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ズルタン戦記  作者: えんせい


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12/23

12、星になっても

「ズルタン!どうだった!楽しかったか!どうしたんだ!?お前も顔つきよくなったな!」


「最高だったよ、兄さん!僕がいない間、何か変わったことはなかった?」


「いや、いつーもどうりだぞ、弟よ!」


フォルトゥーナは、大声で答えた。ズルタンは内心、だんだんズグリと声が似てきているなと思った。


「さあ、たっぷり仕事が溜まってるかな!さ仕事!仕ご、、ゴホッゴホッ、、」


フォルトゥーナは、いつもしないような咳をした。これまで健康そのもので一度も寝込んだことがない男にしては珍しいことだった。


「兄さん大丈夫?」


「全然大丈夫だ!さ仕事、仕事!」


その後フォルトゥーナは、特に何事もないように過ごしていたが、ズルタンにはなぜだかその咳が気になった。


一日の仕事が終わり、夕食になった。


ズルタンは、一日の疲れもありがつがつとスープをかき込んだが、フォルトゥーナは、珍しく全く手を付けていなかった。


「お兄さんどうしたの、本当に大丈夫?」


「ああちょと疲れが溜まってるだけだ!最近特に暑かっただろ、それでばてたかもなはっはっはっ!」


「無理しないでね、兄さん。」


「そうだな!お前も人を気遣えるようなことを言えるようになったのか!そうだな少し横になってくる。」


フォルトゥーナは、そう言うと2階に上がっていき、その日は、下に降りてこなかった。


いつも朝、起きる時間になってもフォルトゥーナは、起きてこなかった。ズルタンは、不審に思い、フォルトゥーナの部屋のドアをノックした。


「兄さん、入るよ。」


返事がない。


「仕方ないな、まだ寝てるなんて、兄さーん朝だよー。」


また返事がなかった。仕方なくズルタンは、ドアを開けて中に入った。


「兄さんにしては珍しいな、遅刻するなんて。」


返事がない。


「おい兄さん!起きろよ!」


ズルタンは、ゆすってみた。


「うううっ。」


「どうしたの、兄さん、、すごい熱だ!!兄さん!」


ズルタンが額を触ってみると、とんでもない熱さだった。


「ラシケス!来てくれ!兄さんが!兄さんが!」


ズルタンは大声で叫びながら、ラシケスに叫んだ。ズグリは、今出張に出ており、あと1週間は帰らない予定だった。


ラシケスは、フォルトゥーナの額に触って驚いた。過去触った病人の中でも、触ったことのないような暑さだったからである。


「私は、医者を呼んできます!ズルタン様は、水をよく浸したタオルでフォルトゥーナ様の額を冷やしてください!水がぬるくなるので3回浸すごとに取り換えてください!絶対です!」


ラシケスは、大急ぎで医者を呼びに行った。その姿を見てズルタンは不安になった、ラシケスが、今まで見たこともないような形相していたからである。


「兄さん、、」


ズルタンは、心細く呟いた。急いで水とタオルを用意した。2回水を浸したら、湯がぬるくなり、ズルタンは2回ごとに水を汲みに行った、それでも兄は呻くだけで一向に良くなる様子がなかった。ズルタンは、1回、2回と水を運ぶうちに涙が出てきた。溢れて溢れて止まらなくなった。


「大丈夫だ!あのフォルトゥーナ兄さんだ!絶対大丈夫だ!ちょと疲れがたまっているだけだ!」


ズルタンは、自分に言い聞かせるように言った。


やがて昼頃になり、医者が到着した。


「フォルトゥーナ様は、どうなんですか!」


ラシケスが、大声で言った。


「お二方、一度部屋の外へ。」


医者は沈痛な面持ちで。


「覚悟して聞いてください。かなり悪いです、おそらく2日と持たないでしょう、早ければ今夜にでも、、、、、」


「ふざけるな!藪医者が!薬で何とかしろ!」


ラシケスが、半狂乱になって叫んだ。


「無理なものは、無理です!」


「お前なんかに頼らん!違う医者を呼んでくる!この藪!」


「ぜひお呼びになってください、ですが私は意地悪で申しているわけではないことをどうかご理解ください。」


そう言うと、医者は丁寧にお辞儀をして去って行った。


「ええいっくそっ!」


そういうと、ラシケスはまたも走り出した。


ズルタンは、現実を理解できなかった。「昨日まで快活に笑っていた、兄さんが死ぬ、、」あまりの現実感のなさにズルタンは呆然とした、まるで紙芝居でも読んでいるみたいに世界が一気に非現実になった。ズルタンは、もうほとんど機械的に水を取り替えた。ズルタン顔からは一切の表情が消えた。


夕方になり、新たな医者が来たが、言うことは先ほどの言葉とほとんど同じだった。


「相当ご無理をなさっていたようです、何か心当たりはございませんか?」


ズルタンは、兄の普段を思い浮かべた。なんでもできる万能の兄、兄の体力は、無限だと、ズルタンは思いこんでいた。だがそんなことはなかったのだ。フォルトゥーナは、平均的な体力だったが、ただ誤魔化していただけなのだ。ズルタンは、そのことに気が付いたとき、また涙が溢れて止まらくなった。


「何とか、、何とかなりませんかお医者様、、、この方は本当にお優しい方なのです、、私は普段は無口で不愛想ですがそんな私にも、、ケーキを焼いてくださるそんなお方なのです、、」


ラシケスは、ほとんど祈るようにすがるように言った。


「残念です、、本当に残念です、、私もフォルトゥーナ殿のお噂は聞いておりました、、実際に顔を見てみれば分かります、、、噂以上のお方です、、それだけに残念です、」


初老と思われる医者は、心から無念そうに言うのだった。


「ううっ、、ズルタンはいるか、、、」


「フォルトゥーナ様!意識を!」


ラシケスが、叫んだ。


「すまないラシケス手を煩わせてしまって、、、」


「何を言っているんで!こんな時に!さあ早く横になってください!お体に障ります!」


「ありがとう、、、ラシケス、、少しズルタンと話がしたい、、二人きりにしてくれるか、、、ズルタン、、近くに、、」


ラシケスと医師は部屋の外に出た。


「お兄さん、、、絶対大丈夫だから、、」


「泣くな、ズルタン、、それにいいんだ、かなり無理をしてきたしな、本当のことを言うと、もう5年ずっと辛かったんだ、、実はたまに血も吐いていて、、今まで言わなくて済まない、、」


「兄さんは、優しすぎるんだよ、、」


「俺は、ただこの村のみんなに幸せになってほしかった、ズルタンお前に幸せになってほしかった、」


「兄さん、、」


「ズルタン、お前は王になれ、小さな王国でもいいそこで国民みんなが幸せな国を作ってくれ、、」


「何言ってるんだよ!兄さん、僕がどんなに意気地なし知っているくせに!」


「まあ、落ち着いて聞いてくれズルタン。お前が捨て子だったってことは知っているな、橋の上で拾ったと、父さんから聞いたろ、」


「ああっでもそれが何だって言うんだ!」


「あれは嘘なんだ、ズルタン、、お前はこの国の王、アラーニ・ルオーニスの11人目の実の子なんだ、、お前は俺が何を言っているか理解できないと思う、、だが落ち着いて聞いてくれ、、病弱だったお前は、生まれてすぐウィドックス家に養子に出されたんだ、、もちろんこのことは世間には公表されていない、お前は死産ということになっているからな、、、」


「何をいってるのかわからないよ!」


「だが本当の話だ、父上がラシケスに話し、その話をラシケスがいつも行く酒場で漏らしたから本当だと思う、、聞いたんだ、、俺、酒場の主人と仲良くなって、、」


「兄さん、その話が本当だとしても、そうあろうとも、僕は兄さんの弟だよ!」


「ありがとう、ズルタン、、本当にうれしいよ、、」


「だから兄さん、ゆっくり休んでよ、きっと良くなるよ。」


ズルタンが、そう言うとフォルトゥーナは、病人と思えないような力で、ズルタンを引き寄せた。


「ズルタン王になれ!俺はもう駄目なんだ!俺が一番よくわかっている!ズルタン王になれ!」


フォルトゥーナは、今まで見たことのないような形相になった。


「何するんだ兄さん!おとなしくしよ!」


中の騒ぎを聞きつけてラシケスが、入ってこようとしたが「今は入ってくるな!」とフォルトゥーナが怒鳴りつけた。そのあまりに鬼気迫った形相にラシケスは、ドアを閉じた。


「いいかズルタン!お前はあの夜を覚えているか?人さらい達から少女を救ったあの夜を!あの時犬達は命令もしていないのにお前を助けに動いたんだぞ!誰の指図も受けずに動いたんだ!お前が無事だとわかるまで傍を離れなかったんだ!あり得るか!こんなこと!俺はその姿が王の、真の王の姿に見えたんだ!」


「落ち着いてよ!兄さん、あの犬達は、兄さんを守りに動いたんだよ、、きっとそうだ!いつも僕よりお兄さんになついていたじゃないか!」


「違う!ズルタンお前を助けに動いたんだ!その証拠に気絶しているお前を触ろとしたら俺は手を噛まれたんだぞ!いいかズルタン普段の姿ではなくいざという時に起こす行動こそが真の行動なんだ!いざという時にどう動くかが肝心なんだ!」


フォルトゥーナは、叫びあげた。さっきまでの意識のない病人とは思えない姿だった。


「じゃあ兄さんが王になればいいじゃないか!」


「俺はだめだ、、ここまでなんだよ、、、」


「兄さんがいなきゃだめだよ、、何もできないんだ、僕兄さんがいたから友達がいて、エテルニータとも兄さんがいたから出会えたんだ!僕が今日まで生きてこれたのは兄さんなんだよ、兄さんが星を僕に見せてくれたから、僕は今日までこれたんだ!


「ズルタン、、大丈夫だ、、、俺は星になるよ、、星になってお前をいつでも見守っている、いつでもだ、、いつでも、いつも、、辛くなったら、、星を見上げろ、、お前を、、、、、、みて、、見てるから、、」


「兄さん!おい!どうしたんだ!ラシケス!早く兄さんが!ラシケス!!」










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