港に何があった?
「えぇ? ここまで追ってくる?」
トイレにいれば、仕事から逃げられると思ったのだが……。
この船は、俺のスキルで作り出してるので、
代官がスマホで俺を呼び出すと、
俺の目の前に執務室のドアが現れるという謎仕様になっていた。
トイレにいてもお風呂の中でも、ドアが追ってきた。
執務室のドアを開けると、
「すぐ処理してくださいよ」
代官がモニター越しに急かしてきた。
一仕事を終えて、時間を見る。
お……そろそろ、お昼か。
俺はベスティア王国ニュースを見てから、
スマホの電源を切った。
こうすると、執務室のドアが追ってこないらしい。
今のトップニュースは、ローラ様の行方不明事件だった。
ファンクラブの人たちが悲しむ様子が写真で報じられていた。
悲しむファンの姿の中に、この前のゴロちゃんの姿があった。
ずっとリベル王国に滞在していたベスティア王は、かなり前から行方不明と言われていた。
それより前からうちの国に住み着いていたローラが、なんで今頃ニュースになってるんだ?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
俺は食堂に移動する。
お昼は何かな……♪
何でも作れる調理マシンを積んでいる。
でも、自分の好きなものだけ食べていては偏るらしい。
だから、何を作るかは彼女たちに任せることにした。
俺は結婚した。
だからといって、特に何かを変えるつもりはなかった。
二人とも子どもなので、結婚したからといって何かするわけではない。
ライナの方が年上だ。適齢期になるのも早いだろう。
でも、エリナが適齢期になるまでは何もしないと決めている。
でも、せっかく結婚したのだから、
ひとつだけルールを決めた。
―― 一緒にメシを食べよう ――
ただ、それだけなのだが……
こういう何気ないことが、とても大事だと思っている。
・ ・ ・ ・ 食堂 ・ ・ ・ ・
今日のお昼は、カレーだった。
よし、みんな揃ったな。
「「「「「いただきます」」」」」
おいしい。
前にローラが持ってきてくれたレトルトカレーと同じ味だ。
「同じものですわぁ~」
え?
ここは、船の上だ。
瞬間移動魔法では飛べないと思うのだが。
そういえば、いただきますという声が多かった気がする。
改めて食卓を見る。
エリナ、ライナ、ローラ、ミカン……。
どゆこと?
エリナが、この前、船を生成した時の紙を見せる。
「書いてある?」
「え?」
この船がどこにあっても、ローラとミカンは好きなときに瞬間移動で出入りできること。
「書いてあるじゃん!!」
思わず紙を上に投げてしまった。
もう、何してくれてるんだ。
他にもいろいろ書かれてるんじゃないだろうな?
無限魚雷とか、無限ミサイルとか、いろいろ書いてるし……
みんな、知らない間に、いろんなこと書きすぎ。
「もう。不審船じゃん」
「大丈夫じゃろ。クジラにしか見えんし」
「それより、どうやって入港するんですのぉ~」
「え?」
改めてクジラが他の国の港に入港する姿を想像した。
う~ん……。
これは、ないな……。
「船の上に乗っていけばいいんじゃない?」
クジラの上に人が乗った状態で入港?
いや、その絵柄は、もっとないわ。
「大丈夫じゃ。ちゃんと用意しておいたから」
「え?」
「格納庫に置いてある」
「は? 格納庫?」
なんか不穏なワードを聞いた気がするんだが。
まぁ、食後に行ってみるか?
・ ・ ・ ・ 格納庫 ・ ・ ・ ・
格納庫はクジラの口と内部隔壁を開けることで、外に出られるようになっていた。
そこには、普通の帆船っぽい見た目の船があった。
EVって書いてあるから、電動で進むらしい。
帆船にEVって書く必要ある?
「なるほど、これで移動するのね」
まぁ、アリかな。EVの文字以外は……。
「一応、どんな攻撃でも通用しないことにしたのじゃ」
「……」
また、ミカンのしわざかよ。
う~ん、まぁ、いいけど。
「あの、デカいドローンみたいなヤツは何?」
「たまには、空を飛んでみたくなるじゃろ?」
これもミカンのしわざなのね。
「一応、どんな攻撃でも……」
「あぁ、はい、わかりました」
これもか……。
武装は……いろいろついてそうだけど、聞かないでおこう。
「それにしても、全然揺れないのが不思議ですわぁ~」
「まぁ、下手に揺れると酔うかなと思ったんだ。
この世界で、まだ船には乗ったことなかったんで」
「いえ、そうではなくて……」
ローラは何か言いたそうだ。
というか何か不満そうだ。
「揺れると酔うかもしれないじゃん」
「ローラがわざとに大嵐にしてみたのに揺れないのじゃ」
「何してるんだ。壊れたらどうする?」
「いつかは、試した方がいいと思いますわぁ~」
まぁ、そうだけど……。
俺はまだ気づかなかった。
この嵐が、後々面倒なことを引き起こすことを……。
「アーク。そろそろ見えてくる頃じゃない?」
ライナがそんな声をかけた。
そろそろ目的地が見えてくる頃だ。
「そうだな、艦橋に行ってみるか」
「艦橋って……」
エリナがつっこむ。
この船の操艦は、基本的に全自動だ。
外の景色は、クジラの目を通して行っている。
俺が艦橋と呼んでいるのは、クジラの頭なのだ。
・ ・ ・ 艦橋(自称) ・ ・ ・
遠くに最初の寄港地が見えてきた。
映像をズームアップする。
まだ小さい。
もっとズームアップする。
……どこまでズームアップできるんだ?
いろいろな状況が見えてきた。
港のまわりには、家とか板とか木とか、いろんなものが浮かんでいる。
入港しにくそうな港だな。
いや、なんか違うぞ。
そう。
目前に広がっていたのは、壊滅した港だった。
まるで、大嵐にあったみたいに……。
困ったことに、その大嵐の原因には、とても心当たりがあった。
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次回
『海に浮かぶもの』
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