異文化交流は、トイレから
「うわぁぁぁ。助けてくれぇ」
そう言って、エイジア皇国外交官ツァーンシュエーン・ロンホアはトイレから飛び出してきた。
うん、予想通りの反応だ。
初めてのシャワートイレの反応は、そんな感じだろうな。
オレンジタルト(帆船型電動船)の船内は日本仕様だ。
さっそく洗礼を受けたらしい。
「なんで、泡が出てくるんだ?」
「泡?」
トイレに入って便器に腰かけてみる。
用を足すと、泡が出る。温水シャワーが出る。さらに風が出て乾かす。
「ホントだ。泡が出てる」
う~ん、どうやら洗浄液が泡になって噴射されてるらしい。
すごいな! ベスティアの最新式トイレ。
日本より進化してない?
やばい、俺の方がカルチャーショックを受けている。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
エイジアの人たちを送り届ける途中でイナディに寄り、香辛料をゲットする予定だ。
帆船ならイナディまで半年はかかるらしい。
でも、リヴァイアサン(クジラ型潜水艦)なら数時間だ。
リヴァイアサンの船内に案内することも考えた。
だが、あの中は一大テーマパークになっている。
カルチャーショックがハンパないだろう。
たぶん、面倒な説明が続くと思ったので、彼らの帆船と俺たちのオレンジタルトをリヴァイアサンの「クジラの口」に飲み込んでもらったまま移動する事にした。
何か特殊なクジラがいると、あいまいなウソで誤魔化しながら……。
……で、今に至るわけだが。
それで、彼らに説明した。
説明したのだが、まだ俺にも知らない仕掛けがついていそう。
「うわぁぁぁ……」
また飛び出してくる。
驚くのはいいのだけど、ズボンを下ろしたまま出てこないで!
「今度は何です?」
「便器が動いたんだが……」
え?
何それ?
俺も腰かけてみる。
「このボタンを押すと……」
おぉ、ホントだ。
動くぞ、コイツ。
便器というより、足を乗せてるところが動いている。
そういえば、足を台に乗せて曲げたほうが出やすいとかいうのを聞いたことがあるな。
すごいな! ベスティアの最新式トイレ。
日本より進化してない?
まさか可動式とかは……
やばい、俺の方がカルチャーショックを受けている。
俺はつたない知識で、彼らに説明を追加した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
皆で、昼食を食べた。
「これは……甘いですね」
「甘いですな……」
決して、料理が否定されているわけじゃない。
カレーライスの辛さの話だ。
一応、エリナもいるので中辛にしたのだが、甘いときたか。
ってゆうか、こいつら、どんだけ辛いもの食べてるんだ?
「イナディに行けば、もっと辛いものが……」
辛さは正義みたいな主張をされる。
う~ん。
次は、彼らに激辛というのを振る舞おうか?
え?
もう1杯欲しい?
いいだろう。
望み通り、うちの船で最高に辛いものをごちそうしよう。
ゆうても、ベスティアから調達したレトルトカレーだけど。
パッケージには「最高の辛さ」「危険度80%」とか書いてある。
ふふふふ……。いいぞ。
阿鼻叫喚を見せてみろ。
見るからに辛そうな匂いと色だ。
真っ赤だ。
うわ、酷いなこれ。
俺の脳が、危険だと主張している。
やばいな。やりすぎたな。
絶対、パニックになるぞ。
水を多めに用意しておくか。
「これをどうぞ」
「これは……甘いですね」
「甘いですな……」
なんだとぅ?
というか、これから向かう先では、食べる料理は超激辛しかないのか?
郷土料理を食べるのは自殺行為になるのか?
そんな不安を胸に、リヴァイアサンはイナディ沖に到着した。
いざ、オレンジタルトでイナディの港へ向かおう。
不安なんだが、超不安なのだが。
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次回
『「おまけ」扱いされる国王』
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