王様、土下座中
「はい、すみません。申し訳ありませんでした。その通りです」
俺は今絶賛土下座中だ。
エリナに「無駄遣い」を責められているのである。
旧ダウト王国領を買う決裁にサインしてしまったことだ。
話がとびすぎてついていけない?
ブレイズ港はどうしたって?
被災地にいつまでも居座るのは申し訳ないので、早々に立ち去った。
話を戻そう。
旧ダウト王国領なのだがあそこは使い道がない。
「落とし穴を作れば幸せになれる」という謎信仰が広まり、国中が落とし穴だらけになった土地だ。
しかも、落とし穴には金が落ちているという噂まで広まっている。
まぁ、そうなった原因は、ほぼほぼ俺だけど。
俺の《フェイク》の力で、落とし穴を埋めることはできる。
だけど、一度生まれた信仰のおかげで、埋めても再び作られていくだろう。
さらにあの国は腐敗がはびこり、上の人間は使えない。
さらに俺たちの領地を攻めてきた連中である。
上の人間を一掃しなくてはならない。
この3つをいっぺんに……。
どうすれば?
そんなことを絶賛考えながら土下座中なのです。
「アーク、反省しないで、余計なこと考えてる」
「これは、申し訳ありません」
王様だけど、平謝り中だ。
だって、エリナが稼いできたお金をアテにして、
勝手に決裁しちゃったんだから。
「でも、買ってしまったので、今後のことを相談させて」
「うん、わかった」
「そこで、ローラさん、相談があるんですが?」
「あら、珍しいですわぁ~」
ローラがひょいと現れる。いつも神出鬼没だ。
「旧ダウト領民を再教育するのに、いくらかかりますか?」
「洗脳されるんですのぉ~?」
「再教育です」
「同じことですわぁ~」
まぁ、そうだけど。
「リベル王国民と同じ教育水準、不正の廃止、
落とし穴信仰、ラシド教信仰をなかったことにしたい」
「まぁ、贅沢ですわぁ~」
「とにかく、この前みたいに、勝手にやって後で請求はなしね」
先に宣言しておこう。
「つまり、ダウト国語とかもなくすんですのぉ~」
「うん。そこはもうどうでもいい」
ローラが2枚の紙を差し出す。
見積書
旧ダウト王国民脳内教育費
3兆ガルド
ローラ様ファンクラブ入会
今から30分以内に申し込むと3割引き
特典…長いので以下略。
さぁ、すぐにサインを
「3割引きは大きいな」
「アーク、騙されちゃダメ」
「え?」
「3割引きは見積とは別な話」
「違うの?」
「チッ……」
違うのね。
「でも、3兆ガルドって高くない」
「高いよね。ローラ、高すぎだよね」
ナイス、エリナ。
「問題が生じた場合の対応も考慮したのですわぁ~」
「というと?」
「洗脳耐性とかですわぁ~」
「洗脳言うな」
耐性ってあるのか?
「おまえの教育ってレジストされることあるの?」
「そういうこともありますわぁ~」
「たとえば?」
「エリナさんみたいな……」
え?
「ふふん。全部弾いたった……」
エリナがらしくないことを言いつつ、ドヤ顔だ。
幼女が背伸びしてるみたいで、なんかカワイイ。
この豹変ぶりは、年齢を知られたから、
ネコを被る必要がなくなった的な感じなのだろうか?
「例の教育なしで、ベスティア語話してたのね?」
「全部知ってたし……」
「6か国語話せるよ」
「マジか。すごいな、エリナ」
俺は、エリナの頭をなでなでする。
「話せるとわかったら、
年齢がバレると思って内緒にしてたんでしょ?」
ライナが容赦ないツッコミを入れてくる。
エリナは頬を膨らませて不機嫌そう。
反論しないということは、図星らしい。
しかし、俺はそういう修羅場を求めていない。
「それがわかったら、その後に追加教育するか再見積もりで」
「うん、それがいいと思う」
エリナさんの了承もとれた。
「わかりましたわぁ~」
「ということで、もっと安くなりますよね?」
でも、見積書を書き換えてもらうまでは終わらない。
「チッ……。わかりましたわぁ~」
「それで、改めて、再見積もりを……」と言いかけたら、
「落とし穴を自分で埋めさせるとかは要ります?」
追加オプションは要らないかって?
ポテトも追加でいかがですか的なヤツか?
「それはいいかな。だって、この前の戦闘で、
死んじゃった人が掘った穴もあるかもしれないから」
「わかりましたわぁ~」
ローラが2枚の紙を差し出す。
見積書
旧ダウト王国民脳内教育費
2兆ガルド
見積書
世界一高いタワーの建設
3兆ガルド
世界一? ん、何かロマンを感じるな。
そう思っていたらエリナがタワー建設の見積書を奪って、ローラに叩き返した。
「これいらない」
「チッ……」
ローラは舌打ちした。
「もっと安くなるよね?」
エリナがたたみかける。
「わかりましたわぁ~」
見積書
旧ダウト王国民脳内教育費
1兆ガルド
「うん、これでいこう」
こうして、旧ダウト王国民洗脳計画もとい、再教育計画が進められることになった。
しかし、それだけでは済まないということを、俺はまだ気づいていなかった。
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次回
『無駄遣いの後始末』
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