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19話 テントの外側

 沙織からテントから出るよう指示された彼女たちは、一旦はテントの外に出るが、どうしてもテントの中でどのようなことが行われるのかが気になってしまっていた。まぁそれでも、大体中で何が起こるかは、ある程度予想ができるのだが……。


「やっぱり、拷問してるのかしら」


 ニコラが突然そんなことを言い出した。


「沙織様に限ってそんなこと……」


 ある訳ないと言いたかったが、さっきの様子から尋問と言っていたが、拷問をするのはほぼ間違いなく、イーディスはそのニコラの言葉に否定することができなかった。


「ちょっと覗いて確かめてみませんか?」


 メアリーが一言そう言った。中の音を聞こうにも、テントの内側から展開されている“サイレント”によって、テントの外側には音が一切漏れないようになっているため、テントの外側から中の様子を確かめるには、覗いく以外の方法が現状ではない。

 こっそり覗こうと3人は、テントの幕を少しだけ開き、こっそりと覗く。3人は、団子のように頭を重ねて、中の様子を見る。

 そして中の様子を見ると思いもよらない光景を見てしまった。

 そこには、さっきまで優しく接していた沙織が見たことのないような冷徹な表情をしながら何かを質問しながら少しの間が空くと、質問をしていた4人のうちのひとりに針を刺す。既に肩や腕、そして太ももやふくらはぎなどに針が刺さっていた。

 “サイレント”で阻まれている音がギリギリ聞こえ尚且つ沙織に自分たちが覗いているということを悟られないように気配を隠しながらその様子をこっそりと見ることにした。


「あれって、本当に沙織様なのですか?」


 メアリーが、さっきまでの沙織と明らかに違いすぎる気配から、別人だと疑ってしまうほどだった。


「確かにさっきまでの沙織様と比べたら別人だと思うのもわかります。実際、私もそうですしね」


 イーディスもメアリーほどではないが、沙織の豹変には、やっぱり驚いていた。


「あの4人は生きてるわよね?」

「一応、生きてると思いますよ。でなければ、情報を聞き出すことなんてできませんし、それに他国の諜報員だった場合、殺してしまえば、報復で戦争を仕掛けられる可能性もあります。そうなれば、非人道的行為を行った国として他国からの協力を受けることはできなくなるでしょう」

「それだけじゃないわよ。拷問を行ったと知られれば、その報復を行おうとする国の方に他国は協力するでしょうね。そうすれば、ゼルフォート王国は例え勇者たちがいたとしても、圧倒的敵数により滅亡するとすると思うわ」


 イーディスの説明にニコラがそう言葉を付け足した。


「なら早く止めた方が良いんじゃ……」

「あれを止められると思う?」

「そ、それは……」


 この場にいる全員が、沙織の拷問を止めるべきだというのはわかっている。そう、頭の中ではそう理解していても、中に突撃して沙織を止めることは難しいと感じてしまうのだ。なんせ、あんな光景を見てしまったら、自然と怖気付いてしまうのも当然のことだろう。

 あれこれしているうちに1時間ほど経過すると、その拷問は終わり、4人の身体には、針状のものが両肩関節、腕、両足などが刺され、鼻と口から出血をしていた。


「さて、知りたい情報も知ることができましたし、そろそろこの4人を解放するとしましょうか。けどその前に、この4人を元に戻す必要がありそうですね」


 沙織がひとりそう呟く。


『光属性第四階梯魔法コンシャスネスリペア』


 独り言を呟いた後、沙織が魔法を4人に向けて唱えた。すると、4人の意識がはっきりと戻ったが、そのせいで、痛みも感じやすくなり、その痛みによって悶絶(もんぜつ)しそうになっていた。


『闇属性第二階梯魔法スリープ』


 沙織がその4人の痛みによる叫び声が余程うるさく感じたのか“スリープ”で、4人を強制的に眠らせた。


(自分で起こしておきながら、うるさいからって眠らせるなんて……意外と鬼畜よね)

(ヒドッ!)

(それは流石に引きますよ……沙織様)


 ニコラ、メアリー、イーディスの3人がそれぞれが沙織のそのような様子を見て、思わず心の中でそう呟いた。


「そこで覗いている御三方。もう入って来ても良いですよ」

「「「!!?」」」


 覗いているのがバレるとは思っていなかった3人は、思わず驚いてしまった。


「どど、どうしましょう!?」

「どうしましょうって……素直に入るしかないんじゃないの?」

「私もその方が良いと思います。ここで素直に中に入らないとどうなるかわかりませんし……」


 イーディスが戸惑いながらそのように小声で叫ぶと、ニコラとメアリーが同じく小声でそうイーディスに向けて言った。


「そ、そうですね。とりあえず入りましょうか」


 イーディスがそう言うと、2人も覚悟を決めて入る中に入ることにした。

 覚悟を決めたものの、やっぱり恐ろしく感じてしまいながらも、恐る恐るテントの中へと入った。


「き、気付いていたのですね」

「ええ、途中からでしたけどね」


 イーディスが、テントの中に入ってから沙織にそう言った。そして沙織は、そんなイーディスの質問に対してそう返答した。


「ところで、あなた方はなんで私の尋問(拷問)の様子を覗いていたのですか?」

「アレを尋問と言うあなたが怖いですよ。それよりもどうして覗いていたかでしたよね。それはですね、えーと、単純に沙織様がどのような尋問を行うのか気になってしまい、つい覗いてしまいました。覗いてしまった件に関しては謝罪します。ですが、流石にあの拷問はやり過ぎです!」


 イーディスが沙織に覗いていた件に関して聞かれ、そう謝罪をしながらも拷問はやり過ぎだとはっきりと言った。


「拷問だなんて人聞きが悪いですよ。私はただ尋問を行っていただけです。まぁ、情報を聞き出す過程で、少々痛めつけはしましたけど」


(((絶対に少々じゃない!!)))


 その場にいた3人が、心の中でそうツッコミを入れた。


「ニコラさん。何か言いたげですね」

「そ、そんなことはないわよ……」


 ニコラに対して、沙織がそう言う。沙織のその言い方は、いつも通りの優しい感じがあり、顔は少しだけ笑顔だが、目が明らかに笑っておらず、それどころか、変なことを言ったら殺されるのではないかと思わせるような目だった。そんな沙織を見て萎縮してしまい、そのような返答しかできなかった。


「そうですか。なら良かったです」


 どうやらニコラの返答は正解だったようで、さっきまで見せていた恐ろしい目ではなく、いつもの優しい目に戻った。


「皆さん。申し訳ありませんが、私はここら辺の後始末をしますので、その4人の監視をお願いします」

「承知しました」

「わかりました」

「わかったわ」


 その後、沙織は4人の周りに飛び散ったのとさ自分の服に付いた返り血を落としたりして、拷問を行っていた痕跡を消していた。

 

(沙織様もしかして、拷問を4人が見た夢だったってことにしようとしてます?)


 拷問の証拠になりそうなものをすべて消している姿を見てそう思った。

 こうして、深夜に密かに行われた拷問は、他に気付かれることなく静かに終わったのだった。

『良かった』『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は特に決めていませんが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

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