皇帝に何があった?
「お、おい。大丈夫か」
皇帝ロン・タイルイは、縄で縛られていた。
俺たちは、縄をほどく。
どゆこと?
「あ、あぁ。助かった。礼を言う」
「誰にやられた?」
「姿は見ておらん」
こんなときは、しゃくだけど、あいつの力を頼るか。
「ローラ! 力を貸してくれ」
俺は大げさに手を振る。
「アーク。突然、どこに向かって何言ってるの?」
「ローラは、ここにいないよ」
ポン。そんな音がしてローラが現れた。
「はぁい。呼ばれてきましたわぁ~」
「やっぱり見てたか。
あんな地図を渡した時点で、ずっと見てると思ったわ」
「なかなか面白かったですわぁ~」
くそっ……。やっぱり、面白がってやがったか。
「皇帝が誰に縛られたかわかるか?」
ローラはタブレットを操作した。
「え~と、ション・ティエンリー(晟・天黎)?」
「ション大将軍だ」
軍のトップってことか。面倒だな。
でも、ションってなんか、しまりがない名前だな。
立ちションとか、そういう系の名前に思えてしまう。
もちろん、意味は違うんだろうけど。
いかん。そんなことより、今どうするかだ。
「お前の力でなんとかなる相手か?」
属国になったんだし、こんな話し方でも罰せられないよな?
「厳しいな。朕の力は軍に及んでいない」
「今なら、暗殺コースをお安い価格でご用意しますわぁ~」
ローラらしい発想だ。
「将軍を暗殺したら、後々軍を率いるのに不利だろう」
「では洗脳がおススメですわぁ~。
この会話から30分以内なら3割引きですわぁ~」
「……と言ってるけど、どうする?」
「できるのか?」
「相手次第らしいけどな」
「頼めるか?」
「では、これを……」
契約書のようなものを取り出した。
皇帝は見ないでサインした。
「どこまで洗脳するか選べますわぁ~。
皇帝に絶対服従だけでいいですのぉ~?」
「ふむ……」
皇帝は、契約書を読む。
「このローラちゃんおススメコースというヤツで」
「洗脳は、大将軍だけで大丈夫なのか?」
「あとは、宰相くらいか」
「ここに来るまでの間に宰相が急死しちゃったが……」
あくまでも、偶然を装っておこう。
「それなら、あとは、朕の思うまま動いてくれると思う」
「承りましたわぁ~。はじめますわぁ~」
「宰相が国庫の鍵を持ったままなのだが……」
「え?」
ポンと音がして、宰相の遺体と、
棺桶に入った替え玉の遺体が登場した。
「遺体ならここに……ありますわぁ~」
「ちょ、持ってきたのかよ」
念のため、胸元をまさぐってみる。
内ポケットらしいものが見つからないなぁ。
「アーク。どんどん悪人化していくわね」
ライナが引いている。
ほっといてくれ。
「そっちじゃない」
「え?」
皇帝は、宰相のパンツの中に手を入れた。
そして、そこから鍵を取り出した。
宰相は死亡時に失禁したらしく、鍵は濡れていた。
「えぇぇ……」
俺はもとろん、ライナたちも両手を開いて皇帝に向けている。
誰も触りたくないと意思表示だ。
「朕が持っているしかないのか?」
「そうしてください」
「ちょ、俺の服で拭かないで……」
俺たちは、ローラの洗脳……もとい「脳内教育」完了を待った。
「この間に衛兵に囲まれないよね?」
「この区画は、朕と宰相しか入れないので大丈夫じゃろう」
出た途端、囲まれている可能性は否定してくれないのね。
だけど、俺は大事なことを見落としていた。
この区画には、皇帝と宰相しか入れない。
なのに――
なぜ、皇帝はション大将軍に縄で縛られた?
……軍は、ここに入れないはずだよな?
俺たち、ここにいて大丈夫なんだよな?
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次回
『来ちゃった』
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