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ウソつき王様の引退計画(「ウソつき賢者の領地再建」続編)毎日12時更新  作者: 秋月心文


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18/32

港に何があった?

「えぇ? ここまで追ってくる?」

 トイレにいれば、仕事から逃げられると思ったのだが……。


 この船は、俺のスキルで作り出してるので、

 代官がスマホで俺を呼び出すと、

 俺の目の前に執務室のドアが現れるという謎仕様になっていた。

 トイレにいてもお風呂の中でも、ドアが追ってきた。


 執務室のドアを開けると、

「すぐ処理してくださいよ」

 代官がモニター越しに急かしてきた。


 一仕事を終えて、時間を見る。

 お……そろそろ、お昼か。


 俺はベスティア王国ニュースを見てから、

 スマホの電源を切った。

 こうすると、執務室のドアが追ってこないらしい。


 今のトップニュースは、ローラ様の行方不明事件だった。

 ファンクラブの人たちが悲しむ様子が写真で報じられていた。

 悲しむファンの姿の中に、この前のゴロちゃんの姿があった。


 ずっとリベル王国に滞在していたベスティアミカンは、かなり前から行方不明と言われていた。

 それより前からうちの国に住み着いていたローラが、なんで今頃ニュースになってるんだ?


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 俺は食堂に移動する。

 お昼は何かな……♪


 何でも作れる調理マシンを積んでいる。

 でも、自分の好きなものだけ食べていては偏るらしい。

 だから、何を作るかは彼女たちに任せることにした。


 俺は結婚した。

 だからといって、特に何かを変えるつもりはなかった。

 二人とも子どもなので、結婚したからといって何かするわけではない。

 ライナの方が年上だ。適齢期になるのも早いだろう。

 でも、エリナが適齢期になるまでは何もしないと決めている。


 でも、せっかく結婚したのだから、

 ひとつだけルールを決めた。


―― 一緒にメシを食べよう ――


 ただ、それだけなのだが……

 こういう何気ないことが、とても大事だと思っている。


 ・ ・ ・ ・ 食堂 ・ ・ ・ ・


 今日のお昼は、カレーだった。

 よし、みんな揃ったな。

「「「「「いただきます」」」」」


 おいしい。

 前にローラが持ってきてくれたレトルトカレーと同じ味だ。

「同じものですわぁ~」


 え?

 ここは、船の上だ。

 瞬間移動魔法では飛べないと思うのだが。

 そういえば、いただきますという声が多かった気がする。


 改めて食卓を見る。

 エリナ、ライナ、ローラ、ミカン……。

 どゆこと?


 エリナが、この前、船を生成した時の紙を見せる。

「書いてある?」

「え?」

 この船がどこにあっても、ローラとミカンは好きなときに瞬間移動で出入りできること。

「書いてあるじゃん!!」

 思わず紙を上に投げてしまった。

 もう、何してくれてるんだ。


 他にもいろいろ書かれてるんじゃないだろうな?

 無限魚雷とか、無限ミサイルとか、いろいろ書いてるし……

 みんな、知らない間に、いろんなこと書きすぎ。

「もう。不審船じゃん」

「大丈夫じゃろ。クジラにしか見えんし」

「それより、どうやって入港するんですのぉ~」

「え?」

 改めてクジラが他の国の港に入港する姿を想像した。

 う~ん……。

 これは、ないな……。

「船の上に乗っていけばいいんじゃない?」

 クジラの上に人が乗った状態で入港?

 いや、その絵柄は、もっとないわ。

「大丈夫じゃ。ちゃんと用意しておいたから」

「え?」

「格納庫に置いてある」

「は? 格納庫?」

 なんか不穏なワードを聞いた気がするんだが。

 まぁ、食後に行ってみるか?


 ・ ・ ・ ・ 格納庫 ・ ・ ・ ・


 格納庫はクジラの口と内部隔壁を開けることで、外に出られるようになっていた。


 そこには、普通の帆船っぽい見た目の船があった。

 EVって書いてあるから、電動で進むらしい。

 帆船にEVって書く必要ある?

「なるほど、これで移動するのね」

 まぁ、アリかな。EVの文字以外は……。

「一応、どんな攻撃でも通用しないことにしたのじゃ」

「……」

 また、ミカンのしわざかよ。

 う~ん、まぁ、いいけど。


「あの、デカいドローンみたいなヤツは何?」

「たまには、空を飛んでみたくなるじゃろ?」

 これもミカンのしわざなのね。

「一応、どんな攻撃でも……」

「あぁ、はい、わかりました」

 これもか……。

 武装は……いろいろついてそうだけど、聞かないでおこう。


「それにしても、全然揺れないのが不思議ですわぁ~」

「まぁ、下手に揺れると酔うかなと思ったんだ。

 この世界で、まだ船には乗ったことなかったんで」

「いえ、そうではなくて……」

 ローラは何か言いたそうだ。

 というか何か不満そうだ。


「揺れると酔うかもしれないじゃん」

「ローラがわざとに大嵐にしてみたのに揺れないのじゃ」

「何してるんだ。壊れたらどうする?」

「いつかは、試した方がいいと思いますわぁ~」

 まぁ、そうだけど……。

 俺はまだ気づかなかった。

 この嵐が、後々面倒なことを引き起こすことを……。


「アーク。そろそろ見えてくる頃じゃない?」

 ライナがそんな声をかけた。

 そろそろ目的地が見えてくる頃だ。

「そうだな、艦橋に行ってみるか」

「艦橋って……」

 エリナがつっこむ。

 この船の操艦は、基本的に全自動だ。

 外の景色は、クジラの目を通して行っている。

 俺が艦橋と呼んでいるのは、クジラの頭なのだ。


 ・ ・ ・ 艦橋(自称) ・ ・ ・


 遠くに最初の寄港地が見えてきた。


 映像をズームアップする。

 まだ小さい。


 もっとズームアップする。

 ……どこまでズームアップできるんだ?


 いろいろな状況が見えてきた。

 港のまわりには、家とか板とか木とか、いろんなものが浮かんでいる。

 入港しにくそうな港だな。


 いや、なんか違うぞ。

 そう。

 目前に広がっていたのは、壊滅した港だった。

 まるで、大嵐にあったみたいに……。

 困ったことに、その大嵐の原因には、とても心当たりがあった。

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 次回

『海に浮かぶもの』

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