52話 心と健さん、衣装作りで盛り上がる
52話 心と健さん、衣装作りで盛り上がる。
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「えっと、まずは皆の衣装のイメージを決めます。最初はえりね」
心と健さんは、早速皆の訪問用の衣装の話を初めた。
「うん。基本は心にお任せだけど」
「えりは洋装で、基本の形はさっき試着したバッスルドレスね。そして一部を着物の生地にします。
ジャケットの襟の部分にはしん国の蘇州の刺繍を入れるの」
「入れる刺繍を牡丹にするといいよ。しん国でよく刺繍される花だ」
「いいねぇ、健さん。そうだ!皆どこかに牡丹を入れよう。皆が揃ってしん国への敬愛の気持ちを表現できるよ!」
「お〜!」パチパチパチ……
皆が二人のアイデアに思わず感心して拍手する。
「それでさ!ブラウスとジャケットのボタンを中国風にして、健さんあれ何ていうの?ほら紐の奴……」
「ああ、あれは盤扣と言って紐を編み込んで作る留め具なんだ!良いね。いっそのこと、日本のちりめん生地を編んで作ってみるかい?いいものが作れるよ」
(心の『紐の奴』でわかるのも、心と健さんだからだろうな……見事にオタク仲間だわ)
えりや他の皆も目を合わせて、頷いてる。
「それでスカートの裾周りにも着物生地の上に蘇州の刺繍をしよう」
「うん、イメージは分かったわ心。楽しみにしてるよ」
(だってこれ以上何か言うと、果てしなくなりそう。もう充分素敵だし)
えりは心に『楽しみ』とだけ伝えることにした。
「じゃあ、次は宮爺ね。こちらスーツですが、宮爺手持ちの薩摩の大島紬で作って、裏地には中国の華やかな柄物の生地を使います。蝶ネクタイも同じ生地で作ってさ〜、牡丹の花のカフスボタンにします。
ボタンだけに!ぷぷっ」
「上手い!」
松江と友子、宮爺がうっかり反応する。
「心、最近おやじギャグ、よく使うようになったね。昭和おやじみたいだよ」
えりが思わず突っ込む。
「ごめんごめん、やっぱ気持ちがアラフィフだからね。つい皆のデザインするのが楽しくて思わず、さ」
(わしの薩摩紬が……まぁいいか。また作れば!
あ、なんか心、瞳孔が開いてきてオタクモードになってきておる。大丈夫かの?いや健さんも瞳孔が開いてきておるな!)
「次は理央ちゃんと孔ちゃん。二人はいつもの服が和洋折衷味があるから、そこにしん国のニュアンスを足すよ〜。
理央ちゃんは、長羽織の襟元と裾、袴に蘇州刺繍を入れるの!孔ちゃんは服が元々しん国寄りだからな〜
あと、どうしようか健さん?」
「心ちゃん!二人とも帯はこのままにして、羽織紐と帯の飾り紐をしん国のめでたい結び方にするのはどうだい?」
「ふふふ、健さん!そりゃあいいね。じゃあ帯に牡丹の花を入れてと。それで……」
「いや、心様!もう何も足さない方が素敵です。
日本の侘び寂びですよ!
孔と理央ちゃんはこれで満足です」
孔ちゃんと理央ちゃんは、目を合わせて頷く。
心と健さんはどんどん二人だけの世界に入りつつあった。
「いやぁ調子出てきたぁ、それで松江はさ!」
「う、うん」
「な〜に?どうしたの松江!」
「い、いや、ちょっとだけ心のテンションに追いつけないだけ。ちょっとだけだよ」
「松江はさぁ、ちょっとチャレンジしてチャイナドレスね!」
(いや、ちっとも聞いてないしな!)
皆は再び目を合わせた。
「え、何言ってんの?まだチャイナドレスはこっちの世界にないでしょう。それに訪問には向かないよ」
「いやそれも松江様なら良いかと!」
「ちょっと、孔ちゃん、それはなし」
うっかり褒めてしまった孔ちゃんも、テヘペロして黙る。
「うん。だからね、少しだけ体の線に沿った服だよ。前の世界の服だとベトナムのアオザイみたいなやつね。上着とズボンでさ」
「ああ!それならいいか」
「ねぇ、健さんこれこれ!見てよ」
心は持ってきた『世界の民族衣装』の本のベトナムのアオザイのページを見せる。
「おお!これはいいねぇ。松江様に似合いそうだ。
これなら日本の絹地で作って美しい牡丹の刺繍を施そうか。最近身体の線に沿った服が出てきてるし。これは最先端だよ」
「いいね。それで和かんざしをつけようか。
ひゃあ!もう最高だ〜」
心と健さんは益々盛り上がる。
「お〜い、心〜!大丈夫かな聞こえてる?
あたし印度シルクで作った着物が、牡丹の花みたいな刺繍だからさ。それに何か加えてよ」
友子が希望を言っていると、
『何か加えて』に、心は反応した。
「いいねぇ。髪を結んでいる組み紐をしん国の飾り紐にしてみよう。帯も何か工夫するよ。
よし、あとは美桜と紅ね!健さん!」
「はっはっは!子供服はより可愛くできるからねぇ」
「美桜と紅は二人で向こうへの贈り物を渡す役をしてもらおうか。子供が渡すと可愛くて相手も喜ぶよ。
美桜の帽子と服はデザインそのままに生地に蘇州の刺繍を沢山したものにしよう。フリルも加えてさ」
「わあ、美桜の服も可愛くなるのね!嬉しい!」
「紅ちゃんは心と同じで着物にして、日本の桜刺繍の着物に牡丹を追加で刺繍したものにしてみるか」
健さんが紅に聞いてみる。
「紅はそれがいい。美桜ちゃんと一緒に贈り物を持って仕事をする」
「紅ちゃん、一緒にお仕事するの初めてなのね。
美桜は楽しみなのよ」
「うん。紅も楽しみだ。今では豆助とだけ仕事してたから。ここで心様や皆の役にたつのは嬉しい」
あまり笑わない紅が、笑顔になっている。
「わぁ、紅ちゃん笑うともっと可愛いのよ」
「そうよ。だって元々が可愛いんだから」
心がそう言って、紅の頭をぐしゃっと撫でた。
「心様、やめろ〜」
そう言いながら紅は笑っていた。
「よし!じゃあ皆の訪問の時の服が決まったね。
あとは、普段着る洋装を各々選んでね!
私は早速リメイクする着物を持ってくるよ、健さん」
心は凄い勢いで、着物を取りに行った。
皆は心が出ていき、健さんが生地を見に行ったところで、ホッと一安心した。
「いや気持ちは嬉しいが、これ以上夢中になると夜中になるでの。宮爺、体力が持たんのよ」
「そう!嬉しいんだけどね」
宮爺の言葉に皆賛同した。
一方、心は走りながらニヤニヤが止まらなかった。
(やっぱりこういうのは楽しいなぁ〜
この服作りを完璧にして、必ず訪問を成功させなきゃ。きっと私達が刺繍や薬を探す旅がうまく進むかは、この訪問にかかっているはず!)
心は楽しい反面、身が引き締まる思いも同時に感じていたのだった。
心に服選びをしてもらい、美桜と一緒に贈り物を運ぶ事が決まった時……
紅が笑っていると、紅の心の一番奥底にいる、ビー玉くらいになっていた黒い塊は、更に小さくなり小豆の大きさ程になっていた……
この黒い塊は紅の感情でその大きさが変わっていく。
今のところ紅は元気で、黒い塊の影響は全くないのだった。
◆
そしてその頃……
心達と別行動していた流、治助、まるちゃん、豆助、加羅様は河を船で上がっていた。小さい蒸気船ではあるが、よりスムーズに動くのは加羅様が乗っているからだろう。
「やっぱり加羅様がいると、船旅に余裕が持てますね」
「治助、よく分かっとるな!やはり我は偉いじゃろ?」
「加羅様、やっぱり偉いぞ」
豆助がしっかり褒める役目を果たしている。
「うん、河の神や水辺の木の精が今回望んでいる大きさなら、一匹だけなら魚を釣って良いと言っているなぁ」
「え?たった一匹なのか?」
まるちゃんが、驚いて流にたずねる。
「そうだよう〜今度俺が狙っているのはかなり大型のなかなか釣ることができない幻の魚なんだよ〜
神が釣ってもいいと言ってくれただけ、珍しいことなんだ〜
何度かここに治助様と来ているが、神がいいと言ってくれたのは初めてだぁ。いやぁ楽しみだ」
流は心から神に感謝していた。
※資料探しと創作の為、1週間程休載いたします。
次回の投稿は10月8日(木)20時です。
よろしくお願い致します。
※10月1日(木)19時、スピンオフのお話
「お疲れなアラサー着物女子、推し活旅で推し友の神対応に癒された件」 の第7話
を投稿致します。良ければお楽しみ下さい。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。皆様の日々のちょっとした楽しみに。
そして心がふわっと軽くなってもらえたら嬉しいです。
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