35 理央のプロポーズ
新しいエピソードを投稿しました。
読んで頂けると嬉しいです。
さくら亭の閉店時間が近づく。今日の理央はお店で失敗ばかり。焼き物を焦がし、味噌汁を沸騰させ味噌の風味を悪くする。しまいには料金を貰いそびれそうになる。
「どうしたのですか?今日の理央は、心ここにあらずって感じです。
昨日の宴会で夜更かしてたからじゃないですか?」
「そうかもしれません。すいませんでした」
「大丈夫よ、理央。また明日から一緒に頑張りましょう」
どうしよう。何と言えば、この気持ちを姫様に分かってもらう事が出来るのか。本当にどう話せば……頭の中でぐるぐる考えが巡る。
刻々と時間は過ぎていく。辺りは暗くなり、まるいお月様が顔を出した。カエルと虫が鳴き夏の夜を彩る。
草木が夜露に濡れ、月の光でキラキラ輝いている。
平松の宮邸の庭に咲く白い夜顔の花や、まだ江戸では珍しいジャスミンの花の香りがそっと漂う。
「なんと綺麗な月夜でしょう。理央、見て。
白い花々の見事なこと」
えりが庭の景色をゆっくり眺めていると、
「えり姫様、私の話を聞いて頂けますか?」
理央が真剣な顔でえりに尋ねる。
「うん?なんですか、理央」
「えり姫様、私は今までずっと姫様に使役としてお仕えしてきました。幼い頃からずっと……
ですが、これから私は使役としてではなく、姫様と共に夫婦として人生を歩んでいきたいのです。
えり姫様、私と結婚していただけませんか」
言えた!言えたぞ!理央は思いを伝えることができ、ほっとした。
そしてゆっくりとえり姫様を見てみると……
「はあ……」何だかキョトンとしている表情。
「えり姫様?やはりお嫌ですか?」
理央が不安になり聞いてみる。
「えっと、私はもう夫婦のような感じだと思っていましたが……」
「え?」
訳が分からなくなってきた。
「えり姫様、どういうことでしょう?」
「だって、以前理央が倒れて狐の姿に戻ってしまいしばらく横になってた時、私から告白したんじゃない。覚えてないのですか?」
「ん???」
理央はその時のことを思い出してみる。あの時、えり姫様は私を抱きしめてこう言った。
「理央、早く目を覚まして。理央が居なかったら私何もできないの……」
「私の大切な理央……」
「早く私のそばに戻ってきて」
これはえり姫様にとっては告白だったのか?なら姫様は?
「あの〜姫様、夫婦のようなものとはどういう……」
するとえりは少し怒ったように、
「だって私が自分の気持ちを正直に言ったら、理央は戻ってきてくれたでしょう?
それは私を受け入れてくれたのではないの?
それからずっと二人でいるでしょう? だから!」
理央は、想像の斜め上をいく展開に頭がついていかない。
「す、すいませんえり姫様、すると姫様は私のことを思っていると?
それで、けっ、結婚して下さるということですか?」
「いや、だから!もうしてるようなものって言ってるでしょ!」
う〜んと、理央が頭を抱えていると、どん!えりが理央に体当たりしてきた。
「ひ、姫様?えり姫様?」
理央はえりを受け止める。
「あのね、私はずっと理央だけなの!私には理央しかいないの。
好きなのは当たり前なの!
使役でも夫でも何も変わらない。
私の隣には、今もこれからも理央しかいないの。なんで分からなかったの!ひどい!」
えりが理央の腕の中でそう言って怒っている。
「すいません……」
何で私は謝ってるんだろう。
だが、姫様は前から両思いであり、夫婦になるのは当たり前だと言っておられるのか……
「えり姫様、お気持ちわかりました。ですが、こういうことは私からちゃんと言わせて下さい。」
理央はえり姫様の両手を握り、
しっかり目を見て、笑顔でこう言った。
「えり姫様、私と結婚してこれからも一緒に人生を歩んで頂けませんか?」
「はい!私にはそれしかありません」
二人はお互い嬉しくて笑い、泣いていた。そしてお互いを抱きしめる。二人は顔を見合わせ、自然と唇を重ねる。庭の池には、二人のシルエットが満月をバックに映っていた……
「ぴちゅ!」
小さく鳴いて二羽の小鳥が少し離れた木に止まっていたが、さっと飛び去って平松の宮邸に入っていった。
理央はえりに、皆と昨日相談したことを全て説明する。
「二人の事だから、一緒に頑張りましょう」
えりはそう言って笑う。やはりちゃんと話すべきだった。理央も笑って答えた。
えりと理央が手を繋いで、部屋に行くと、客間に明かりがついている。
明かりを消さねば。昨日からついていたのか?理央が行くとえりも理央にくっついてついてくる。
嬉しい。思いが通じ合うとはこういうことなのか……
部屋に行くと、ちかっ!小さい光がきらめき、そしてパン!っと音が鳴る。
理央はえりをかばう姿勢を取る。と、
「おめでと〜っ!」
昨日帰ったはずの皆が、いつの間にかまた集まっている。
「ふふ、源外先生にクラッカーもどきを作ってもらったでありんす」
「ああ!サプライズか!久しぶりだから分かんなかったよ〜」
えりが全てを理解して、理央にも教える。「あのね、理央……」
何だかふたりは初々しい雰囲気。
「えり。やったね!おめでと〜
美桜と雅がすぐ教えてくれたよ!」
友子が嬉し泣きしている。
「わぁ、遠くで鳥が鳴いてるとしか。緊張してたから、気配が読めなかったのか……」
理央が照れに照れているが、えりは平然としている。
「元々夫婦みたいなもんと思ってたのでありんすか。まあえりだからねぇ」
「えり、そりぁ理央ちゃんもちょっとわかんないよ。結果OKだからいいけどさ」
「え〜だってぇ、松江」
「いいんですよ、松江様。私たちにとっては幸せなことです。あらためて皆様、本当にありがとうございます」
理央とえりが皆に頭を下げた。
皆それを拍手で迎える。
「先ずはお祝いの乾杯をしましょう」
孔ちゃんは素早く皆に乾杯用のお酒を回す。
「では、ここはりえ兄に音頭をお願い致します」
孔ちゃんが言うと、お忍びで来ていたりえ兄(帝)が、大泣きの状態で客間に入ってきた。
「えり、理央まずはおめでとう。嬉しいような、寂しいような。これからの神々のこと、私も応援している。私のえり姫がお嫁に…でも、とにかく乾杯〜!」
「乾杯〜!」
皆の声が庭まで響いた。
空には変わらずまん丸のお月様。
庭には小さな狐が一匹。不思議なことに使役達も誰も気が付かない。しばらくするとふっと小さな狐は消えてしまった。
大変申し訳ございません。8/29迄私事都合で投稿お休みさせて頂きます。(詳細は活動報告へ)
まずはおめでとう。理央アンドえり。理央は神々から結婚を許されるのか、異国への旅で薬や衛生材料は見つかるのか?どうぞこれからをお楽しみ下さい。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。四人と使役達のこれからが気になる!面白い!と少しでも思って頂けたら、スター(☆☆☆☆☆)やブックマークで応援お願い致します。
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