14、逃げ出したい
「いや、、、訳わからないし、、やらないです、、やりたくありません王なんて」
「大丈夫ですよ実質的には私が動かすしあなたはいるだけでいいんです」
「いやだ、、いかない」
「なるほどそれも選択肢としてはありです、私はあなたがここから出ていこうとすることをお止めはしません、ただそのようなことをすれば村を焼きます、我々はそれぐらいの権力は与えられています」
ズルタンは崩れ落ちた。
「なんで、、なんで僕に平穏を与えてくれないんだ、、ただ普通に暮らしたかっただけなのに、、やっと楽しい日々が、、送れると思ったのに、、兄さんも死んでしまって、、それに王だなんて」
「ズルタン様、、いえロス・ルオーニス様諦めてくださいこれも王国のため」
「勝手だ勝手すぎる!僕はズルタンだぞ何がロスだ!何が王国のためだお前のためじゃないか!」
「そうです私の私利私欲です」
マキアはさらりと言ってのけた。
「俺が王なんだろお前に命令する!今すぐここから立ち去れ!」
「それはできません、、残念ながら」
「ありかよ、、こんなのってありか、、、」
「残念ながらあなたに選択の余地はありませんさっ行きましょう」
そういうとマキアはズルタンの肩をぐっときつく握った。まるで早くしろよと言わんばかりにそれでもズルタンは動こうとしなかった。
「それともエテルニータ様に悲しい思いをさせたいのですかな」
マキアは極めて冷酷な口調で呟いた。
「なんで、、、エテルニータのことを」
「簡単ですよ村人たちにここへ来る前に聞いたんです。もしロス様が王になられないならエテルニータ様をひっ捕らえ拷問いたしますよ」
「それ、、、それだけは、、勘弁してください、、」
「では王になられますかな」
「なる、、よ、、畜生なりますよ!」
「ではこの文書にサインをお願い致します。名前とそれから拇印を」
ズルタンはしぶしぶサインをした。悪魔と契約するとはこんな感じなのだろうかとロス・ルオーニスは思った。
「ありがとうございます。ではロス様今すぐ王都に向かいましょう、陛下の御即位皆の者が心待ちにしております」
ズルタンは力なく立ち上がりドアを開けた。玄関のドアを通ると馬車の傍にエテルニータがいた。
「ロス様の思い人とお聞きしておりましたので最後の挨拶をと思い私がお連れしました。事情はお話してあります」
マキアは冷静な口調で告げた。
ズルタンとエテルニータは互いに見つめ合った。エテルニータの美しい青い目が涙に濡れていた。
「エテルニータ、、、僕王様になるんだって、、、だからごめんもう君とは会えない、、、」
「ズルタンこれ私が縫ったの、、」
そう言うとエテルニータは小さなお守りを差し出した。
「急いで縫ったものだから汚いけど」
「そんなことないよとってもきれいだ、もっと君と話をしたかった」
ズルタンの目にも大粒の涙が溢れていた。
「ズルタン、、、、寂しくなったらこのお守りで私を思い出して私もズルタンのこと忘れないから」
「ありがとう、、、ありがとう、、エテルニータまた会おう」
「うんまた会おうズルタン」
二人は抱擁した。二人の涙が混ざり合った。
「じゃあ行くよ、、、」
「うん、、、」
ズルタンは馬車に乗った。今まで乗ったことのないような座りご心地の良い馬車だった。
「出せ」
マキアが馭者に命令した。馬車は動き出した。
エテルニータが走ってついてきた。
「ズルターーンーーズルターーン!」
叫び声が聞こえるズルタンは胸が張り裂けそうになった。
「エテルニーーータ!」
馬車はぐんぐんとスピードを上げエテルニータはすぐに追いつけなくなった。1時間もするとズルタンの住んでいた村も見えなくなった。
ズルタンは今まであったことを思い浮かべた。森で遊んだことクルー・ジストーのこと犬を嫌がりながら真面目にお世話をしたこと人さらいが村に来たときのこと兄と星を見に行った夜のこと兄の死、すべてがまるで遠い昔のようにさえ感じていた。ズルタンは外の流れていく景色をぼんやりと眺めていた。石と草だらけの何もない道をただひたすらに眺め続けた。




