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イボタ戦+半魚人の村

 イボタがスタートを切った。 同時に玄武は得物を振り下ろしたが、 スッと躱され腕の肉を浅く斬りつける。 最悪な事に玄武の傷が再生しない――何らかの魔法なのかそれとも、 戒めの鎖が使用された武器なのだろうか。


(こいつ速ぇ!)


 玄武は奴の腹部を蹴ろうとしたが、 軽くいなされカウンターの前蹴りを食らう。


「非常に遅いですね……」


 イボタが目にも止まらぬ速度で玄武の肉を斬り裂く――今の玄武には太刀打ちできなかった。 血塗れとなりその場に崩れ落ちそうになる。 だが、 彼は地を踏み抜き耐え抜いた。


「俺はあいつらの盾だ!! こんなところで死んでたまるか!!!」


 玄武は咆哮を上げ、 立ち向かった。 何度も斬りかかるも奴には当たらなかった。


「さようなら……小さな盾よ……」


 イボタの逆袈裟が跳ね上がる。 だが、 玄武はそれを柄の部分で受け止め、 得物をスッと手放した。 次の瞬間、 斧頭を思いっきり殴りつけ袈裟懸けに斬り裂いた。 無論、 柄の部分が自分に帰ってくるため背後に激痛が走る。


(これでいい……)


 刹那、 奴の腹部に右ストレートを叩きこんだ。 見事命中――イボタは口から血液を噴出した。


「少しやりますね……ですが……私の敵ではない」


 イボタが余裕の表情を見せ、 突撃しようとした。 だがその時、 彼女のポケットから女の声が聞こえた。


「イボタ、 撤退しなさい」


 イボタはポケットからトランシーバーを取り出した。 恐らく、 関雷雨と同じ製品だろう――


「姫様! 何故です!?」


「その国は滅んだも同然……見捨てなさい」


「ですが!」


「こんなところで貴方を死なす訳にはいきません!! 戻ってきなさい……早く!!」


 その言葉を聞いて、 イボタは転移魔法で自国に帰って行った。


「助かった……」


 玄武がその場に崩れ落ちる。 直後、 ジルコンが近寄り回復魔法を唱えた。 すると、 彼の傷口がみるみる癒えていく。


「ありがとう! 助かった!」


「どういたしまして!」


「そう言えば、 あいつを逃がしてもよかったのですか?」


 アーサーが関雷雨の面々にそう問うと、 「敢えて逃がしました」とジョーカーが答えた。


「せっかくですし、 近くの魚人村でも立ち寄ってみますか」


 ジョーカーの問いにダイヤが乗り気だった。


「ちょうど魚が不足していたところだし、 いいよ!」


 直後、 ダイヤのトランシーバーから女の声が聞こえた。


「あの~そっち一人余っていませんか?」


「どうしたの? ライム?」


 声の主はライムだった。 どうやら、 人員が足りないらしい。


「ベリル、 ライムの応援に行ってくれる?」


「いいですよ~」


 ベリルは【転移】でライムの元へ向かった。


「先輩、 私たちおろちんの所に戻りますね~」


 ガラナがそう伝えるとジョーカーは軽く頷く。


「先輩! 後はお願いします!」


 ルフナとガラナは【転移】で大蛇の元へ帰って行った。 可哀そうな事に置き去りになってしまったレモン。


「レモンはいいの?」


「私は本部に戻って武器の手入れと弾薬の補充をしてきます!」


 レモンは【転移】で本部へ戻って行った。


「じゃあ行きましょうか!」


 こうして、 一行は魚人村へと向かって行った。 魚人村は半魚人が住んでいる村で、 主に漁業で生計を立てる。 この地域では海水温が低く冷たい風が吹き荒れている為、 気候が亜寒帯となっている。 そのうえ、 良質なプランクトンが爆発的に増えている為、 質の高い海産物が多く捕れる。


「思ったより発展している!」


 その村は、 北欧の建築物が建てられており、 多くの漁船や貨物船が停泊している。


「ようこそ! 関雷雨の皆さま」


 この村の若い村長らしき人が出迎えて来てくれた――この世界の半魚人は色白で人間と大差変わりないが、 体毛が白い。 この村も、 関雷雨と友好関係を築いている。


「お久しぶりです! 村長さん!」


 ダイヤが元気よく挨拶を返した。


「ねぇねぇ! 関雷雨さん! わたしも村の外に連れて行って!」


 村長の銀髪ストレートロングのセンター分けで黒いワンピースを着た少女――そう、 サラキアだ。 彼女が村長の後ろから飛び出して2人に駄々を捏ねる。


「君まだ子供だから連れていけないよ!」


「私たちは魚を買ってきますので3人はご自由に!」


 ジョーカーとダイヤが市場へ向かって行った。


「あー俺達と一緒に行く?」


 玄武はサラキアにそう問うと、 彼女はコクリと頷き街を案内した。


「ねぇねぇ! お兄さん達! 私を村の外に連れて行って!」


「まだダメです!」


「え~」


(あれ? 俺ら金持ってた?)


 玄武が焦ってポケットを探るが持っていない。 ある意味詰んでしまった。


「あの~君の家連れて行って貰ってもいいかな?」


「えー外に連れて行ってくれるなら~」


「わかった! 村長の許可が下りたら連れて行ってあげるから!」


「はーい!」


 サラキアは3人を自宅に招き入れた。 村長とその奥さんもいたため、 全員で温かい魚料理を食べた。


「パパ! ママ! 私村の外に行ってもいいかな?」


「危ないからダメに決まってるだろ!」


「彼女は僕が守りますのでどうか、 預けてくれませんか?」


 玄武が頭を下げて懇願した。


「ならん! どこの馬の骨かわからぬお前に娘を預けるなど!」


「因みに僕はそこのトリスカ? を滅ぼしました!」


「国を滅ぼしただけでは……」


「じゃあ! 一週間に2回は帰ってくるから! それでいい?」


 サラキアが駄々を捏ねた。 流石に折れた村長は、 玄武に娘を託した。


「すみませんが……この子をお願いします……」


「週に3回はご自宅に返しますので!」


「すみません、 ありがとうございます」


 交渉は何とか成立した様だ――それからは何も無かったが、 夕方辺りにトラウト王国が村を攻める事を耳に入れた玄武達がジルコンの転移魔法であの場所へ移動した。


 *


「だいたいこんな感じ~」


「”こんな感じ~„じゃねぇよ! ヤバイ奴来てたじゃねぇか!」


 青龍が音速でツッコミを入れる。


「次はメルビレイと戦争か……」


 麒麟が考え事をし始めた。 奴らへの対処だろう――


「メルビレイだけじゃねぇぞ……シャムナフトラ、 あいつらも警戒しておかないとな」


 智和が全員にそう警告した。 シャムナフトラの異世界人を3名殺害したため、 いつ報復が来るかわからない。


「イボタだっけ? メルビレイの?」


 麒麟が玄武にそう問うと彼は相槌を打つ。


「あいつがこの村の存在に気付いて無いといいのだがな~」


「昨日、 一昨日の事件を聞いて飛んでこないわけないでしょ」


 白虎が呆れた態度を取りハァとため息をついた。 直後、 彼女は時計を見た。


「ごめん! 関雷雨の人と話があるんだった!」


「行ってらっしゃい!」


 エメラルドが挨拶を交わすと、 彼女は可愛らしくグッドサインをした。


「どうする? 竜馬?」


 青龍がそう問うと、 麒麟は机に両肘を立てて寄りかかり、両手を口元に持ってくる。


「村の中にメルビレイの者が居たら情報を吐き出させろ……喋らない場合は殺せ」


 そう口にして、 一時的に解散とした。最悪な事に招かれざる客が村の中に入っていた。



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