エピソード28
「ふはっ!······失礼。」
肩を震わせて笑いを堪えるハーツは
サッとクロエから顔を背けた。
それをじっとり責めるように
クロエは睨みと膨れで攻撃する。
「ハーツ様···笑いすぎです。
全然隠せてないですっ!!」
「···ごめん。
だって···ねぇ?
笑うなという方が無理があるよ···
ぷはっ·········ごめん。」
おかしいのはクロエの顔だ。
目の周りと鼻の周りが真っ赤で
パンパンに腫れてきっていて
元の人相すらわからない状態なのだから。
目なんて、横を向けば数字の3にしか見えない···
「クロエ様、こちらを。
濡らしたタオルに氷を少し挟んでおります。」
「ありがとう、マーサ。
···ハーツ様、しばらく顔を覆わせていただきます。」
「うん、早く冷やしてあげて?
クロエ嬢の愛らしい目と鼻が可哀想だ!」
「では、私はルイズ様と共に
後車に控えておりますので、失礼いたします。」
「うん!また後でね、マーサ!」
2人だけの空間となった馬車の中で
失礼なことだが、ハーツの許しに甘えて
熱を持った目鼻と、興奮した頭も冷やす。
『あっ···馬車が動き出した···』
クロエが貰い受けた遺品やお金だけでなく
マーサの旅支度まで整えられていたので
荷を積むだけで、公爵邸を後にできてしまった。
その慌ただしさと、自身の顔が原因とはいえ
こんな状況で笑っていられるハーツの豪胆さで
感傷に浸る場面ではなくなってしまい
若干拍子抜けしたクロエだったが
逆にこれで良かったのだと自身を納得させた。
『生まれ育ったこの家での最後の思い出が
悲しみと苦しみだけなんて···虚しすぎるもの···』
少し思い出しただけで
再び涙の気配を感じ、慌てて心に蓋をした。
「さて、クロエ嬢。
なんの話から始めようかな?」
「···《迷いの愛し子》と異変の関係について
まずは教えていただきたいです···。」
「だよね、気づかない方が不思議だもんね?
うん。異変と言うか···この異常は
《迷いの愛し子》が現れたことが原因。」
『·········。』
やはり、としか思わなかった。
《迷いの愛し子》の現われにより始まったのだ···
クロエに起こった不幸だけでなく
このアース国に起こった全ての出来事が···
「アース国に《迷いの愛し子》が現れると、
示し合わせたかのように(意思)と(言動)に
異常をきたす者が現れるんだ。
それも《迷いの愛し子》にとって、都合が良いようにね···」
「(意思)ですか?」
「うん。なんの確証もないよ?
教科書に書いてあるわけでも
誰かが教えてくれるわけでもないからね···
ただ、そうじゃなければ
説明できないことが多すぎるんだ。」
『確かに···正解なんて誰にもわからない。
でも···《迷いの愛し子》本人なら···?』
「で、ガイル帝国では仮説を立ててみた!
《迷いの愛し子》の望みを叶えるため
(意思)と(言動)に何かの力が働いていると!
例えば···」
ハーツはスっと、クロエの左手をすくい上げる。
クロエは慌てて、覆っていたタオルを取り去り
ハーツの動向を見守る。
「《迷いの愛し子》はクロエ嬢の指輪が欲しい。
だけど、その指輪は母君が残してくれた大切な物。
本来なら譲る、なんて選択はありえないんだけど
なぜか譲りたくなってしまう。
これが(意思)の異常。
で、実際に譲ってしまうのが(言動)の異常。」
『意に反して、大切な物を失ってしまうなんて···
なんて恐ろしいことなの···』
自身の指に光っている母から譲られた指輪で
それを想像しただけで、クロエの背中に嫌な汗が流れた。
気がつけば累計5万PVを超えていました!
小説を書くどころか
自分の中にある何かを
世に出すという事すら初めてで
現在も手探りの毎日なのですが···
こうして数字で私のページを
開いていただいたことが知れて
素直に嬉しいです!
どんな感想であっても
そっ閉じだったとしても
皆様の貴重なお時間を使ってくださり
ありがとうございました!!
しっかり完結だけは目指して頑張ります!
※タイトルの話数を変更しました!




