9、ズルタン、初恋③ 手紙
ズルタンは、自室に戻り、手紙を開けた。
手紙には、
ズルタン様、あの夜は、助けて頂いてありがとうございます。私は、あの夜にあなた様に救って頂いた内の一人、名をエテルニータと申します。本当は、直接お礼を申し上げたいのですが、私とても人見知りで、人の顔を見るのが苦手なので、今回失礼になると知りつつ、このような形でしかお礼を言うことができず、大変申し訳ございません。
私は、あの夜恐怖に震えていました。寝ているところを突然わけもわからないうちに担ぎあげられ、縛り上げられ、猿轡を、はめられました。檻の中に放り込まれたとき私は、恐怖の絶頂でした。この世の終わりかと思い泣いていた時にあなたと目が合いました、その時私はどんなに安心したことか、そのことを、手紙では伝えらないことを悔しくさえ思います。でもそのあとズルタン様が、殴られ気絶したときに私は、もう恐ろしくなって意識を無くしてしまいました。次の日私は、自分の家で目を、覚ましました。泣いて取り乱し私は母に、泣きつきました、落ち着きを取り戻し、事件のあらましを聞いたところ、あなたの名前を知りました。世間ではフォルトゥーナ様が、英雄扱いされております。私はそのことについては、不満はありません、でも悔しくて悔しくてたまらないのは、村人たちの間でも母でさえもフォルトゥーナ様の、お話ばかりだということです。私にとっての救世主、騎士様はズルタン様あなたです。繰り返しになりますが、あの恐ろしい夜、あなたの瞳が私に与えてくれた安心感は、図りしれません。本当にありがとうございます。でもズルタン様は、疑問に思われるかもしれません。それはなぜ手紙を出すのに、6日もかかっているのかということです。これについては、恥ずかしいですが私は本当に人見知りで、この手紙を書いているときもあまりの恥ずかしさで、何度赤面したかわかりません、3日かかって手紙を何とか書き上げましたが、出すのにさらに3日悩みました。この手紙をお読みになっているころには、もうお分かりかと思いますが、私は本当に人と話すのが苦手なのです!だからこの手紙を渡すとき、もし嫌われてしまったら、この手紙を読まずに捨てられてしまったらと思ったら、私怖くなってしまって、、、ズルタン様をこのようにして疑うことも心苦しかったです。結局私は、煩悶に耐えられず、手紙をお渡しすることを決心しました。お手紙長くなってしまって申し訳ございません。最後になりますが、今度しっかりお礼がしたいので、2日後に二人で一緒にどこか、お出かけしませんか?村のはずれに、大きな楠の木があるのはご存じでしょうか、2日後のお昼、私そこで待っています。お弁当も私が持っていくので手ぶらで来ていただいて構いません。もしよろしければですが。
私の愛しの騎士様ズルタン様へ
エテルニータより
「こりゃお前のこと完全に好きだぜ!!!やったなズルタン!」
「お兄さん、いつの間に帰ってたの!ノックぐらいしてよ!」
ズルタンは顔を真っ赤にして、叫んだ。
「いやごめん、さっき帰ってきたところだ、それにしても初彼女じゃないか、ズルタンも隅に置けないな。」
「だから彼女じゃないって!からかうのはやめてよ兄さん!」
「でもこりゃ完全にお前のこと好きだぜ!誰が見ても明らかだよ!」
「でも彼女、手紙を渡すとき、全然こっちすら見ずに行っちまったんだぜ!」
「お前も女心がわかんないやつだな!」
「兄さんは、わかるってのかよ!」
「お前よりは詳しいつもりだ!」
フォルトゥーナは、いつもより興奮していた、冷静な彼にしては珍しいほどに。
「そりゃ兄さんはモテるだろうけどさ、、でも、」
「でもなんだ!」
「その、、、行かなきゃダメかな?そのピクニックに?」
「なんだお前そんなんこと、思ってたのか!絶対行けよ!絶対いけ!」
「でもその子、髪が長くてどんな顔かよく見えなかったたんだ。」
「それがどうした!行かなきゃお前を引っ張ってでも、連れて行くからな!」
「えぇ~」
2日後ズルタンは、エテルニータに会うため。家を出た。ズルタンは、普段着で行こうとしたのだが、兄はそれではかっこが付かない、女の子と会うには最初の印象が重要だからなと言って、自分の少しおしゃれな服を、ズルタンに貸し与えた。ズルタンは、さすがに緊張して昨日はうまく寝付けなかった。村はずれの楠の木は、ズルタンの家から歩いて30分ほどの距離だった。ズルタンは、朝が開けてまだ間もないのに朝食を食べてからすぐに出発した。昼までにはまだかなり時間があった。女の子と二人きりで、会うのはもちろん初めてのことなので、ズルタンは胸が今までにないほど高まった。
「それにしても、村はずれの楠の木か、ずいぶん人気のない所を選んだな。」
ズルタンは、自分の緊張をほぐすように、わざとらしく呟いた。
待ち合わせ場所に近づいてきたとき、ズルタンは信じられないものを見た。エテルニータが、もう到着しているのが遠目からでも分かった。彼女の長い髪が、なびくのが見えたからすぐに分かったのだ。
エテルニータは、いったい、いつからいたのかわからないが木によりかかり、寝ていた、顔はやはりその長い髪に隠れて、よく見えなかった。服装は、清楚な薄赤いワンピースで、麦わら帽子をかぶっていた。傍には、昼食が入っているであろう、葦で編まれたおしゃれな籠があった。
すーすーと奇麗な、寝音をたてて、エテルニータは心地よさそうに寝ていた。
「一体、いつからいたんだ、、僕も結構早く来たはずだけどな、、寝かしておくか、」
ズルタンも木によりかかって、上を見上げた、楠の木が夏の爽やかな、風に揺らされて奇麗に日の光が差し込み2人を照らした。




