そんなこともあろうかと……
「今度は何だ? どこからだ?」
ドォォン、ドォォン、ドォォン……ドォォン
大砲の音が連続して鳴り響いている。
歓迎の空砲……とは違うようだ。
なぜなら、音の間隔がまばらだからだ。
たぶん空砲ではない。
実弾が詰まっている、マジなヤツだと思う。
一体、どこから何に向けて?
辺りを見渡すと、もくもくと煙が出ている場所があった。
火事か?
煙の発生源に長い大砲がいくつも見えた。
昔は煙がすごく出る火薬を使ってたというし、
そういうヤツか。
アスヴァル王国は火薬を使った兵器を実用化しているらしい。
おそらくは、彼らによるものだろう。
皆、一様に上を向いていた。
高射砲か……。
狙いは何だ。
空を見ると、飛行船の姿があった。
複数の穴があいて燃えながら、ゆっくり地上に落ちていく。
以前、うちにも来たクフィール王国の飛行船だ。
飛行船は地上に近づいてから派手に爆発した。
低空になってから爆発とは、自爆攻撃というやつだろうか。
爆発する瞬間、小さなものが地上に向けて大量に飛び散った。
あれは……。
小さなものは、ネズミっぽかった。
灰色の毛、小さな耳、4本脚、しっぽ。
もうこれは、ネズミ確定だろう。
あえて、撃墜されることで、アスヴァル王国内にやばいネズミをバラまく魂胆だろうか。
そういえば、フメユルウ外交官も、熱っぽかったし、
ネズミを介して流行る病気をバラまく計画なのでは?
以前、隣の領のドドソソ・ララソが似たようなことやってたしな。
何にしても、対策が必要だ。
「エリナの秘伝の薬って、伝染病にも効くの?」
「うん。効くと思うよ」
「それって、たくさん用意できる?」
「薬草を育てる土地と、ロドスの灰があれば……」
エリナまで、ロドスの灰って言うのね。まぁ、いいけど。
「今の手持ちは、どのくらい?」
「あそこのカバンにいっぱい」
デカいな。あれって小さなビンだったよな。
かなり重そうだな。意外に力持ちだったのか。
「クジラに帰れば、まだあるよ」
すごいな。
でも、せっかく名前つけたからリヴァイアサンと呼んでおくれ。
救助した人たちを引き渡した後、
俺はフメユルウに気になっていたことを伝えた。
「海にネズミがいっぱい浮いていた」
「ネズミですか?」
「尋常じゃない数だったぞ」
フメユルウは、何かを考えこんでいる。
「さきほど、クフィール王国の飛行船を撃墜したのを見た」
「おぉ!見られましたか。うちの対空砲は優秀です」
まぁ、それは認める。
まさか、そういうのを持ってるとは思わなかった。
「撃墜した時、飛行船からネズミのようなものが、地上に向けて飛び散っていたのを見た」
「え?」
「遠目で見ているので、確証はないのだが」
でも、たぶん、ネズミだと思う。
「ネズミを介して流行り病になるというのを聞いたことがある」
「……!!」
何か心当たりがあるようだ。
「実は、高熱、頭痛、筋肉痛に悩まされていて、
病院に行くと、同じ症状の患者が多いようなんだ」
もう流行ってるのね。
「何にでも効くクスリがある。
ただ、手持ちの数が限られている。
症状を軽減できるかもしれない。試しにどうだ?」
俺は、エリナの秘伝の薬を少しだけコップに入れて渡した。
「ありがとう。感謝いたします」
ゴクッゴクッ
「ネズミの対策をしないといけませんね」
「そうですね。盲点でした」
エリナの秘伝のクスリは、
飲んで、少ししたら、少しだけ症状が緩和されたようだ。
とりあえず少量でも、そこそこ効果がありそうだ。
「そんなこともあろうかと……」
「え?」
ライナが、船から大量のネコを連れてきた。
ニャーニャー鳴きながら、
フメユルウ外交官の足にスリスリしはじめる。
2匹、5匹、10匹、30匹……えらいたくさんいるな。
「こんなに連れてきてたの?」
「アークが連れてきたんじゃないの?」
「見本のつもりで、俺は3匹しか乗せてないんだけど」
他のネコは一体誰が?
「こんなに乗せてたとは初耳なんだが」
やりそうなヤツが多すぎて犯人が特定できん。
「いいじゃない。
お試し期間が好調なら欲しいと言ってくると思うわ」
「まぁ、そうかもな」
こうして、ネズミ対策としてネコを置いていくことになった。
これで一件落着――のはずだった。
……それにしても、あのネズミ。
本当に、ただのネズミだったんだろうか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ところで、どうするつもり?
「どう? とは?」
「外交日程は、先方に連絡済みなんだから、次に向けて旅立たないと……」
そうだった。クフィール王国の出方も気になるところだけど、次の寄港地もアスヴァル王国だし、何か問題があれば、そこでも話を聞けるだろう。
うちの国で問題があれば、リヴァイアサン(クジラ型潜水艦)の中にいれば連絡がくるだろう。
「次の寄港地は、何て言う港なんだっけ?」
「え~とね。ブレイズだったかな」
「英語で大火事って意味だったかな」
エリナが現代世界の補足情報を付け足す。
「エイゴ? 何それ」
当然だが、ライナには伝わらない。
ハリケーンという町が、大嵐に見舞われて、
これから行く町の名前が「大火災」って……大丈夫なの?
何かの伏線なの? じつはもう燃えてるの?
でも、約束しちゃってるから、行くしかないか。
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次回
『大火事って意味だったかな』
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