マーサ・ウインターside01
〈私、マーサ・ウインターの過去を語るなら
[不幸だった]その一言で終わってしまう。
育った家の事は思い出したくもない。
ただ、幸せとはどんなものか知りたくて
育った家から逃れたくて、必死に生きていた。
学園をもうすぐ卒業するという時期に
必死に生きてきた甲斐もなく
さらなる不幸へと人生が進みかけたところで
ジェラート公爵家に見つけてもらい
私は幸せというものを手に入れた。〉
「マーサ・ウインター!
本当にあの変態ジジイの所に行くのか?」
「はい、他に道はございません。」
「はぁ···君の親もクソだけど
兄もクソだったとは···しかも元婚約者もクソ!
君の周りって、クソしかいないんじゃない?!」
「ロシュ先生、全くもってその通りですが
そのような言葉遣いはおやめください。」
「はぁ···君、学年首席だよ?
引く手あまたなのよ??なんで諦めるの???」
「どれほど条件が良くとも
まともに働いて返せる額ではないのです。」
「はぁ···君の借金でもないのに···」
「お気遣いいただいたこと、一生忘れません。」
「はぁ···もうーーーーっ!!!
降参っ!!私が何とかするから諦めるなっ!」
ーーバンッ!!バタバタバタ······
「あっ!行ってしまわれた···」
『本当に···お優しい人···』
教育と言うものを何一つ受けず
野生児のように育ったマーサが
入学から3年で首席になれたのは
ひとえに、担任だったロシュのおかげだ。
入学当初は、家事と店の手伝いしか知らず
字の読み書きすらできなかったマーサに
ロシュは休み時間を使って、様々な知識を与えてくれた。
この国には《ギムキョウイク》と言う制度があり
13歳から18歳までの6年間は
必ず子供に教育を受けさせなければならない。
貴族の子は王都学園に、平民の子は王国学校にそれぞれ通う。
そのどちらの場合も《ギムキョウイク》に
必要となる費用は国が負担する。
食堂も無料で、好きなだけ食べられるので
まともな食事を与えられていなかったマーサは
ここで1日分の食事を貪り食っていた。
犬猫のように胃を満たすマーサを見かねて
食事のマナーを教えてくれたのもロシュだ。
『何とかすると言えば
本当に何とかしてくれる人だけど···
さすがのロシュ先生でも無理です···』
それでも、マーサにはその気持ちが嬉しかった。
自分の事を案じてくれるのは
今までの人生を振り返っても
ロシュただ一人しかいなかったのだ···
ーーバタバタバタ···バンッ!!
「マーサ・ウインターいるっ?!」
「···はい、おります。」
「今すぐ歴史教員室に集合!!」
「は、はい。」
教室の空気が凍り、皆の視線がマーサに集まる。
了承の返事はしたが···今は授業中だ。
「あの···」
「いい、許す。行ってきなさい?」
「ありがとうございます。マイル先生!」
マイルは、変わり者のロシュに呆れつつも
生徒のために奔走できる行動力を尊敬していた。
家庭環境にめげず、努力家で優秀なマーサを
他の教員たちも、何もしてやれないながら
優しい目で見守っていたのだ。
ーーコンコンッ!
「入って!」
「失礼いたします。」
教員室には、得意気な顔でソファーに座るロシュ
そして、その隣には見知らぬ紳士がいた。
『???』
「マーサ・ウインター!
あったぞ!!まともな仕事が!!!」
「へぇ?」
「君の救い人!ルイス・ジェラート公爵
···の執事ランド・マイルドだ!!」
「お初にお目にかかります。
マーサ・ウインターと申します。」
「あぁ···良かった···
ロシュの推薦だからどんな子が現れるのかと
今の今までビクビクしてたんだ!
私はロシュに紹介してもらった通り
ジェラート公爵家執事、ランド・マイルドだ。
気軽にランドと呼んでくれ。」
「ランド···
君の中で私の評価は一体どうなってるんだ?!」
「ん?言葉のままだよ?」
「むーーーっ!!!
もういい!!マーサ・ウインター!」
「はい。」
「端的に言うと、ランドは
ジェラート公爵家ご令嬢の侍女を探している。
君が条件に当てはまったから、私から推薦した!」
「ロシュ先生、お気持ちはありがたいのですが
普通の仕事で返せる額ではないのです···」
「大丈夫ってランドが言ってた!
君が契約を結ぶならってね!!
詳細は教えてもらえなかったけど
悪いようにはしないと誓わせたっ!!!」
チラと、ランドを見れば大きく頷いている。
「私がいては話せないらしいから
食堂で結果を待っているよ!ではっ!!」
ーーバンッ!!バタバタバタ···
やってきました!
マーサのサイドストーリーです!
書きたいことはたくさんあるのですが
脱線脱線になりそうなので
かなり端折っています!
今さらの裏話ですが
国の名前や殆どの貴族家名は
初代王妃ミキがつけました!
なので、日本人なら聞いた事のある
カタカナ英語なのでした!




