30 逝った人 残された人
30話 投稿しました。読んで頂けると嬉しいです。
この後は番外編書きますね。
よろしくお願い致します。
「えり子様!何故ここに……」
遠衛様は愕然としている。
「私はえりです。何故母上様の名前を知っているのです?」
「ああ、そうか……そうなのだな。
その姿も声も、まるでえり子様がそこにいるようだ……。
だから、だからこそ許せない!
えり子様はもういない!
花の盛りで! 先帝のせいだ!
えり子様は輝く美しい巫女様であったのに……」
「貴方はえり子様を思っていらしたのですね。だが、先帝に奪われた……」
遠衛様は呟くように話す。
「孔ちゃん、いや孔様。私はただそっと見ているだけで良かったのだ。
巫女神楽を踊るえり子様は、まるで天女の様で……。
私はあの頃、何時もみていた。
皆に微笑む巫女のえり子様は、もういない。
せめて我が娘との子、玉川宮様に帝になって頂くのだ」
「お爺さま……何と悲しい。」
玉川宮様はそれを聞いて泣き出してしまわれた。
「えり子様は幸せだったぞ!
使役だった私が言うのだから!
巫女の時も幸せだったが、葵様とご一緒になられてからはもっとだ!何時も笑っておられたんだ……。
そして何よりもえり姫様を産みたい。理央、その後はよろしくと言われたのだ。だから絶対、絶対にっ! ううっ…」
「遠衛様、大切な人が先に逝くのは悲しい事でありんすね。前世夫に先立たれ、今は家族も亡くしたわっちは、痛いほど分かりますよ。ですが、その先、自分だけの思いを通そうとしてはなりません。
貴方は今、えり子様が大切に思っていた人、貴方を思っている人を、傷つけているではありませんか」
「そうだよ。あたし達も前世で先に人を見送るのがどれだけ辛いか分かってるよ。ねぇ、松江。」
「そうね友子。私もずっと泣いてた。
でもね逝った方もきっと願っているのよ。大切な人の幸せを。遠衛様、あなたの周りをよく見て」
見るとえり姫様や理央、玉川宮も泣いている。そしてまるちゃんも。
「えり姫様……」
「あんたさ、俺たちをあれほど可愛がってくれただろ? ちょっとだけ愛情の向け方を、間違えただけだよ。流石にチューは嫌だけどな。なぁ孔ちゃん」
「そうですね。貴方にはこれからも大切な役目があります。きっとえり子様もそれを望んでおられますよ。」
「うっ、ううっ。えり子様……」
「あのね、このおじちゃまは悪い人じゃ無いのよ」
と美桜。
雅も続けて話す。
「僕達がお家に来た時、餌だよって果物を切ってくれたのよ。ねッ!」
「あんた達はあの時の小鳥なのかい。何もかも見られていたんだな……」
遠衛様は気の抜けた様になった。
少し落ち着いてきたえり姫が言う。
「遠衛様、これからは母上様の代わりに、私と友達になってください」
「滅相もございません! えり姫様!
これからは、忘れ形見の姫様が幸せであればそれで良いのです」
「う〜ん、なら……私の推しになってください!
そして、団五郎様の推し活も、一緒にして下さい!」
えり姫は笑っている。
「はっ?えり姫様、推し活とはどの様な物ですか?」
「姫様!私も知りたいです。」
「まぁ、理央も。う〜んと、どう言いましょうか」
「ただその人の幸せを願い、応援したい、愛でたいと思う事。その人について、課金したりするその全ての行動。 う〜ん、遠衛様なら、えり子様への思い。
今なら、歌舞伎役者の後援者とでも言いましょうか。
因みに孔は松江様推しです」
「なんて尊い!!」松江は涙目だ。
「なら、儂は誰が何と言おうとえり姫様推しだ!」
「ふふ、私と団五郎様推しにもなってくださいね」
「えり姫様の御心のままに!」
そんな遠衛様に、玉川宮が口を開く。
「お爺さま、私と帝は硬い絆で結ばれているのですよ。私は弟として、帝を支えていきたいのです。手伝って頂けますか?」
「はい玉川宮様」
遠衛様は笑顔になった。
周りの皆も笑顔になっていた。
えり子様が望んでいた未来だった。




