3 今世の江戸
文章を少し見直しました。よろしくお願い致します
吉原に向かう途中で、心はこの世界の事が少しずつ分かってきた。
女衒のおじさんと宿に泊まった時だった。
その宿には、赤い小さな鳥居があった。庭の一角にお稲荷様が祀られている。
(何だか小さくて可愛らしいな……)
夕暮れに心が鳥居を眺めていると
「ああ…今日もお仕事頑張ったなぁ」
小さい狐が2匹、肩を叩きながら鳥居に入っていった。
「えっ! なになに~!!」
心は自分の眼をこすってもう一度、
その小さな鳥居の奥をじっとみた。
すると狐達は、お供えの饅頭を
「疲れた時には甘いものが染みる~」
と言いながら食べている。
「ほえ~狐様が饅頭を食べてる!」
心が狐達を眺めていた。
すると女衒のおじさんがやってきて、
「お!お狐様がいるねぇ」
と言い、手を合わせている。
「お狐様、見たこと無かったかい」
いやいや おじさん何言ってるの!
当たり前でしょ!
ん?でもこの反応、どうやらこの世界ではこれが普通なんだ……
実際心は八百万の神々の事は知識として知っていたが、今までは気配すら一度も感じた事は無かった。
女衒のおじさんはどうやら、お狐様の姿がうっすら見えるだけで、会話や食べている所は見えてないみたいだ。
狐達はお供えでお腹一杯になると、
「いやぁ、満足満足」
と、ヘソ天して寝てしまった。
御狐様なんて可愛いの!うわぁ~モフモフしたい。
心はギリギリで、湧き起こる衝動をぐっと我慢した。
驚いた 色々思い出したら、急に視える様になったなぁ……
恐らく今世の私には 元々神々を視たり、話す能力があったのだろう。
だが今迄私は、家族の死や凶作でまともに食べられず心身共に疲弊しきっていた。
貧しくて、心の余裕のない村の人達も同じく視えなかったのだろう……
心はそう理解した。
それからは、色々な神々や付喪神などを色んな所で目にする様になった。
ある時泊まった宿には古い大きな絵皿が飾ってあり、それは見事なおしどりが一組描かれていた。
代々宿に伝わる大皿だと、主人は話していた。綺麗なおしどり。心はそう思っていた。
そして、心が夜中に台所に水をもらいに行くと絵皿から鳥がいない。が、
絵皿のおしどりが水浴びしていた。
「気持ちいいねぇ。嬢ちゃんあんたも浴びるかい?」
「いえ、けっこうです!」
驚いて腰を抜かしそうになった。
神様や付喪神は至る所にいた。
2匹で漫才をしながら、神社を守る狛犬。(ノリツッコミがバッチリだった)
昼食を食べた茶屋では、縁が欠けているから直して欲しいと、ねだる茶碗の付喪神をみた。
「縁のこと店のご主人に頼んであげるよ」
心は店の主人に伝えてあげた。
私は神様や付喪神の声や姿が視えるんだなぁ 不思議だけど。
心は自分の能力を少しずつ理解した。
道中には女衒のおじさんの事をかなり嫌っている、弁天池の弁天様もいた。
「商売繁盛 商売繁盛」
必死で祈るおじさんに弁天様は、
「この男また来たよ。あんたがくると『気』が悪くなるんだよ!
もう来ないで!ほら、嬢ちゃんからも話してよ~」
人買いというヤクザな商売をしているからか、おじさんは弁天様から、かなり嫌われていた。
「弁天様ありがとうございます」
益々弁天様の顔が歪む。
「ごめんなさい 後でおじさんには私から話しておきますから」
心は後でおじさんに
「どちらかというと、おじさんは弁天様より稲荷様が合うようですよ。その方がご利益があるみたい。」
「そうかい?じゃあそうしよう
あんたは神様の声が聞こえるんだね」
「少しだけですけど」
ほんとは声も姿も全部ばっちりわかりますが。心は思っていた。
しかし、女衒のおじさんにはあまり詳しく言わない方がいいと直感で感じ、それ以上の事は話さなかった。
おじさんが弁天様参りをやめてから、弁天様の声がした。
「あんたには、感謝するよ。
これで嫌な『気』が集まらなくてすむ礼を言う、ありがとう。
そうだ、あんた吉原へ行くんだろ?
ちょっとした加護をあげよう。
きっと役に立つと思うよ」
そう言われたあと小さな光が
心の中に入っていった。
「弁天様ありがとうございます」
何かは分からなかったが、心は弁天様に感謝した。
……この世界には八百万の神様や
色々なものが存在している。
そして、その神様達はとても自由だ。
好き嫌いもはっきりしていて、思ったよりも人間臭くて可愛らしい。
神様達がいる所は、自然も町も村も、キラキラとした気に満ちている。
神様達が見えたり話が出来る人もいるが、その能力の差も大きい。
加護なんかもあったりするし……
心は少しずつこの世界の事が分かって
きた。
八百万の神々と近く共に生きる世界、
それが心のいる異世界の江戸だった。




