22、絵
それから女は毎夜部屋を訪れるようになった。
そのたびにズルタンは精神的屈辱を感じながらも性欲に抗えない自分と向き合わねばならず魂が引き裂かれる音を聞いた。
しかし彼は静かに反抗を企てていた。精神という名の紙は引き裂かれ、息苦しさとなって部屋中を満たした。
以前はこのようなことは思いつかなかった、しかし追い詰められた脳は普段は開かない引き出しを開けた。
まずサヴィンスヘッドと交渉して画材をもってこさせた、彼は最初は頑として首を縦に振らなかったがあまりにもズルタンがしつこく頼むので彼も折れ、マキアに確認を取った。マキアは承諾した。その日の午後に部屋に道具一式が運び込まれた。絵具、筆、パレット、画用紙、イーゼル。
もちろん絵など一枚も描いたことはなかったが、ここは自分の直感を信じるだけだ。
対策は3つあった。自慰行為、痛み、絵。自慰行為は女が来る前に3度自分の手で放っておいた、痛みは靴の裏に木材の破片を仕込んで置きいざというとき足に力を入れれば激痛により性欲を吹き飛ばせる、絵は画用紙をイーゼルに立てかけすぐにかけるようにセットしてあった、最後の用意として心の中にエテルニータの笑顔を浮かべ彼女の名前を3度唱えた。
夜になりドアが3回ノックされた。いつもの時刻だ。筆を持つ手から汗が染みだしていた。
ドアが開く。女はいつも通り全く表情に変化がなかった。
ズルタンはベットに腰掛け目の前に画用紙を立てかけていた。
女がしとしとと、入ってくる。
ズルタンは立ち上がった、次の瞬間左足の踵に激痛が走った。踵に仕組んであった木材が想像していたより切れ味鋭かったようだ。
靴下から血が染み出し小さな血だまりを作った。
痛みのため呻き倒れ込んだ、異常を感じた女が駆け足で近寄ってきた。
女は靴下を素早く脱がし自分の服の一部を裂き傷口を縛り止血した。
「まだだ、、、まだ」
消えそうな意識の中ズルタンは指に血をこすり付けた。立ち上がり自分の指を筆とし、画用紙に血で女の絵を描いた。
気を失う。
女は画用紙に描かれた絵を覗き込んだ。
「酷い絵ね、、、」
口元には微かに微笑が漂っている。




