16話 夜の女子会
沙織専用のテントの中に女性陣が集まり、風呂で話していた瑛二のことについて、沙織が話す。
「まず、私たちのことを話す前に、私たちのこは関係をどこまで知っていますか?」
「向こうの世界の学園で同期だったとは聞いていますが、そこまで詳しくはわかりません」
「私も、異世界人については探ってだけれども、今イーディスが言っていた以上の情報は掴めなかったわ」
沙織の質問に対して、イーディスとニコラがそう答える。
「ただし、異世界人の何人かから、元々一般人だったとは思えない気配を纏っていた人がいたわ。そのうちの1人は沙織中佐、貴女よ」
ニコラのその一言は、沙織はまさかニコラが正解するとは思ってもみなかったため、顔には出さなかったものの、内心ではかなり驚いてしまった。
「なるかほど。では、そこからまずお話しますね。私の本当の正体は、伊集院家に代々仕える諜報一族のひとつである石原家の長女にして、伊集院家専属“諜報護衛隊”所属3班班長。これが私の本当の身分です」
「伊集院とはまさか、瑛二様が仕えている連隊長の伊集院雫様ですか!?」
「ええ、メアリーさんの言う通りです。そのため、雫お嬢様の専属執事であり側近である、瑛二様よりも身分は下になりますので、瑛二様を様付けしています」
沙織が自身の正体について明かすと、メアリーがその正体や瑛二を様付けしている理由に驚いた。
「ちなみにですが、ベータのコードネームが付けられた特殊派遣連隊第五大隊副大隊長の田辺賢一少佐は、私の部下となります」
「だから、アルファが沙織中佐で賢一少佐がベータだったのね」
ニコラが沙織の説明に納得したようにそう言った。
「もしかして、他の方もそういった方が多いのですか?」
「そういったのとは、どういう意味でしょうか?」
イーディスに問われた質問に対して、沙織はそう聞き返す。
「先程の話から、沙織様のような諜報員が他の異世界人の方にもいるのではないかと思いまして」
「なるほど。答えはYESです。私が把握しているのは、私と賢一を含めて3人ですね。そのもう1人は、元の世界で私たちが暮らしていた国の諜報員のようですがね。あとは、諜報員ではないですが、元暗殺者もいるみたいですが、特に問題はありません」
「あ、暗殺者までいるんですか!?」
「シッ!声が大きいです」
メアリーのその声を塞ぐようにして、沙織が手でメアリーの口を押さえながらそう言った。
「それに、さっきも言いましたが、“元”暗殺者です。今は、一般人とそう対して変わりませんが、身体能力は、常人よりもかなり高いですし、見る人が見ればわかると思いますよ?それに、いつでもわかる場所にいますしね」
すると、イーディスが誰のことを言っているのかがわかったようで、目を見開いた。
「あの、もしかしてですが、この第七大隊副大隊長の戸田榛名少佐でしょうか?」
少し自信なさげに答える。
「よくわかりましたね。ですが、わかったからといって、彼女のことを警戒しないであげてください。私も最初は、元暗殺者だからといって、賢一とともに警戒していましたが、今の彼女は、今まで失っていた普通の生活というものに触れていたいのだと感じました。ですので、元暗殺者だということを吹聴したり、するのはしないで下さい」
「わかりました。では、これでこの話はこれで終わりにしましょうか」
「そうですね」
少しの静寂が続く。
そしてこの時、この場にいたみんなが、外にいる誰かの気配を察知した。
「……皆さん」
「はい」
「わかっています」
「わかってるわ」
沙織がイーディスたちに一言そう言うと、言いたいことを察したように、イーディスたちがそう答えた。
「一旦、中の明かりを消しましょう。そうしたら、こっそりとテント内から出て目標を拘束します」
「始末するのは駄目なの?」
「相手の正体もわかっていない状態でそんなことをすれば、もしものときに面倒なことになります。ですので今は、相手側を拘束し、情報を聞き出すことが最優先事項です」
ニコラの意見に沙織がそう反対する。
「こちらを監視しているのは全部で4人ですね。丁度、1人が1人を拘束すれば良さそうですね。誰がどこを担当しますか?」
メアリーがそうみんなに問う。
「では、私が北側にいる者を拘束します」
「よろしいのですか?沙織様。北側にいるのは、一番遠いのですよ?」
「わかっています。ここで誰が誰を相手にするかで揉めるよりかは遥かにマシですので」
沙織のその言葉は、役割分担をできるだけ早く決めようとするのと同時に、遠回しに3人のことをそんなことで低レベルな争いをする奴らだとということを意味していた。
「あ、決して皆さんが、獲物のことで争うとは思っていませんので、誤解しないで下さい」
沙織自身も、さっきの発言が彼女たちのことを低レベルな存在だと思わせるような発言だったことに気付き、誤解を解くようにさっきの発言についての説明をした。
「別に気にしてないわ。貴女がそういう意味で言っていないことくらいすぐにわかったから」
「そうですか」
沙織が心配するようなことにはならなかったが、言葉選びというのは、とても大事なことだと再確認した。
「それじゃあ、他はどうしますか?とりあえず今は、沙織様が北側を担当することにはなりましたが……」
「それじゃあ、私は東側の奴を相手にするわ」
「では、私は西側をやるから、メアリーは残りの南側をお願い」
「わかりました」
「では、私が考えた作戦を説明しますので、何か質問などがありましたら教えて下さい」
すぐに誰が何処を担当するのかを決め、沙織が考えた作戦を説明する。
「作戦としましては、まず初めに、テント内の明かりを消します。その後に気配を完全に消した後、テント内から密かに出て、各々のターゲットのところまで向かいます。また、各自ターゲットを発見次第、気絶させて拘束。そして、ターゲットを拘束次第、このテントの前にターゲットを拘束した状態で連行。そして最後に、4人を使っていない予備のテントに運び込み、“サイレント”で音を外に漏らさないようにした空間内に入れ、尋問を行う計画ですが、何か質問はありますか?」
「沙織様、質問をよろしいでしょうか?」
「どうぞ、イーディスさん」
ここまでの沙織の話で質問がないかという問いに対して、イーディスが手を挙げる。
「なぜ態々、このテント前に集合するのでしょうか?直接、予備のテントの方に運んだ方が早いと思うのですが……」
「確認のためですね。万が一の場合があった場合、このテントの場所ならば、何かと便利なので」
「そうですか。わかりました」
「では、他に質問のある方は?」
静寂が続く。
「どうやら質問は、他にないようですね。それではこれより、作戦をします。あと、これも渡しておきますね」
沙織がみんなに連絡用の無線機を配る。そして、テントの明かりを消し、テントから気配消して出て、作戦が開始された。
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