消える飛行船
「ちょっと待て、デカすぎだろ。あれ!」
アスヴァル王国の人たちは、その日のうちに帰国した。
その夜俺たちは、
彼らの情報の真意を確かめようとしていた。
そこで、見張っていたのだが、簡単に見つかった。
黒塗りで夜空に溶け込むように工夫されていたが、
想像以上にデカいヤツだった。
前回、ダウト王国と戦ったとき、
空からの攻撃は予想すらできず、平面的にしか警戒してなかった。
だから、クフィール王国のものだろうと予想し、
夜にその方向に警戒して待ち構えていた。
そうしたら、確かに飛んでいた。
東側の山の上を飛んできていたとは。
「なんで山の上なんだろ」
「気がつかれんようにってのもあるやろけど、教団の総本山が山の上だからやないかな」
「そうなんだ」
領空侵犯なのに、誰も対処していなかったとは……。
確かに「空の警戒をお願い」とお願いしたことはない。
ないんだけど……。
うちに駐留してるナニワ機甲師団長とか、
絶対気づいてたよね?
気づいてたよね?
「あれ、落とせる? ドローンでビビビっと」
「レーザーでっか? 落とせるけど、お勧めしまへんなぁ」
いけいけGOGOのナニワとは思えない返答だ。
「どして?」
「あんさんの領地に落ちまっせ」
「うん、下、山じゃん」
市街地ないし犠牲者出ないよね?
「燃えまっせ」
「うん、燃えるだろうな」
「いや、山の方が」
え? どゆこと?
「あれ、ものすごい可燃物ですねん」
「マジか」
「ええ そやから、放置かなって思うとったんや」
うぐぐ……。
あんなデカいのを、領空侵犯を放置するのは嫌だな。
なんかないかな。
相手が困りそうな「ウソ」は……。
お!、ひらめいた。
「クフィール王国の飛行船は、
俺の領地の上を飛行した時点で、運んでるものが空になる」
という「ウソ」をついた。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
発動したらしい。ちょっと長すぎるかと心配してたんだけど。
でも、リキャスト音は鳴らなかった。
俺のスキル《フェイク》は、
脳内にそれが鳴らないと、次の「ウソ」を発動できないのだ。
だけど……。
なんかナニワがこっちをジッと見ている。
何か言いたそうだ。
ドォォォン……。
音の方を見る。
飛行船が山に墜落した。
え?
山が燃え始めた。
「言わんこっちゃない」
「なんとかならない?」
「そういう装備は持ってまへん」
マジか。
ベスティア王国なら、何でもできるのかと思ってたのに。
なんかないかな。
「ウソ」はまだリキャスト音が鳴ってないので使えない。
俺は何が使えたっけ?
そういえば、ファリス・ロドスと体を入れ替えた時、
あいつの魔法を全部使えるようになってたな。
水系の広域殲滅魔法を試してみよう。
俺は詠唱を始めた。
山の上にデカい魔方陣が出現した。
詠唱を練り上げていく。
魔方陣が、何層にも重なっていった。
自分でそれを詠唱しているんだけど、
見ていて、なんだか神秘的だ。
発動すると、空中に巨大な水の立方体が出現した。
それはゆっくりと山を覆っていき、
延焼を支えていた酸素を奪い去った。
もとは、そうすることで、生物の呼吸を奪い、
死に至らしめるという魔法らしい。
今回は、火に使ったが、効果的に効いてくれた。
山火事を鎮火させることができた。
「なんだったんだ?」
「パイロットまでおらんようになったら、墜落もしますやろ」
おおぅ; 確かに。
「たぶん、明日も飛んで来るよな?」
リキャスト音が鳴ったら、次の「ウソ」で修正しなきゃ。
「あ、また、来よったで」
やめて……
そんな心の声もむなしく、次の飛行船が向かってきていた。
しかも、今度は2隻かよ。
リキャスト音が鳴った。
おっし……。
「クフィール王国の飛行船は、
俺の領地の上を飛行した時点で、消える」
という「ウソ」をついた。
澄んだ不思議な音が脳内に響いた。
空気が一瞬入れ替わる感覚がした。
発動したらしい。
「ウソ」の上書きなので発動するか、少し心配だったが杞憂だったようだ。
飛行船は、次々と消えていった。
その後も、その後も……
って、どんだけ来てるんだ。
毎晩、こんなに飛んでたとは、怖い、怖い。
翌日、勇者赤ファリス、青ファリス行方不明という知らせが、伝わってきた。
そのネーミングは、どうなの?
そう思ったが、昨日のウソで消えてくれたのなら、しめたものだ。
しかし、その翌日、勇者赤ファリス、青ファリス復活との知らせが届く。
どゆこと?
俺たちは知らなかった。
勇者ファリスは、いくらでも生産できる存在になっていたことに。
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次回
『海から来る侵入者』
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