黒根古島奇譚 DAY8~11
いよいよ、黒根古島独立を日本政府と交渉することなったが、どうやれば政府と交渉できるのかわからない。そこで宇宙人の協力でド派手なショーで政府を交渉に引っ張り出そうと画策するが・・・
DAY8
親父快諾
「親父、頼む。俺が甘い計画を立てていた。謝る。ただ、時間もないことだし、この宇宙船をちょっと、その辺に飛ばしてくれないか?見せるだけなら昔からのUFO騒ぎと一緒で、進化には不干渉だから問題ないだろ。自衛隊がいいな。米軍はややこしいから、毎日来る自衛隊機にちょこっと見せてやってくれないか?そうすりゃ、東京からやってくる派遣団の奴らに常温核融合炉と猫命樹草を見せて本物と確認させるから。頼むよ。お願いだ。」と俺は手を合わせた。
「ニャンだニャ。そんなことか。だが、本船を動かすとなると、その上昇の際にマイクロ・ブラックホールの活性化のせいで、電磁波異常に地磁気異常、そして重力波異常も加わって、いろいろ影響が出るニャ。この島の一機だけでも日本やC国など近隣諸国に影響が出るだろうから、本船ではなくて連絡船ではどうニャ。それなら自衛隊機にお似合いサイズだニャ。俺等もストレスが溜まって来てニャ。なんか面白いことないかニャと思っていたところだ。いいだろう、ただし、一度だけだニャ。いつも来る自衛隊のP3Cが来たら、地下の宇宙船の出力を上げて、この間ツンパ氏を驚かせた偵察用宇宙船の大きいのを飛ばして、ここの上空にとどまらせて、おミャーと交渉しているようにするニャ。あとはお定まりの電磁波異常も派手にやってやるニャ。おミャーもしっかり演技してくれニャ。」とまたも意外にあっさりとOKをくれた。決行は三日後とした。あとは日本政府との交渉用の書類作りに追われることとなった。これは宇宙船の”ハモニャン”を使いツンパとヒトミが作成した。実は俺はこういうのは苦手で、できるやつが作ればいいからと丸投げしたのだ。
DAY9
金ピカの部屋:オルガ帰島
朝っぱらからツンパとともに親父に呼び出された。モニターを見ろという。モニターには小さな漁船が島に向かって航行している様子が映っている。映像を拡大して行くと、漁船の狭い甲板にふくよかな女性の姿が映っている。「オルガ、オルガですよ。島主。オルガが帰ってきてくれた。」というと港に行くために、ツンパは宇宙船を飛び出していった。俺もみんなに声をかけに港に向かった。どうもケツが衛星電話でツンパの様子をオルガに連絡したらしい。ツンパはオルガの船が港に着くのが待ちきれず、海に飛び込んだとか。愛妻家なのだ。夜は、例のごとくオルガの帰島祝いで島民宴会となったのは言うまでもない。
DAY11
日本国都内某所・地磁気異常緊急対策室
「大変です。課長。地球観測衛星の分析で完全に消えていた南西諸島の強烈な磁気異常と電磁波異常が発生しているそうです。場所も石垣島と西表島の間にある黒根古島周辺と思われるとのことです。今、海上自衛隊の護衛艦と対潜哨戒機などを総動員して現地に向かわせております。以上、ご報告です。」「あらま、なんて簡潔な報告だ。おおよそ君におおまかな報告しか・・総合的に・・適時適切な処置だとか・・簡潔な報告は完璧な報告だ、なんてね」「課長、意味のない感想はいりません。また、話が曖昧で長いです。簡潔にお願いします。時間なので省庁連絡会議に出ます。」とだけ言って、呆然とする課長の手にレポートをおいて係長は立ち去った。
いつもの哨戒機P3C機内
「現在位置は、南西諸島定期調査のために黒根古島北五キロメートルから島に向かって南下中。晴れる予定だったのですがね。天候は相変わらず曇天です。電磁波、地磁気とも観測できず。調査は続行中。通信異常なし。交信終了。さあ、高度を下げるぞ。ぐっと近づくからな。いつもならこの辺から電磁波異常になるはずだけどな。」と機長。「まもなく、黒根古島。カメラにいつものビキニちゃんの浜を捉える距離ですが、もうすぐ夕方だし、今日は雲が低くて視程二百メートル切りますね。ビキニちゃん、いても見えないかもでしょうね。」機上対潜戦術員はがっかりしたように、カメラから目を離したその時、耳をつんざくような音が機内に響き渡り、次の瞬間、機体は金色の光に包まれた。「なんだ、メイデー、メイデー、緊急回避。高度上げるぞ!」と雲を抜けるため機長は操縦桿を引いて、急上昇したが、雲は高度三千メートルまであるようで雲から抜けられない。金色の光は眼前にさらに広がり、消えそうもない。揺れる機内で機上対潜戦術員が「機長、電磁波と磁気がさらに強くなっています。」さらにレーダーを見て「機長、機の前方五百メートルに機体のレーダー反応あり。機と同速度で移動中。」と報告した途端、雲を抜けて晴れ間に出た。眼の前に安キャバクラの店内のようにキンキラキンに光るバスに猫耳がついた金色の飛行体が飛んでいる。「おい、あれがUFOか。確かに飛んでいる。格好はバスみたいで金色だぞ。UAP(未確認空中現象)確認、レーダー追尾。追いかけるぞ。それから副機長は電磁波が止まったら戦闘機を呼べ。」と機長は、追跡を開始した。そして、UFOに対して、「こちらは航空自衛隊所属機。あなたは日本の領空を侵犯している。直ちに退去せよ。」と機長が警告を送ったところ、突然、猫耳宇宙船は島の上空でホバリング、そして、ゆっくりと島へ降り始めたのだ。
金ピカの部屋:宇宙船司令室
宇宙船内の司令室で金城さんがいつ手に入れたのかPS5のコントローラーで、画面を見ながら「おぉ、レーダーにキャッチされたニャ。でも、あの飛行機は対空ミサイルを積んでないから、こっちを攻撃はできないじゃろニャ。スリルがなくてつまらないニャー。F15戦闘機が来ないかニャ。ミサイル打たれても、バリアで弾くから問題ないけどニャ。飽きたから、そろそろ地上に向かわせますかニャ。」と親父に聞く。「そうだニャ。ドラマチックに見せるには、島の上空だけ快晴にしないと、雲で何も映らないってのは、未知との遭遇としては洒落にならないからニャ。ちょっと待てニャ。超マイクロブラックホールを上空において周辺の雲を吸わせるからニャ。それから電磁波を止めて、もっと多くの自衛隊機が目撃できるように、司令部に連絡させようニャ。楽しくなってきたニャ。」と言いながら、親父は操作を始めた。
P3C機内
「機長、今、突然、電磁波異常が収まって、那覇に連絡が着きました。基地から戦闘機隊が三部隊スクランブルでこちらに向かうそうです。さらに早期警戒管制機も尖閣諸島からこちらに向かっています。」と副機長。機長は地上に降下していく金色の船体を中心に旋回を開始した。
「あ、黒根古島上空に、また磁気異常を検出しました。島の上空五千メートル。」と機上対潜戦術員が機器を見ながら報告する。「バカを言うな。上空に磁気異常ってあるものかよ。それじゃ空磁気じゃないの。空磁気なんちゃって。空自機といえばF15は、まだかい?空磁気、ははは」機長が自分で笑いが堪えなくなったとき、「こちらブルー・リーダー、那覇スクランブル。セクシー・アイ、状況を報告願います。」と連絡が入った。「こちらセクシー・アイ、UAPを捕捉、黒根古島上空を旋回追跡中。目標は上空千メートルで空中停止してゆるやかに下降中。識別コード”ターゲット・ゼロ・ワン”」と機長。「識別コード”ターゲット・ゼロ・ワン”、ブルー・リーダー了解。確認しますが、空中に静止して下降中ということですか?大きさはどのくらいでしょうか?こちらはあと二分で方位二六〇から到着予定。」「こちらセクシー・アイ、UAPは長さ約十メートル、直径五メートルほどの大型バスのようで、金色ベースに猫の耳がついて派手なイルミネーションがチカチカしています。高度は千メートルで徐々に下降中。こちらは高度二千で旋回します。」「ブルー・リーダー、情報了解。ブルー編隊、高度千五百メートルでアプローチ開始。UAPレーダー確認、速度落として接近します。各機、指令あるまで待機。決してロックオンするな。」と冷静にブルーリーダー。「ブルー・ツー了解。視認、編隊右側にて追随。」「レッド・リーダー了解。追随。」「イエロー・リーダー了解。追随。」ブルー・リーダーは、自衛隊機は敵の差し迫った攻撃がない限り、交戦はできない規定になっているのは十分に承知していたが、UAPの場合はロックオンしたらどのように反応するのか試したみたい衝動に駆られた。「こちらブルーリーダー、セクシーアイ、もう一度確認しますが、それはバスですか?」「こちらセクシーアイ、いや、空飛ぶバスですが、見た目は空飛ぶキャバクラですよ。」ブルーリーダーは、その数分後に空飛ぶキャバクラを確認して、ミサイルロックオンボタンから指を離した。
金ピカの部屋:宇宙船内
「来たニャ。来たニャ。さあ、何してやろうかニャ。チャララララ〜ン、チャララララ〜ニャ。未知との遭遇作戦開始ニャ。」とネコ親父が笑っている。金城さんは、横でモニターを見ながら、別の装置を調整しているようだ。その横ではツンパがその光景を眺めながら”ハモニャン”となにか相談している。「おお〜い、ワシのクローンたち、面白いショーを見せてやるニャん。金城さんも登場するぞニャ。よーく見てろニャ。」と親父はモニターに映る全世界に散らばっている宇宙船に呼びかけてから、ガラ携で俺に連絡をしてきた。「さあて、息子ニャ。牧場の真ん中に立ってくれニャ。宇宙船を下ろすニャ。そうだな、劇的な演出としては島の連中並べて、そこからお前が選ばれて出てくるようなのが良いニャ。偵察艇からお前にスポットを当ててやるからニャ。未知との遭遇みたいだニャ。地上で、ちゃんとカメラで撮っているだろうニャ。」すると”トラ”さんが、「カメラOKですニャ。未知との遭遇風ですかニャ。カメラ五十台飛ばしますニャ。」となにやらコントローラーのスイッチを押すと、金色のバスから色とりどりの小さな宇宙船が五十台飛び出して、渦を巻くように螺旋を描きながら、地上へ向かっていった。「交渉団ってのは、どうゆう風な段取りだったけニャ。”トラ”さんが降りるんだっけニャ。どんな格好が良いんニャ?そういや決めてなかったニャ。なんかそれらしい変装用のデータってあったっけ?」と親父が”トラ”さんに聞く。「変装用のデータ作りますニャ。条件は、威厳があり、でも優しい感じで、スマート、宇宙人っぽいがネコっぽくもあるってなことでいいですかニャ。これで検索をかけるとこうなりますニャ。」パネルにタッチして、バイオクローン3D細胞プリンターのAI合成画面を親父に見せた。「お、これでいいんじゃないかニャ?俺等に似てるニャ、ニャニャニャ。よし、”トラ”さんが変身してくれ。いつものお土産も忘れないようにニャ。あ。それをアーサー王風の剣と聖杯もどきとモーゼの石板っぽいのに変えようニャ。いかにも威厳の有る宇宙人からのお土産って感じだニャ。大受けするだろうニャ。よし、レッツラ・ゴーだニャ。宇宙船が降りたら、地下にチューブ下ろすからそれで宇宙船に潜り込んでくれニャ。」
牧場で未知との遭遇
金色に輝くバス型の大きな宇宙船が台風の目のようにそこだけがぽっかりと抜けた円形の空をバックにゆっくりと降下を開始し始めた。その周りを夕方の空に色とりどりの小さな宇宙船が渦を巻きだしている。牛たちは早々に牛舎にいれて、暴れないようにヤギが見張ることにした。その他のヒトミ含めて全員が島の真ん中に丸く並んでいる。さらに島の周りを自衛隊機が何機も飛び回っているが、俺達が地上にいることだし、さすがに攻撃をするような気配は見られない。島は騒音に包まれていて、丸い輪になっていても大声を出さないと会話ができない。「そろそろ、降りて来るぞ。しかし、カッコ悪い宇宙船だなぁ。金色だからまだみられるけど、まるで中古バスだぜ。」と俺。「降りてきたら、どうゆう段取りになってたんでしたっけ?ドアが開いて、誰かが出てくるんでしたっけ?」とケツが完全に舞い上がっている。しかし、ケツの言う通りで誰が出てくるのかは聞いてなかった。「俺も聞いてないが、交渉団かなにか出てこないと話にならないだろうから、なんか出てくるんじゃないか?」と上を見ながら俺が言う。「ほんとに段取りが悪いんだから。ちゃんと”タマ”さんに聞いておきなさいよ。昆虫のおばけみたいのが出てきたのを見てビックリしたらカッコ悪いでしょ。」とヒトミが女房気取りで怒鳴っている。たしかにこんなんでいいんだろうか、自信がないまま事件は進行していくようだ。
日本政府首相官邸危機管理センター
「首相、ただいま自衛隊から緊急報告がありました。石垣島北西の黒根古島に大型のUAP、つまり未確認飛行現象、つまりUFOが確認され、つまり空飛ぶ円盤が午後六時すぎに島に着陸したようです。島には島民が九名いるだけで、現状は爆発等の異常は確認されておりません。またUAP、いやUFO、金色の中古バスといったほうがよいでしょうか、そのそばに島民が取り囲むように立っているそうですので、全員無事なようです。まもなく、P3Cからの中継映像が届きます。」と補佐官。一羽首相は、モニターにぼんやりと映った島らしきものに見入っている様子で、首相はもともと持病もちに加え、A国との無理難題政策の交渉にお疲れ気味なのか一言も発しない。閣僚たちも首相に合わせているのか、沈黙してなにが起こるのかに注目している。映像を見てすかさず補佐官が「この映像は、自衛隊機からの映像です。」と言ったとき。島民が大型のバスのドアの前に並んでいる光景がズームアップされた。「ドアが開いたぞ。なにが出てくるのか?あ、あれぇ、なんだあれ?」と今まで無表情だった首相が口をあんぐりとしたまま固まってしまった。
続・未知との遭遇
上の小型宇宙船から金色の強烈なスポットライトが俺等にあたった。さらに聞いたことのある音階が聞こえてきた。”♪レ−ミ−ド−ド−ソ〜〜♪レ−ミ−ド−ド−ソ〜〜♪”「あれ、これ、映画見たよ。宇宙人来るね。私たち、スターなるよ!」とソンが興奮している。宇宙船の形にはがっかりしたが、いまのところ演出はまあまあだ。するとドアが開いて、ゆっくりと人が金色の光の中から出てきた。普通の人間っぽいシルエットで、とんでもないのが出てくると思っていたから少し安心した。しかし、近づくにつれ姿がはっきりと見えてきた。なんとスタートレックのミスター・スポックの耳をもっと猫風にした宇宙人が現れたのだ。
スポックもどきの”トラ”さん
「おいおい、親父、これはダメだろう。違うぞ。キャラが。」と俺が叫んだが、キャラに成り切っている”トラ”さんが俺に向かって礼をして、近づいてきた。そして耳元で囁く。「威厳があり、でも優しい感じで、スマート、宇宙人っぽいがネコっぽくもある人気の映画の主人公は、って条件で、”ハモニャン”に合成させたらこうなりましたニャ。良いでしょニャ。では、儀式を始めましょうニャ。」と言って、俺に金色の剣とカップと文字の刻まれた板をよこした。「これなんなの?キンキラだね、なんか違うようなんだけね。」と俺が言うと「これが地球では受けるんでしょニャ。世界が探し求めきた秘宝を持ってきたニャ。剣は星間共鳴石からできているもので、あらゆる種族の意識が共鳴する”共通の旋律”を発するありがたい剣で、じつはアーサー王も持っていたエクスキャリバーということにしたら受けると思いましたがニャ。ついでに金の聖杯は、ここに液体をついで、その液体を地面にまくとどんな星でも自己再生ナノバイオ植物・猫命樹草草が育つという不思議なカップで”両種族の未来への可能性を象徴”するものですニャ。そして、最後がシャトネビュロニアンからのメッセージ。島主と日本政府をヒト属代表に選ぶという言葉が彫られている黄金板ですニャ。ちょっとモーゼの十戒っぽくて、これまた受けるでしょうニャ。どうぞお受け取りくださいニャ。あ、それから未来を映す水晶玉もニャ。これは、連絡用の3D通信機器としても使えますニャ。」と差し出すので、俺が剣を、ツンパが聖杯を受けたが、なんと黄金板はケツがもらおうとしたところをヒトミが横から手をだして受け取ってしまった。みんなからは一斉に批難の目が注がれたがヒトミはなんともない顔をして、ご満悦風である。結局、立ち話では格好がつかないということで、俺の自宅で歓迎式を行う体で、猫耳のミスター・スポックの”トラ”さんと家に入って打ち合わせをすることとなった。相変わらず、バスは下品にピカピカ派手な色で光っている。衛星写真でも偵察機でみても中古バス改造の安キャバレーとしか見えない。自衛隊機から映像で報告されるだろうが、政府の高官がこれを宇宙船と信じる訳が無いなぁと思いながら、家に入った。電話で政府に大事な連絡をしなければならない。さて、首相官邸の電話番号は何番だっけ?




