最初の標的は――アーク・リベル
「勇者を量産する」
クフィール王国のラシド教団本部で、
大司祭が、とんでもないことを言い出した。
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クフィール王国(主にラシド教団)は、
ベスティア王国(通称、魔王領)の殲滅を望んでいる。
もう数百年ものあいだ侵攻を続けてきた。
彼らの武器は神術。
自分と敵の魂を燃料にして、
魔法のような現象を起こす技だ。
当然、魂を使いきれば寿命が尽きる。
その神術を使いこなす最高戦力が「勇者」だった。
生まれながらに魔王を討つ力を持つ存在だ。
決して人格者に宿る称号ではない。
教団は、魔王を討つ力があれば、
人格に多少問題があろうとも、
人々は勇者を英雄として受け入れると思っていた。
そうして作られたのが、勇者ファリス・ロドス。
教団はファリス・ロドスを新たな「勇者」として祭り上げた。
だが、その名が広まるほど、人々の心は離れていった。
それほどまでに、
ファリス・ロドスは極悪領主として知られていた。
過酷な税。
民を虫けらのように扱う態度。
役に立たないと判断した者を、容赦なく処刑する冷酷さ。
そんな者を、誰が人類の救いだと信じるというのか。
さらに、アーク・リベルが残した「この世界にはラシド教の信者はいない」という「ウソ」。
今やラシド教を信じる者は、ほとんど残っていない。
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教団が勇者を見つけた時、その姿は本来のものではなかった。
《フェイク》によって、勇者ファリスの魂は別の肉体に宿っていたのだ。
瀕死となった勇者に《撒き戻し》の儀式が施され、魂を基準に肉体を作りなおした結果、本来の姿を取り戻した。
教団は混乱した。
それでも勇者は必要だった。
だから教団は、勇者の量産に踏み切った。
同じ姿の勇者ばかりでは、見分けがつかない。
加えて、極悪領主ファリスとの差別化も必要だった。
そこで教団は、髪色だけを変えることにした。
赤ファリス
青ファリス
緑ファリス
紫ファリス
……など
だけど、彼らは知らなかった。
ファリス・ロドスが、自分以外を虫けらとしか思っていないことを。
そんな人間が、他人と連携できるはずもないことを。
勇者は増やせても、連携までは量産できないことを。
それでも、教団は勝利を確信していた。
今度は複数の勇者を同時投入する。
負けるはずがない。
教団は本来、
先に魔王(ベスティア王)を倒すつもりだった。
だが魔王は姿を消していた。
そして勇者には、譲れない執念があった。
「まずは、あいつだ」
最初の標的は――
アーク・リベル。
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