55話 夜に話す。そして宴会
55話 夜に話す。そして宴会
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「雅ちゃん、どうしたの?皆に何かあったでやんすか?」
「心、心様っ……雅疲れたのよ〜」
雅は急いで来たのか、心に抱きついたまま、肩で息をしている。
「雅ちゃん。ひと休みしてて。その間に孔ちゃん呼んでくるから」
そう言って心は孔ちゃんを呼びにいった。
「雅ちゃん!」「孔ちゃん!」
孔ちゃんが雅に駆け寄る。
雅は月河王との出来事を、孔ちゃんに話した。
それを聞いた孔ちゃんは少し考えて、心に言った。
「心様、今日紅ちゃんが寝た後で皆集合です。その間雅ちゃんはゆっくり休んで下さい」
その日の夜遅く、紅が寝た後で皆集合していた。
「……という訳で、雅ちゃんが急いで戻ってきた訳なんです。」
「雅ちゃん、本当に孔ちゃんの言う通りなのか?」
理央ちゃんは半泣き。小さい者や子供にはつい、幼少期のえりを重ねてしまうせいか涙もろいところがある。
「残念だけどそうなのよ〜
それで、豆助は『心様の側で色んな体験をするのがいいと思う』と言っているの」
「心、唇から血が出ているよ。気をつけて」
松江が心の肩にそっと手を置く。
心は自分でも気づかないうちに、唇を噛みすぎて血が出ていたのだ。
(何で紅がそんな目に。わっちが天女楼を留守にしがちだったから……
天女楼へ来た時、人に怯えながら抱き合っていたあの子達の事を考えたら、もっと注意深く関わらなくてはいけなかったのに!)
「ちょっと待った!」
友子が心を見て話始めた。
「心、今あんた自分をめっちゃ責めてるでしょ。
それは違うよ。
雅の話をちゃんと聞いていた?
豆助が少しずつ外に興味を向いてきたように、紅もそんな体験が必要なんだよ。
ただ、まだ心の近くがいいってだけ」
「そうね。紅ちゃんの中に何かがいるとしても、それは誰のせいでもない。悪いのはその何かだもの」
えりも冷静に心に話す。
えりは人知れず理央に育てられた自身の幼少期とも、重なる部分があるのかもしれない。
「そうだよ。雅ちゃんが急いで飛んできたのも、ずっと一緒に育ってきた豆助の意見を、早く心や皆に伝えるためだよ。先ずはそうするしかないから」
「松江様の言う通りです。孔は心様のお気持ち、よく分かります。ですが今はそうするしかないのです。
黒い塊の根本的な解決策は、その後に考えていかねばなりません。
幸い私や理央ちゃん、桜雅コンビは黒い塊の感覚が分かります。これからいくらでも対応策を考えていけるのです」
孔ちゃんもゆっくり落ち着いた口調で話をする。
皆の温かい言葉が、心に冷静さを取り戻していった。
「そうだね。ここにいる皆と一緒に、いろんな経験を積んでいくことが紅の心を強くするんだね。
それはきっとわっちらも……」
心はそう言うと、急に黙り込む。
「大丈夫?心?」
えりが心配して声をかけると、心がぶつぶつ独り言の様に話している。
「テーマ……」
「は、何て?」
えりが聞き返す。
「今回の旅のテーマ!『探せ!見つけろ!四人好み、異国旅(えりと理央のウエディングに向けては内緒)』
は変更でありんす。
『探せ!見つけろ!四人の好み、ドキドキワクワク体験旅!』で、どうだろ!」
「あんた、ここまできてまだテーマを。ぷぷっ」
「心様、そこまでのこだわり。あっぱれです。さすが我が主、松江様のご親友……」
「孔ちゃん、そこは乗らなくても良いのよ」
「いやいや松江様、やっぱりえり姫様と、ご一緒の仲間。えり姫様と同じに素晴らしい!」
「いや、孔ちゃんは冗談で乗ってるだけだけど、理央ちゃんマジで怖いよ……」
「まじ卍!宮爺は良きテーマかと思うぞ」
「うん!やはり物事には何でもテーマは必要ですぞ!発明や発見も仮説から入るものだしな」
「源外先生、そこは少し違うかも〜」
美桜が源外先生に突っ込む。
皆がそれぞれ話しだして、もうわちゃわちゃになってきた。
「まぁ!何はともあれ、テーマが決まったところで……」
友子がまとめ出す。
「うん、新しいテーマ
『探せ!見つけろ!四人の好み、ドキドキワクワク体験旅!』
決定のお祝いに……」
「宴会だぁ!」
皆が一斉に準備を始めた。
「それで紅は何が好きかのう?」
「宮爺、紅は何か服に興味がありそうよ。服が作られていくのが楽しいのか、いや?コーデするのが良いのかなぁ」
「いやいや、まだ知らないだけで山に行って、草花を見たり、採取するのも楽しいかもよ!」
「友子、そんな事言ったら、私と一緒で料理も楽しいかもよ。きっとした事ないでしょう」
「でもさ松江、紅ちゃんは舞とか歌なんかも好きかもよ。芸事少しずつ練習してたんでしょ」
「えり、それは言えるかも。紅は素質あったでありんす」
(紅にどんな体験がいいのか!って話す圧が強めでちょっと怖いかも〜)
美桜があーだこーだ話すのをちょっと引いてみていると、
孔ちゃんが美桜に手招きしている。
美桜がそこに向かうと、孔ちゃん、理央ちゃん、雅が待っていた。
「美桜ちゃん、今は何かを感じるかい?」
「理央ちゃん、今は感じないよ〜」
「そうですよね。皆、今は感じない。
これからは、感じた時の状況や時間、時期を全て細かく記録しましょう。
それを源外先生にも見せて経過観察していくのです。
何かが分かるかもしれない」
孔ちゃんがそう言うと皆が頷いた。
(日の本で危惧していた禍津神の事。
旅に出る時は、遠衛様に用心として伝えていたが……
黒い塊が禍津神なのかはまだわからない。
まずはこれからよく観察していかなくては)
孔ちゃんは色んな可能性を考えて行くことで、万全な対策を考えようとしていた。
夜も更けて宴会もお開きとなった。
「さあ、明日紅が起きたらわっちが紅に聞いてみるでやんす。乞うご期待!」
「ああ、楽しみにしてるよ〜」
心の言葉に、皆も何が紅の興味を引くのか楽しみに待つことにした。
上海に来て数週間、夜はすっかり冷え込み冬が始まりつつあった。
読んで頂きありがとうございました。
次回の投稿は10月16日(金)20時です。
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