に人の心を読む。
いや、それよりも……
「え? マジで?」
ローラは静かに頷くと……
「漫才師で一番になってやるとか言ってましたわぁ~」
いっぺん聞いてみたい気はするが……
「でも、あの仕事はペアではしないものなので……」
まぁ、そうだろうな。
「相方おらんから、ピン芸人を目指すわ
……とか言ってましたわぁ~」
頼むから、普通にATMを極めて欲しい。
こうして、俺はスマホをGETした。
画面の大きい機種が好きだ。
だから、一番大きなものを選んだ。
電源を入れると、
スマホから無数のレーザーが出て来た。
俺の体の隅々を照らし始めた。
避けても避けても、レーザーが俺を追いかけてくる。
「うわ、なんだこりゃ……」
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