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ズルタン戦記  作者: えんせい


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21/23

21、遊離

「困りますな」


私は悪いことをした猫のようにびくっとなった。そろりと後ろを振り向くとマキアが立っている。


「オルコット夫人、あなたは見ず知らずの人間にアップルティーをふるまうほど偉くなったのですかな」


「これは申し訳ございませんマキア様、しかしどこかお疲れのご様子でしたので、、、」


「とにかく今後このようなことは絶対に無いようお願い致します。もしこいつが再びここに来でもしたらすぐに私に報告してください」


「申し訳ございませんマキア様そうさせていただきます」


マキアは私の腕を強引に掴み、ものすごい力で私を引っ張り出した。私は観念して床を見つめ周囲の光景を見ないように努めた。


どれくらい歩いたのだろう、、、永遠に感じられるような長い時間。


「ではこの部屋でお休みください」


私は大部屋に放り込まれた。


部屋を見渡す。


豪華なベットが一つ中央にあるだけの殺風景な部屋だ。


心臓の鼓動はまだ激しく脈打っている、仕方なく部屋の中をぐるりと歩いた。もう一周、もう一周、もう一周。


それからどれくらいの時間が経ったのかわからないが、心臓の鼓動も静まったのでベットに腰を下ろした。


窓から差し込む光を見つめる。


溜息。


また溜息。


これでは窒息してしまう、この部屋には酸素がない、そうだ、出ようこんなところから出よう。


扉を押す、開かない。おかしい、、、もう一度押す、開かない、どうやら鍵が外側からかかっているようだ。


仕方なくベットに戻る。横になって天井を見つめる。


それからまたどのくらい経ったのだろうか。日が落ちてきて茜色になっているところを見ると何時間かは経過しているようだ。


ノックがあった。扉が開かれる。マキアともう一人男が立っていた。


「お前の護衛係だ。サヴィンスヘッド、おい挨拶しろ」


「サヴィンスヘッドです。以後、お見知りおきを」


「何かあったらドアを3回連続で叩け、こちらもお前に何かあるときはそうする、それと飯を持ってきた、サンドイッチだ、食べろ」


サンドイッチの乗った皿を受け取ると、またドアは閉じられた。鍵を掛ける音がする。


とても飯が喉を通る気分ではなかったが、やることもないのでサンドイッチを口に運ぶ。具は豪華なローストビーフがたっぷり入っていてとても美味しい、あっという間に平らげてしまった、どうやら自分が思っているより体は栄養を求めていたらしい。


夜になった、日が完全に落ち窓からは月の光が差し込んでいる。


ノックが3回あった、マキアが来たのかな?


ドアが開く、女が立っていた。


恐ろしく美しい女だ、月明かりが足元を照らしているだけなのに、それがはっきりわかる、美しく長い栗色の髪、陶器のようにすらりとした手足、体全体から発せられる妖艶な雰囲気。


ただ私は何か違和感を感じた、この女からは万人が持っている何かが欠けているような気がしたのだ。


近づいてくる、一歩また一歩、心臓が鼓動が早くなる、窒息しそうだ。


互いの息がかかるほどの距離にまで近づいてきた。女の息が私の鼻にかかる、甘い香りがする、規則正しい呼吸に対して私の呼吸はどんどん荒くなっていく。


ここで初めて違和感に気が付く。


女の目から少しも生命力を感じない。


大きく美しい瞳、目は合っているのに力強さがない、死人のそれではないがもともと魂の入っていないような、、、、、そう、人形のような目に見える、曇り空のようにも、、、


右手が伸びてくる。


細くしなやかな指、とても冷たい。


女はベットの方へ私を無言で引っ張っていく。


押し倒された、上から寄りかかられる。長い髪が頬に当たってこそばゆい、そのせいで少し笑ってしまった。


次の瞬間不思議な空間にいた。


ガラスで出来た泡の中に閉じ込められている私、あたりの真っ暗闇、いや、、、下の方に私と女が交わっているベットがうっすら遠くに見えている、私は浮かんでいる。


エテルニータが私を見ていた、軽蔑する目で。


「違うんだこれは、、、エテルニータを嫌いになったわけじゃない!」


声はガラスに反射している、どうやら外には聞こえていないようだ。


エテルニータはどんどん遠ざかっていく、何か言ったような気がした。


「これでは犬と同じだ!閉じ込められ、首輪をつけられ、餌を与えられるだけ!」


泣いた、鳴いた。


涙はガラス球を満たしていく、それでも私は泣き続けた。




気が付くと朝だった、女はいない、ベットには汗臭いが立ち込めていた。


マキアがベットの前に立っている。


「どうでしたな昨日はお楽しみでしたかな、、、」


マキアは口に薄笑いを浮かべている。


「あれは私が持っいる駒の一人ですよ、まあこれからこの部屋で長く暮らすことになると思うので私からの餞別です、、、」」


私は外の眩しすぎるほど眩しい朝日を眺めた、心の中には大きな黒い闇がポツンと浮かんでいる。


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