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ウソつき王様の引退計画(「ウソつき賢者の領地再建」続編)毎日12時更新  作者: 秋月心文


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王様、知らないところで大変なことになってます

「とにかく消火を手伝うしかなさそうだな」

 港一帯が真っ赤な炎に包まれている。

 近づくだけでこちらの船まで燃え移りそうだ。


「うん。行こう。アーク」

 エリナが俺の手を握る。


 俺たちはオレンジタルト(帆船型電動船)に乗り換え、現地に向かう。


 水系の範囲魔法を使って消火できないか試すか。

 とりあえず、港に近いところから……。


 魔法を詠唱する。

 燃えている上に、大きな青い魔法陣が出現していく。

「ウォータースプラッシュ」

 バシャッ。じゅぅぅぅ……。

 ほんの少し消えたかどうかだ。

 焼け石に水だな……。

 でも、続けるしかないか。


 かれこれ10分ほど魔法による消火を続けたが、

 全然埒らちが明かない。


「これ飲んで……」

 エリナが魔力の尽きかけた俺を支えてくれている。

ゴクッ、ゴクッ。

 エリナが出してくれたエリクサーもどきを飲む。

 魔力が満ちていく。


 気を取り直す。

 繰り返していけば、いつか消えるだろう。

 とにかく、実行あるのみだ。

 何もしなければ、何も変わらない。

 何かしていけば、少しでも進んでいくはずだ。


 足元にはエリナが持ってきたと思われる、

 エリクサーもどきがパンパンに詰まったバッグが用意されていた。

 準備万端だな。


「手を貸して……」

「うん」

 一緒に頑張ると言ってくれるのか。

 けなげでカワイイねぇ。

 俺も負けてられないな。


 さっきと同様に魔法を詠唱する。

 めちゃくちゃデカい魔法陣が出現していく。

 は?


 思わず、詠唱を止めてしまった。

「何してるの?」

「あ、あぁ。ごめん」

 疲れていたのだろう。

 魔法陣が10倍くらい大きく見えた。


 改めて魔法を詠唱する。

 やっぱり、めちゃくちゃデカい魔法陣が出現していく。

 あれえ?

 でも……まぁ、いいか。

 いい方向に動いているならば、気にせず突っ切るまでだ。


 エリナが何か歌を口ずさんでいる……。

 おわっ!?

 魔法陣がさらに10倍くらいデカくなった。

 当社比100倍……。


 ビビッて詠唱を止めそうになる。

 エリナが手をギュゥゥ……と握ってくる。

 痛いんですけど、エリナさん。

 詠唱止めるなってことかな。


「ウォータースプラッシュ」

 ドガッッッッ。

 半端ない音がして、水の束が降り注ぐ。

 下に人がいたら、水の力で死んじゃいそうで怖いくらい。

 でも、一撃で予想以上の範囲を消火できた。

 だけど、なんだろう、いつもより10倍か100倍くらい疲れる。


 何度か『超絶巨大なウォータースプラッシュ』を繰り返し、おおむね消えた。


 良かった。良かったけど……。


 港町は、すっかり炭と灰になっている。

 俺も、疲れが溜まって「灰」になった気分だ。


 もう、魔力尽きかけだ。


「これ飲んで……」

 エリナに支えられながら、

ゴクッ、ゴクッ。

 エリクサーもどきを飲む。


 フル回復した気分だ。


 とにかく、これで寄港できそうかな。

 真っ黒になった無残な港に入港する。

 港では、数人の出迎えがあった。



「ようこそ、お越しくださいましたアーク・リベル陛下。

 私はオズワルド・ヴァルター。

 こちらにおられるのは、フィリップ・アスヴァル第二王子」


「出迎え、ありがとう。アーク・リベルだ」

 そう言って、握手を求めた。


「フィリップ・アスヴァルです。お会いできて光栄です。

 消火のためにご尽力くださり、ありがとうございました。

 歓迎のために準備していたのですが……」

 消火が邪魔になっていなかったようで何よりだ。


「それよりも、まずは救助と復興を優先してください」

 まあ、外交なんて面倒だから、やりたくないのだ。

「ありがとうございます。あ!!」


 殿下は、エリナを見かけると大きな声を出した。

「あなた様は、エリナ殿下。

 行方不明と聞いておりましたが……」

 おや? エリナの知り合いとは珍しいな。


「エリナをご存じで?」

「はい、幼少期にお会いしたことが数回」

 幼少期? 最近ってことか?


「エリナ殿下。そういえば、本日誕生日でしたね。

 確か今年で100歳でしたか?」

「あ゛?」

 エリナがすごい怖い声を出した。

 こんな声も出るのね。


「あ~、え~でも、節目の歳ですし、お祝いを……」

「あ゛あ゛ん?」

 エリナがさらに怖い声を出した。

 エリナ、君の前世って、どんな人だったの?


「ク、クフィール王国の王族の方々は皆、長命種なのですよ」

 どんどん墓穴掘ってないかい?

 言わなくてもいいことを言っちゃうタイプの人なのかな。

 エリナの声量が爆上がりなんだが……。

「あ゛あ゛あ゛?」


「ん、んっ。100歳というのは、普通の種族の6歳くらいでしかないのです」

 やっとエリナのツッコミが収まった。


「年齢なんて関係ありませんよ。

 それより、誕生日だったとは知らなかったな。

 知ってたら、何か準備してたのに……」


「いい。今日、エリナと一緒にいてくれたら……」

 そう言って、エリナはギュッと俺の左腕を抱きしめる。


 横では、ライナが対応に困り、ただただ固まっていた。


「今回の火災は、クフィール王国が原因ですか?」

「え?」

 おや、違ったのかな?

 ハッカ・イタチ満載の飛行船が原因かと思ってたのだが。

「うちでは、クフィール王国がハッカ・イタチを満載した飛行船で自爆攻撃を仕掛けてきていまして、山火事が絶えないのです」

「なるほど。確かに、今回の火災の前には飛行船がたくさん襲来していたと聞いています」

 たくさん来てたのかよ。

「海の向こうに多くの飛行船が集まっていると報告を受けていたのですが、それが一度にやって来まして……」

「それは、大変でしたな」

「こちらの高射砲は領土内でないと撃ち落とせないので」

 いや、そういう安全上の問題はペラペラ話すべきじゃないと思うのだけど。

「あ!?」

 さすがに気づいたか。


「あ、そうそう」

 何か話題を変えるつもるらしい。

「例の土地を買い上げていただき助かりました」

「例の土地?」

 そういえば、何か土地を買う決裁をしたような……。

 あれ、アスヴァル王国からの申し出だったのか?

「あれ? 旧ダウト王国の土地と領民をまるごとお買い上げくださいましたよね」

 え? えぇ~?

 なんだか、知らないうちに、うちの領土が大きくなってたらしい。

 それにしても、旧ダウト王国領って、落とし穴掘りすぎてボコボコになってる場所じゃん。

 そんな場所、どうしろというんじゃ~。

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 次回

『王様、土下座中』

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