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ズルタン戦記  作者: えんせい


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4、彼は愛を見つけるの?①

あの夜から、5年の月日が流れた。ズルタンは、年を重ねるごとに少しずつだが、明るくなっていった。友達も、1人だができた。ズルタンに似て寡黙で、自然が好きな少年で名をドルークと言った。彼は、1人で森に入ることは少なくなった。


成長していくにつれ、ズルタンは、家事を手伝うことになった。最初は皿洗いから始まったが、徐々に犬の餌やり、犬舎の掃除と、することが増えていった。ズルタンは、相変わらず犬が嫌いだったが、真面目に仕事こなした。要領こそ悪かったが地、道に仕事を手伝った。だがそれは、彼の根が真面目なのではなく、ただズグリが怖いから仕方なく、真面目にやっているに、過ぎなかった。ズグリとラシケスは、相変わらず彼を見下していた。


だが、手伝いが辛いときズルタンは、夜こっそり家を抜け出し夜風を浴び、星を見上げる習慣が出来た。


兄の、フォルトゥーナの、仕事ぶりは別格であった。すべての動作が素早くそれでいて丁寧だった。13歳になっていたフォルトゥーナは、10歳の時にウィドックス家伝統の、犬の試練をしたが、そのようなもの不要だった。なぜなら彼が犬の目を見た瞬間、急速に吠え止み、彼を主人と認めたからだった。


フォルトゥーナの性格は、ますますりっぱりなった。重たい荷物を持っている老人がいれば代わりに持ち、手作りのおもちゃを作っては、村の子供たちにプレゼントした。


毎日が、穏やかに過ぎていたある日、それは起こった。


それは、ある春の穏やかな日の、昼頃のことだった。


ウィドックス家では、食事の準備が終わり、全員が食卓に着いたとき、今まで聞き慣れない声が響いた。


「おーい!ズグリは、いるか!おーい!」


「ちっ誰だ、飯の時間だぞ。おいラシケス見てこい。どうせどっかの、あほだろ。」


ズグリは、めんどくさそうに呟いた。


「はい。」


ラシケスは、扉に近づき「どなたですか。」と尋ねた。


「俺だクルー・ジストーだ!いるかズグリ?俺だー!。」


「少々お待ちください。」


ラシケスは、食卓に戻り「クルー・ジストーと名乗っておいでです、どうなされますか。」と言った。


「何!クルー様が!それは大変だ!」


相手の名前を聞くなりズグリは、ドアに飛んで行って、急ぎ開けた。


「久しいな、ズグリよ!元気にしておったか!」


「クルー様、またお目にかかれ光栄でございます。」


先ほどの態度とは、打って変わってりズグリは、慇懃に挨拶をし、跪いた。


「まあ堅苦しいのは、よせ!わが友よ!実は今日は、頼みがあって来たのだ。犬を5頭ほど貸してはくれんか、裏の広場も使いたい。」


「もちろんですとも。おい!ラシケス、犬を5頭凶暴なやつを選んでこい!しかし何に使われるので?」


「内緒じゃ!その前にお前の住んでいる、家の中を少し見たい、見てよいか?」


「もちろんです!どうぞご自由に見ていってください。」


「むっ、何やら美味しそうな匂いがするな!」


クルーは、足早に匂いのする方に向かった。ズグリは、慌てて追いかけた。


「おおっ!おいしそうではないか!よい食事は、人生において2番目に、大切だからな!」


フォルトゥーナとズルタンは、いきなり入ってきた人物を、訝し気な目で見つめた。身長は、160cmほどの中肉中背、年は50代か60代の男で、顔はそこまで特徴的ではないが、髭が胸まで垂れるほど長く、それが目を引いた。


「これがお前の息子たちなのだなズグリ。いい顔つきをしておる。」


「ありがとうございます!身長の高い方が、長男のフォルトゥーナ、あっちの暗いのが次男のズルタンです。おいっ!お前たちも挨拶をしろ!このお方は、ルオーニス王国、南部を総べるクルー・ジストー様だぞ!」


「ああ、よいよい、いきなり押しかけたのは儂じゃ。食事中すまんの。フォルトゥーナにズグリ。さて突然じゃが、ここにいる全員に質問じゃ!この世で一番大切なものは何だと思う?フォルトゥーナ?」


クルーは、奇妙な薄笑いを浮かべ質問した。食事前の急な貴族の来訪、さらに突然の質問、普通なら言い淀むところだが、フォルトゥーナは、冷静に答えた。


「愛で、ございましょうか。」


「うむ!惜しいの!だが正解は子供じゃ!よいかフォルトゥーナよ!国を動かすのは、いつも人、小麦を作りそれをパンにするのも人、敵が来てそれを防ぐのも人、人あっての王、人あっての貴族、人あっての愛、それら全てはすべて子供あって。世界は子供でできておると言っても、大袈裟ではないだろう。」


「はっ、そのように思います。」


フォルトゥーナが応えた。


「うむそうじゃろ!そうじゃろ!ズグリ、お前はいい息子を持った、大事にせい!」


「勿体なきお言葉、ありがたく頂戴いたします。」


「で、今日、来たのは、他でもない、今儂の言ったことの証明というところかの。フォルトゥーナ!面白いものを見たくはないか?」


異様な、その目にフォルトゥーナは、圧倒された。


「見せてやろう!お前は、良い目をしておる。ついてこい!」


フォルトゥーナは、わけもわからず椅子から立ち上がった。なぜだかこの男が来てから、動悸が止まらなかったのだ。ズルタンも立ち上がったが、ズグリは付いてくるなと目で合図をした。


ズルタンを除く全員は、一度外に出た。フォルトゥーナは、そこで異様なもの見た。それは10人程の屈強な男たちだった、だが特に気になったの、はそのもの達が全員異様な目をしているところだった。フォルトゥーナは、ようやくそこで気が付いた、全員人殺しの目をしているのだ。クルーの目にも、異様なものを感じたのも、同じ理由だったと気が付いた。以前、王都に行ったとき、殺人罪で捕まった男の公開処刑を見たとき、偶然その男と目が合ったことを思い出した。どす黒く濁り淀んだあの目を思い出した。


だが目を引いたのは、それだけではなかった。それはその集団の中では異質な、ズルタンと同じぐらいの年齢の男の子だった。だがその男の子は、腕を縄で縛られ猿轡をはめられていた。もう一つ異質なものは、その子の母親と思しき女性がいたことだ。女性は、縛られてはいなかったが顔を涙で腫らして「許して、許してください、、、、、、、。」と呟き、俯いていた。その姿は絶望に満ちていた。フォルトゥーナの動悸はさらに激しくなった。


「ここにおるこの小僧はな、儂の大切な毛皮を盗んだのだよ。儂は普段南部に住んでおってな、めったにこの西部に来ることはない、しかし儂も同じところにばかりにおるのはつまらんからの、じゃから10人ばかり程の部下を連れて、羽を伸ばしに来ていたのよ、この小僧は、儂と部下が宿で寝ている隙に、儂の大切な毛皮を、盗みよったのよ、じゃがこいつが盗んだ毛皮がここらにはめったにない、高級品なのが幸い、すぐに足が付き、見つかった!悪いことはできんの、ひっ捕らえて話を聞いてみるにどうやら、母親が病気らしくての、食べるものに困り仕方なくやったそうじゃ、儂も同情したさ、同じ立場なら儂も、同じことをやっていただろう、じゃが儂は貴族、舐められるわけにはいかん、じゃから許すわけにもいかん、普段なら刀で一思いに首を切ってしまうところじゃが、ちょうどこのあたりにウィドックス家があったことを思い出してな、よいことを思いついて、お前を訪ねたというわけじゃよズグリ。」


「はぁ、、しかし、、いったい何にうちの犬たちを、、。」


「まっそう慌てるでない。慌てると体に毒じゃよ。では行こうか。」


一行は、家の横の小道を抜け、犬舎を抜け、裏の広場にたどり着いた。春の風が穏やかにふき、広場の表面に生えた草は、春の日差しを受けうっすら光っていた。



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