ちょっと寄り道するだけのはずが
「え? あんな危険なヤツらをですか」
海賊団の団長と副長は困った表情で顔を見合わせた。
どゆこと? 何か変なこと言った?
「お前たちが捕まえてる者を解放せよ」と言っただけなんだが。
「こちらです」
ライオンと何かを掛け合わせたような猛獣がいた。
翼も生えている。
「捕らえていたライラノという猛獣です」
「集団で襲ってきたので、捕まえました。全部で20匹」
「これは、そのままで」
「これじゃな~い。捕まえている人間がおっただろう」
「人間ですね? 獣人とかではなく?」
「獣人もいるのか?」
「い、いえ、言ってみたいだけです」
「いるんなら、案内しろ」
「こちらです」
牢屋に入れられていたのは、ネコ獣人のゴロちゃんだった。
……なんで、タブレットに表示されなかったの?
「ほんと助かったがね。ありがとさん」
あいかわらず、コテコテの名古屋弁だ。
船や荷物も回収させた。
ひとりで動く船なので、他の船員はいないらしい。
「ほんなら、また会おまい」
そう言って、ゴロちゃんは船を出港させていった。
……そういえば、ベスティアの船には何も制限してなかったな。
「人間も捕まえているんだろ」
「こちらです」
やっと目的の人間に会えた。
牢屋に入れられていた2人は、捕まってから日が浅いのか、さほど弱ってはいなかった。
ライナが事情を説明する。
「この島の連中は、本日、リベル王国が制圧した。王は貴君らを大切に扱いたいと言われている」
「「ありがとうございます」」
奪われていた衣類や武器、貴重品、日用品、船も回収させた。
しかし、彼らの船員は、すでに絶命していた。
「間に合わなかったか」
「それでも、王には感謝しかありません」
2人に湯あみをさせ、服を着替えてもらった。
改めて身なりを見た瞬間、ただ者ではないと分かった。
「うむ。できれば貴国について、いろいろ教えてもらえるだろうか」
2人からエイジアについて話を聞いた。
エイジア皇国は歴史ある大国。
皇帝の名は、ロン・タイルイ(龍・太叡)。
輸出品は、絹、陶磁器、漆器、お茶、火薬。
輸入品は、香辛料、鉱物、宝石、ガラス、毛皮。
「香辛料? 一体どこから?」
「エイジアとアスヴァルの間のイナディです」
帆船ならイナディまで半年、エイジアまで一年だそうだ。
リヴァイアサンなら、そんな距離も半日とかからず行けそうだ。
今回の外交を終えたら、エイジアにも寄ってみようかな。
ただ、内政はできるだけ国内の人間に任せたい。
あとで政治を丸投げできるように……。
「私たちは、これからルシャマ聖国とベスティア王国に寄る予定なのですが、皆さまはどうされますか?」
ライナが尋ねる。
「正直、今回の件があるので、ルシャマ聖国には立ち寄りたくありません。とはいえ、私たちの船は……」
船は残ったが、船員がいないため動かせないらしい。
「元々は、ルシャマ聖国を目指していたのではないのですか?」
「いえ、その先のアスヴァル王国です。あの国は火薬の上得意先でして、今回の積み荷もそれです」
なるほど。
となると、彼らをどうやって帰すか。
海賊に船員をやらせるわけにもいかない。
ルシャマ聖国で船員を雇う手もあるが、海賊を推奨している国の船員を信用する気にもなれない。
なら、俺たちが送り届けるしかない。
問題は、どこまで送るかだ。
アスヴァルまで?
それとも、その先のエイジアまで?
予定では、明日までにルシャマ聖国へ。その10日後にはベスティア王国へ向かうことになっている。
どうする?
▶コマンド
せんいんをあっせん
アスヴァルまでとどける
アスヴァル、エイジアととどける
ほうち
よし。先にアスヴァル王国へ送り届けよう。
ルシャマ聖国との外交を終えたら、また回収してエイジアまで送る。
これでいこう。
ベスティアについては、その王様がこの船に乗っているので急ぐ必要もない。
彼らにその旨を説明し、了承を得た。
彼らにはうちの船に乗ってもらった。
そして……
彼らの船「シエーンインッ(顕応)」を、オレンジタルトでけん引し、リヴァイアサンへ向かった。
やがてリヴァイアサン(クジラ型潜水艦)が浮上し、口を開ける。
オレンジタルトとシエーンインッは、そのままクジラの口の中へ入っていった。
当然、彼らはパニック状態だ。
だが、そこはスルーした。
ドック入りを完了すると、リヴァイアサンは高速でアスヴァルへ向かう。
目指すのは、首都に近いブレイズ港。
言うまでもなく、すぐに到着した。
クジラが口を開ける。
目前にはブレイズ港が見える。
オレンジタルトで彼らの船を港までけん引し、まだ滞在していたフィリップ・アスヴァル第二王子にエイジアの二人を預けた。
「数日後、また来ます」
そう伝え、俺たちは元の日程に戻る。
彼らにはリヴァイアサンの一端を見せてしまったが、口の中だけだし問題ないだろ。
さて、盛大に寄り道してしまったが――
いよいよルシャマ聖国に向かおう。
……海賊を推奨している国か。
嫌な予感しかしない。
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次回
『郷に入っては……』
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