29 お楽しみはこれからだ!
29話 投稿致します。読んで頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
団五郎がハッとして、声のする方を見ると、長髪の鎖眼鏡をかけた男性が立っている。
「孔ちゃん!いつ戻ったのだ。心配していたぞ。皆は無事なのか?」
「理央ちゃんありがとうございます。皆元気ですよ。まるちゃんは精神的に疲れてますが。ま、大丈夫です。
ところで団五郎さん。あなたは遠衛様になんの負い目があるのですか?」
「あなたはなぜ!いや、それもどうでもいい。私はもう終わりなのだから。」
団五郎はへなへなと崩れ落ちた。
「貴方は何もしていませんよ。大丈夫です。きっと何とかなります。皆が頑張っているのですから」
えりは団五郎の肩に触れて話す。
その間、理央はずっと我慢して黙っていた。
「そうですね。貴方の協力次第では何とかなります。遠衛様に何を言われたのか話して頂けますか?
あ、私は孔と申します」
二人の優しい言葉に、団五郎はホッとしたのか、少しずつ話しだす。
「孔さん、私の師匠はだいぶ前から具合が悪く漢方など飲んでおりました。最近は次第に効果が薄れ、困り果てていたのです。
丁度皆様が歌舞伎を見に来られた後の事です。六右衛門という男が声を掛けて来たのです。」
「ほう、でなんと?」
理央は団五郎が師匠を気にかけているのを聞き、少し声が優しい。
「自分は左大臣遠衛様に仕えている。ちょっとした手伝いをすれば、師匠に腕のたつ蘭方医を紹介すると」
「ほうほう、それで?」
理央は完全に親身になっていた。
「男の話を聞いてみると、えり姫と親密になりお印を手に入れろと言ってきたのです。ですが私には姫様を騙すなど到底無理な事でした。これで師匠も私も終わりです」
団五郎は泣き出した。その姿も色っぽい。
「許せないな孔ちゃん!」
「はい。策を講じる時、人の弱みにつけ込むのは私も気に入りませんね。
団五郎さん、もう大丈夫です。お師匠様は私共にお任せ下さい。これからは私達と日の本を守って頂きます。」
「そうですよ。団五郎さんは私の推しなのですから、遠慮は要りません。
お爺様にも相談して良い医師を探しましょう」
「えり姫様!推しとは?推しとは何ですか?恋とは違うの……」
「理央ちゃん、それはあとで。団五郎さん。ではこうしましょう」
「う、うむ」
「皆様……このご恩は忘れません。この浦安団五郎、誠心誠意務めます」
皆は輪になって話し始めた。
◆
帝の弟、玉川宮様屋敷には、祖父である左大臣遠衛様が訪ねてきていた。
「お爺様。今何と?」
「帝は禁忌を犯している。妹宮がおるのじゃ。先帝と伏見稲荷大社の巫女の間に生まれた子。
巫女を汚して生まれた子をかくまうとは、国つ神に仕える帝にあってはならん事です」
「私は存ぜぬが。」
「ふふん、証拠ならございますぞ。さあ!ご覧あれ」
遠衛様は着物と扇子を出した。
「どちらもお印付きの物です。平松の宮邸で見つかりました。先日平松の宮様の親戚という姫が、屋敷に入ったと聞きます。
実はその姫こそ問題の姫宮なのですよ」
玉川宮は着物と扇子を眺めていたが「ふふっ」と小さく笑われた。
「確かに両方に萩の花のお印が入っているな。然しこれは、10代前の姫宮様のお印ぞ」
「な、何ですと!そんな……」
「だから、貴方のやり口は甘いし、好きではないのですよ」
孔ちゃんとまるちゃんが現れた。
「誰だお前達は?こんな所に失礼であろう。」
「そんな事いうのか?あんなに俺たちを可愛がってくれたのによ!」
二人はその身を犬と猫に変幻させる。
「ま、まるちゅわん! 孔ちゃん!な、何でっ!」
「まるちゃんはわっちの使役でありんす」
「孔ちゃんは、私の」
「心花魁!松江様!」
「知らないだろうけど、この子達も活躍してたんだよ」
友子も肩に二羽を乗せ部屋に入る。
「騙したなお前達!玉川宮、こんな身分の者達と話してはなりません。妖を使う奴等です!」
「まるちゃん、孔ちゃん、美桜ちゃん雅ちゃん。皆、神の使いですよ。貴方こそ控えなさい」
そう言ってえり姫が理央を従え入ってきた。
「貴方はえり子様! なぜ……」
遠衛様の顔色が変わった。




