13、王都へ
夏は遺体の腐敗が速いため、埋葬はフォルトゥーナの死の翌日行われた。
ズグリが出張から帰り我が子の死を耳にした時彼は発狂したかと思うとそれ以降部屋に引きこもり生涯出てくることはなかった。
葬儀には村人たちが全員参加したし村以外からも大勢の人が駆け付けた。このため村外れの墓地には過去例を見ないほどの人が集まりたまたま通りかかった旅人などはさる貴族の葬儀が行われているのかと勘違いしたほどだった。
ラシケスは泣いていた。普段は冷静そのもののこの男も立って意識を保つのがやっとだった。ズルタンはというともう呆然とするばかりで何というか現実感がなく涙さえ出ていなかった。あまりに大きすぎる出来事というのは悲しみさえも風の前の塵にしてしまうものなのかもしれない。村人たちがわんわん声をあげて泣いている姿をズルタンはどこかうつろな目で眺めやるだけであった。彼の心は今なにも思考していない。思考を始めてしまうと心が壊れてしまうので彼の本能は自動防御的に心を殺した。
葬儀も終わりズルタンはベットの上に横になっていた。
「これからどうなるんだろう、、、」
彼は何となく呟いた。空には一面曇天が広がっていた。
さてその3日後のことである。ある馬車がウィドックス家の前にとまった。それは王族が乗るような豪華な馬車であった。いや、よう、ではないそれはまさに王族の乗る馬車なのだ。
「ズルタン殿!ズルタン・ウィドックス殿はおられますか!」
大きな声が響いた。
「なんだ、今は取り込み中だ帰ってもらいたい、、」
ラシケスは普段なら絶対しないような非礼な態度で出迎えた。彼の心はフォルトゥーナの死により荒んでいたのだ。
「私はただズルタン様にお会いしたいのです」
無礼な応対にも口調一つ変えずその男は呟いた。通りの良い声で耳障りがよく低く響くような声だった。
「ズルタン様をお迎えにあがりました」
「あのぼんくら何かやったのか、とんだ犯罪でもやりましたかなくっくっ」
ラシケスは少し気が変になっていた。
「とんでもございませんあのお方は今日よりルオーニス王国の王となられるのです。そう8代目国王ロス・ルオーニスとして、」
「あんた酔っぱらってるのか、、頭どうかしちまったのかってんだ、、、あいつが王だとふざけんな!悪い悪夢でも見てるのかあんた、悪いことは言わねえ帰るんだな、さっきも言った通りこっちは取り込んでんだ!」
「それ以上無礼な口を利かれますとあなたを逮捕しなればいけなくなります、どうか口を慎んでください」
そういうとその男は王家の紋章を見せた。それがまがい物ではないということはラシケスにもすぐに分かった。それはルオーニス王国の象徴である楠の木が金で施されたものでありこの国の有力者でも容易に持つことが許されぬ代物であることはラシケスも知っていた。
「わかりましたかな我々が本気だということが」
「あああ、、、、、、」
ラシケスは崩れ落ちた。
「では中に入らせていただきますよ」
男は護衛2人を連れてドアの中に入った。
「お待ち、、、ください、今すぐ連れてまいります」
「個室で話をしたいのですみませんが我々が話している間ドアに近づかないで頂きたい」
ズルタンは自分の寝室で寝ていたがラシケスに起こされ男がいる部屋に行くようにと言われた。ラシケスがやたら青ざめているのが気になったが彼は顔を洗い服を整えた。
部屋にの前には屈強な護衛が二人立っておりズルタンは緊張した。
「(なんだいったい何だって言うんだ、、いったい何が、、)」
ズルタンは恐る恐るドアをノックした。
「どうぞ!」
中から声が聞こえズルタンはドアを開けた。中には身長が2メートルはあろうかと思われる大男が立っていた。全身が筋肉質でそれでいて引き締まっていた。顔は細長く髭はそられているが顔の輪郭を添うようにして髭が伸びているのが印象的で鼻唇が大きく目は細いが鋭い目を持つ男だった。
「初めまして私マキア・シュポスと申します以後お見知りおきを」
男は慇懃な態度で礼をした。
「立ち話もあれですから座って話をしましょうズルタン殿」
ズルタンは椅子に掛けた。
「さて短刀直入に申し上げます、今日からあなた様はこの国の王でございます」
ズルタンは言われていることが理解できなかった。
「混乱なさるのもご無理はありません、昨日まで犬の世話をしていた自分が王に、、、なんて言われたら誰だって混乱いたします。順を追ってご説明します。あなた様の実の父アラーニ様には10人お子がおられました、ですが本当は11人だったのです。生まれながら病弱だったのを見て取ったアラーニ様はあなた様をウィドックス家に養子に出されたのです」
ズルタンはなおも信じられないという顔をしていた。兄の死と今現在自分に起こっていることはズルタンの理解力の範疇を超えていた。
「10人の王子王女はみなそのほとんどが度重なる戦と病のため亡くなられ残ったのは長男のマオン様のみに、、アラーニ様の遺言でマオン様が7代目国王となられたのですが6日前マオン国王も病死なされました。マオン国王はお世継ぎなくこのままではルオーニスの血が絶えてしまう、、そんなときに私はあなたの存在をさるものから知ったのですよ、、」
「今から王、、、僕が、、」
ズルタンの顔は蒼白だった今にも倒れてしまいそうだった。
「そうです、申し訳ございませんが今から王都に来ていただきます」




