善意には値札がある
「アスヴァル王国の船団が現れました」
今度は何だ?
前回と違って、1隻ではないらしい。
地下鉄で港に向かう。
◇ ◇ ◇ リベル港 ◇ ◇ ◇
港に着くと、まず周囲を見渡した。
良かった。この前来た時と見た目は変わらないようだ。
あいつら、勝手に作り変えるから、時々、確認しないと。
今回現れたのは、前回と同じ帆船だが、数が多い。
パッと見た感じ、2種類の船が見える。
3本マストの上に見張り台がある細長い船には、左右に大砲が装備されている。
前回来たのと同じ型だ。あれが、軍艦なのだろう。
白旗を掲げ、敵意がないことを示している。
オオカミの国旗から、アスヴァル王国の船だとわかる。
一方、1本マストで見張り台のない船は、幅が広く、大砲も積まれていない。
あれが、商船なのだろう。
それが、3隻ほど来ている。
全部停泊できるのか?
停泊できちゃった。
軍艦と商船から、何人かの人が降りてきた。
いわゆる偉い人なのだろう。
横では、自称外交官のライナが、見奇麗なズボンスタイルの衣装で出迎える準備万端だ。
すごいな。いつの間に作った?
「ようこそ、リベル王国へ。
この国で外交を任されています、ライナ・リベルです」
そう言って、ライナは握手を求めた。
「私は、アスヴァル王国で外交を担当しております。
大臣のウクスツヌ・フメユルウです。
このたびは、通商の条約をお願いしたくて参りました」
今度はウの段か。呼びにくいな。
ウノダンって呼んだから怒られそうだな。
「フメユルウ様、歓迎いたします。
さっそく、条約の条件を決めていきましょう。
ここでは何ですので、まずは我が国の城へご案内します」
ローラが地下鉄に乗るためという名目で、彼らの顔写真を撮っていく。
もちろん、他に目的があることは知っている。
心を読むとか、そういうことが……
でも、俺には害はなさそうなので、見て見ない振りをした。
地下鉄で移動中に、外交官がライナと情報交換をしていたのだが、気になることを言っていた。
アスヴァル王国に侵略をしかけていたダウト王国は、滅びたらしい。
俺たちが飛行船を止めたことで、物資の補充や神術使いの派遣が止まったのが大きかったらしい。
それなら、陸路で通商の申し出があっても良さそうだが、旧ダウト王国領はあちこちに落とし穴があるおかげで、まともに物流ができない状態になっているらしい。
◇ ◇ ◇ リベル城 ◇ ◇ ◇
提示してきた条約の内容は……
関税はなし。
向こうが一番欲しがっていた灰の取引条件は、リベル王国からの指示に従うと書かれていた。
なるほど、わかってるじゃないか。
増産されてはげ山が増えても困るので、薪との物々交換に限り取引可という旨を追記した。
リベル王国内で、アスヴァル王国の商人が自由に行動したり、建物を購入できる範囲は、港に限定する。
アスヴァル王国でも、リベル王国の商人が自由に行動したり、建物を購入できる範囲は、港に限定する。
滞在中に何か問題が起こった時は、滞在国の決まりで処罰。
ただし、処罰前にその国へお伺いを立てることとする。
条約の書面には、既に向こうの国王のサインが書かれてあった。
灰の取引に関して、一文を追記したが、元々、取引条件はリベル王国からの指示に従うと書かれていたので、問題ないそうだ。
他の条件についても、問題がないと思った。
なので、条約を締結するサインをした。
今後、両国が発展していくことを望みたいものだ。
こちらから売れるものは、
薪を燃やした灰(《フェイク》効果で畑に撒けば翌日収穫)、
ネコ(領内で増えすぎ)、
農産物(灰の効果で農産物が余り気味)、
日用品(職人を優遇したらすごいの作ってきた)、
武具(剣、盾、鎧など。火薬やローラ由来のものは含まない)、
金(なぜか余っている)、
純度100%精錬済みの高純度オリハルコン。
むこうから買えるものは、
薪(森林資源豊富)、
海産物(カニとかサケとか、寒い地方の水産物)、
乳製品(畜産が盛ん)、
クランベリー、
ウサギやオオカミの毛皮(謎の効果があるらしい)、
宝石、
石油(少し驚き)、
低純度オリハルコン(精錬技術が低く高純度は作れない)
通貨は、ベスティア王国貨幣で構わないそうだ。
オリハルコンがダブってるので、こちらが買うことはなさそうだが、うちのほうが純度が高いので、向こうが買ってくれるかもしれない。
海産物は、港ができたので、こちらでも採れるようになるだろうけど、漁業はこれからだしな。
それに、向こうでしか採れない地域特有の海産物もあるかもしれない。
石油を商材にしているので、何に使っているのか聞いてみたが、ストーヴの燃料に使ってる程度で、動力としては使っていないようだ。
うちは、灰の生産のためにも、暖房を石油に変えるのはデメリットがある。
王都周辺は、ローラがガスを普及させてしまったので、今さら感がある。でも、いつか石油を動力に生み出す手段として使いたい。
うちの畜産が未成長だったのは、反省点だ。
今後、うちでもはじめていきたいものだ。
商人たちが互いの商品を見せ合い、商談の機会を得ようと躍起になっていた。
向こうから来た商人の中には、今日中にリベル港での物件を見定め、拠点にしようとしているものたちがいた。
さすが商人、動きが早い。
向こうの商人が、海産物を持って来てくれたので、今日はカニを食べることができそうだ。
こちらも船を作っていかないといけないな。
先日の脳内教育で、
現代並みの教育水準になってるのでは?
もう金属の船も作れちゃうんじゃないの?
そんなことを考えていたら……
ローラが何枚かの紙を渡してきた。
何これ?
請求書
国民脳内教育費
1兆ガルド
請求書
港および造船施設建設費
5兆ガルド
請求書
城建設費
1兆ガルド
請求書
地下鉄建設費
5000億ガルド
他にも、まだ、同じような紙が……
え? 善意で作ってくれてたんじゃないの?
--------------------------------------------
次回
『そのサイン、本当に大丈夫?』
--------------------------------------------
お読みいただき、ありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけましたら、
★や【ブックマーク】で応援していただけると、
今後の創作活動の励みになります。




