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22 黒部春子の名案

 当たり前のことですが、王立学園は貴族の子息子女が通う学園です。そして貴族の子息子女は、王立学園前から家庭教師による教育を受けます。

 つまり、王立学園に入学する前から学ぶべき教育課程は全て修了しているのが当たり前となります。王立学園で学ぶことは、復習という位置づけになるのです。


 ただ、例外はあります。貴族の中には、家庭教師を付けることのできない方たちもいます。金銭的な問題がもっとも大きい問題ですが、領地の地理的な位置関係も問題になってきます。

 地理的な問題でいえば、王都から離れた辺境の領地は、家庭教師を雇いにくいということです。

 辺境に家庭教師を呼ぼうと思ったら、王都で家庭教師を雇う金額の十倍は出さなければ、良い家庭教師は来てはくれません。それも、リベラル・アーツに関わる全ての課目の家庭教師にそれぞれ給金をお支払しなければなりません。

 なぜなら、辺境であれば、家庭教師は兼務することができないからです。王都であれば、今日は王宮で殿下に、次の日はシュピルアール家で教え、次の日にスタリール家で教えるということが可能になります。

 王宮で教える程の家庭教師の方なら、他の貴族から引っ張りだことなります。王族と同じ家庭教師を雇っているというのは一種の貴族のステータスですからね。

 

 ただ、例外があるのは、辺境に住む貴族です。本来、貴族は領主代行を任命して王都に住むものですが、自ら領主として領地を統治する貴族もいます。アウンタール家は、開拓団出身の貴族ですから、領地に住むというスタイルなのでしょう。


 そんな辺境の貴族が家庭教師を雇うとなると、専属の家庭教師として雇わなくてはなりません。王都では複数の貴族の子息子女に教えることが出来る分、家庭教師の収入は多くなります。その分を、辺境の貴族は補填しなければならない。また、辺境に住むため、衣食住や、人によってはその家族のことを含めて給金を払わなければなりません。

 

 そういうわけですので、カトレアは、またカトレアの兄弟姉妹たちは家庭教師を雇うことが出来なかったのでしょう。


 ですから、カトレア・アウンタールにとっては、この王立学園の授業で初めて学ぶことも多いのでしょう。

 そして、カトレアは半年遅れでの入学です。半年分の授業に出ていませんのでその遅れを取り戻すのも大変ですし、授業に着いていくのも大変だと思います。


 そのような中で、カトレアはとても努力しているようです。


 そう、私は公表された成績を見ながらそう考えます。多くの貴族の子息子女が全科目満点です。一度学んだことなのですから、当たり前といえば当たり前です。


二割も点を失っているカトレアの成績がとても目立ちます。

『やっぱり粗野で野蛮な……』などという陰口を、張り出された試験結果を見ながら言っている令嬢がいらっしゃいますが、私は聞こえていない振りをします。

 二割の点を落としていると考えれば、異例ということではありますが、八割も取れていると考えたら、とてもカトレアは頑張っていると言えると思います。初めて学ぶことも多く、半年遅れの中でとても努力していると言って良いでしょう。


 そして、殿下とカトレアの間を繫げる方法を私は見つけた気がします。


簡単なことです。カトレアは、アウンタール領産の紅茶の販売の為に、いつも放課後は学園でお茶会を開いています。もっとも、それに参加している貴族の方は残念ながら誰もいないようですが……。

 カトレアは、お茶会を開き、誰かが来るのを待ちつつ、誰もいないときは勉強をしているようです。


 カトレアのお茶会に割り込みをして、そして殿下がカトレアに勉強をお教えするようにすれば良いのです。


 そうです。懐かしい思い出です。私の妹、黒部秋子も、図書館に勉強しに行くとだけ私に言って、実は図書館でボーイフレンドと一緒に勉強をしていた、ということがありました。朝から、妙にそわそわして、そして『お姉ちゃん、この服装変じゃない?』と何度も聞いてきたときです。夕ご飯の時に、それとなく聞いたら、そうでした。


 殿下とカトレアを恋仲にするのに、殿下が勉強を教えるというのが、もっとも堅実で確実な方法だと私は思います。


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