20、小さな楽園
男は死体を穴に埋めながら口ずさむ。
「安心しろケニヒトよ娘は殺していない、耳も削いでいない、お前が娘の耳だと思っていたものは俺が死体置き場から失敬したものだ、耳のほくろは入れ墨をちょいと入れたのさ。まあお前がこうなったのは自業自得と言えるかもしれない、アラーニ国王の暗殺、ルロとの密通、国内への麻薬の流通まあ極悪人だな。しかし俺はお前が嫌いではない、お前が最後に見せた娘への愛はなかなか人間的でよかったぞ、それにマキアはお前を恨んでいたが俺はお前を恨んでいない、だから冷静に考えてみれば俺がお前を殺す理由は本来なら皆無だ、、、しかしなケニヒト俺は奴に命を救われた、俺はもう3日も何も食べていないときにあいつに飯をもらったんだ、あいつ自身も4日も何も食ってなかったのにだ、、、だから俺は奴に恩があるだからお前を殺したんだ、ああ、、愚かな男サヴィンスヘッドを許してくれよ!、、、じゃあな」
サヴィンスヘッドは跪き、土の上に接吻をした。
一方マキアは馬車の中で珍しく微笑んでいた。
「どうしたのマキア何かいいことがあったの?」
「いいえどうかしましたか」
「いやマキアって笑うんだと思って」
「笑う、、、私が笑っていましたか?」
「うんさっきの家で何かあったの?」
「そうですね、、、まあティータイムを楽しんでいました。多分それが良かったんだと思いますよ、、、」
「ぷっ!」
「何です?」
「いや何でもないよ!」
「もうすぐ城に着きます」
ズルタンは驚いた。城の内部は薄暗く陰気で空気が淀んでいた。
「(ネズミ臭いなそれになんだろう死の臭いがする)」
陰鬱だなと思った、思えば今までの人生で起こった出来事はたいていろくでもないことばかりだ。気が付いたら私は周囲の世界から逃げ出すように駆けだしていた。
今まで自分に隠してきた胸の息苦しさ。
土の中にいる閉塞感、、、俺は生涯モグラのような生活を送るのか。
雨の日にミミズなのか私は!
酸素を求め地上に出るように私は夢中で走った。
ズルタンがそこへ辿り着いたのはごく自然なことだったかもしれない。
城の敷地内少し外れたところにそれはあった。
「いい香りがする」
そこはリンゴの木が3本だけ植えてある小さなリンゴ園だった。どこをどう走ってここへ来たのかズルタンは覚えていない、ただ何となく暖かい光の感覚に導かれるようにここへ来ていたのだ。
次の瞬間物置小屋の扉が開き中から夫人が出てきた。
「あらっどなたでしょう見ない顔ですわね」
気まずい、、、
「あの僕ズルタン・ウィドックスです、、、はい」
「はあズルタン様ですか、、、やはり聞き覚えはありませんね、まあいいでしょう今ちょうどおいしいアップルティーがあるんです、もしよろしければ飲みませんか?」
私は小屋の中へ入った、どうやら物置小屋と夫人の住まいを兼ねているらしい。質素だがどこか温かさを感じた。小さな机の上には3冊の青い本が置いてある。この空間は光と温かさに満ちている、城の中の陰気さとはまるで無縁だ!
アップティーはおいしかった、人の体が糸とできていたなら私は無理やり束ねられ固められた糸なのだろう、このアップルティーを飲むごとに私の糸を優しくほどかれていった。




