アイル・ジェラートside02
「まだ良くならないの?」
「うん···流行病は10日ほどで治るはずだけど
なかなか良くならないみたい···
ここのところ寒い日が続いていたし
体力がまだ戻ってないのかもしれない···」
『明日はクロエの誕生日なのに···
ソフィア伯母様が体調を崩していたら
またクロエが悲しむ···
クロエへのプレゼントで
僕の元気を分けてあげられたらいいのに···』
「クロエの誕生日···」
「そうね···祝ってあげたいのだけど···」
〈母は、とても気丈な人で
弱音を吐くようなタイプではなかった。
家族を大事にしてくれていたし
自分も十分に愛されて育ったと感じている。
父とも男女を越えた親友のような関係で
他所と比べても家族仲は良好だった。
もうすぐ6歳を迎えるこの頃の私にとっては
幼過ぎて思いつきもしないことだったが
今思えば、母は伯母を愛していたのだと思う。
それが恋愛感情だったのかはわからない。
ただ、特別で唯一で一番なのは
あえて聞かなくても、当たり前にわかる。
自分がクロエを見る時と同じ目で
いつも伯母を見ていたから。〉
次の公爵邸に訪れる機会は
クロエの誕生日もアイルの誕生日も
とっくに過ぎた頃だった。
ノエルはあれからどんどん無口になり
フレア家からも、明かりが消えたようだった。
「アイル。
ソフィアのところに行くから用意して···」
『クロエに会える!?
お母様···今日も目が真っ赤。
顔色も悪いし···フラフラしてる···』
「お母様···大丈夫?」
「······大丈」
アイルと視線が合わないまま
どこか一点を見つめた虚ろな表情で
ノエルの身体が宙を舞った。
「ノエルっ!!」
アイルの父ラースが抱き留め、事なきを得たが
腕の中のノエルは気を失っていた。
この日、ソフィアが息を引き取ったことは
まだ幼いアイルには伏せられることとなり
知らないがゆえ、ノエルやソフィアを心配しつつ
またクロエに会えなかったことに
アイルは納得のいかない気持ちを抱えていた。
『クロエ···まだ5歳までのクロエしか知らない
お母様もソフィア伯母様も病気で可哀想···
辛い思いをしているクロエも可哀想···
みんな可哀想···僕も···』
「ご懐妊ですね。
おめでとうございます。
少し···心身ともにお疲れのようなので
安静にお過ごしください。大事な時期なので。」
駆けつけた医者の診断に
何も知らないアイルだけでなく
こんな時だが、ラースも気を使いながら喜んだ。
しかし、ノエルだけは
なんとも言えない難しい顔をしていた。
結局、フレア家からは誰も
ソフィアとお別れができないまま
月日だけがただ過ぎた。
「アイル?
お母様は心が疲れてしまったんだ···
今はお腹にいる新しい生命のことも心配だ。
当分ソフィアやクロエのことは
お母様に聞かないでくれるかい?
お母様は心配性だからね?」
『僕もお母様と赤ちゃんが心配。
クロエやソフィア伯母様も心配だけど···
お兄ちゃんになるんだから
僕が我慢して守らなきゃ!』
「わかった」
「うん、ありがとう。」
アイルはラースの大きな手で
頭をガシガシと撫でてもらったが
父の顔にいつもの豪快な笑顔はなく
その表情には、諦めのような悲しみが漂っていた。
転機が訪れたのは、ノエルが倒れてから
そしてソフィアが亡くなってから、3ヶ月も後だった。
久しぶりに見たノエルの顔は
少し痩せていたが、記憶の中にいる母のままだった。
「アイルっ!!
沢山我慢や寂しい思いをさせてしまって
本当に、本当にごめんね···」
アイルはノエルに強く優しく抱きしめられ
母の温もり母の匂いに、懐かしさを覚えた。
懐かしく感じてしまうほどの時を
心も身体も離れて過ごしてきたのだ。
『お母様の匂い···懐かしい。
お母様いつもの元気な顔になった
良かった···ソフィア伯母さんも
そろそろ元気になったかな?
でも言っちゃダメってお父様が言ってたし···』
「お母様元気になった?」
「うん!もう元気よ!
お腹にね、新しい生命が入ったから
身体がビックリしちゃったみたい!」
『身体だけ?
お父様は心が疲れたって言ってた。
赤ちゃんが入ると心も疲れるのかな?』
「あのね、アイル···
お医者さんの許可も下りたから
今日こそクロエのところに行くわ。
···でもね?少しだけ話を聞いて?」
ノエルに聞いたのは、伯母の死と
クロエに起こっている異変だった。
アイルは子供ながらに母が心を病んだ理由を理解した。
そして、クロエの悲しみに寄り添えなかった
子供の自分を嘆いた。
良い事なのか悪い事なのか
書きたいことが多すぎて
全くまとまりません!
なんとか5話以内で終わって
本編に帰りたいです!
今更の話ですが
サイドストーリーの入れると
30話超えていて
設定やらなんやら間違ってそうです!
もし、名前違うぞ!とか
辻褄会わんぞ!とかあれば
どこかわかりませんが
どこかからか教えていただけると
とっても助かります!
お願いします!