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4-2

 そんな話の間に全員、ハンバーガーは食べ終わった。

「デザートに、グレープフルーツを食べませんか?」 西原が言った。

「ああ」

「いいですね」 康浩とスヨンが、ほぼ同時に答えた。


 それを聞いて笑った西原は、自分の大きなバッグからグレープフルーツを二つ取り出すと、立ち上って部屋の隅にある水道で黄色いグレープフルーツを洗った。

 スヨンも立ち上がって、蛇口の横にある小さな棚から皿とフォークを出した。


「それ、わざわざ買って来たの?」 康浩が、西原の背中に訊いた。

「いえ、さっきのバーで店長がくれたんです。現場検証が終わったら、ご苦労さんって言ってくれました」 上半身だけ振り返った西原が、まぶしいばかりの笑顔で答えた。

「へー」 かわいい女性の役得なのか、遅くまで働く女性を不憫に思ったのか、バーの店長からプレゼントされたようだ。


「これはカリフォルニアから直輸入しているので美味しいよと、店長は自慢していました。今度は是非、プライベートで来てほしいそうです。あんな場面で、ちゃっかりした奴ですね」

 西原は笑いながら半切りにしたグレープフルーツを皿に載せて、康浩の前に置いた。あのバーは、カリフォルニア産の飲食物にこだわりを持っているのだと、康浩は改めて思った。


 しかし康浩は、実はグレープフルーツ特有の苦味がどうも苦手だ。立ち上がって棚からスティック砂糖を持ってくると、それを自分のグレープフルーツにかけた。


「それ、甘くないですか?」 スヨンが、少し不思議そうな顔で康浩に訊いた。

「いや、これくらいが、ちょうどいい」と康浩は答えた。


 一口食べたら特有の香りが口に広がって、大量のビタミンCが補給される気分がした。三人とも黙々と食べ、あたりには柑橘類の香りが漂った。


「あっ!」 果物を食べ終わった康浩の頭に、突然ある事実がひらめいた。

「どうしました?」 スヨンと西原が、驚いたように康浩を見た。

「外科にいた頃、よく患者さんに話していたことを思い出した」

「何ですか?」 スヨンが、早く答えを聞きたい生徒のように膝を乗り出してくる。


「グレープフルーツジュースには気をつけろ。グレープフルーツには、解毒酵素のシトクロムを阻害する作用がある」

「はい、聞いたことがあります」 スヨンがうなずいた。

「その作用はカルシウム拮抗剤などの高血圧治療薬で強く出る」


「どうなるんです?」西原が尋ねる。

「薬物相互作用と呼ばれ、薬物同士が干渉して思いがけない効果を生み出すんだ。高血圧の薬の場合は、効きすぎて血圧が異常低下する」

「あっ!」 今度はスヨンが声を上げた。席を蹴るように立つと、自分のパソコンを一心に動かし始めた。康浩も自分のパソコンで、シトクロムについての医学文献を調べた。


 その様子を見た西原が、静かに果物の皿を片付け始めた。


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