25 二匹と二羽大活躍! 頑張れ治助様!
久しぶりに天女楼へ戻ると、直ぐに禿の豆助が迎えに出てきた。
「あれ?紅はどうしました?豆助」。
「紅、心花魁が戻ってきたよ」
豆助が紅を探して連れてくると、紅は泣いている。
「もう紅は嫌じゃ。心花魁がいないと他の姐さんの所に行かされる。」
見ると、紅の手には叩かれた跡がついていた。
「豆助、紅、難儀な思いをさせましたね。あっちが悪うござんした。今度は一緒に出掛けましょう」
(この先、二人の事も考えないとな)
私はそう思いつつ、二人に聞いてみる。
「豆助 紅、治助様からは連絡は来ていないかい?」
「あい、治助様からは毎日のように文が届いてますよ」 と豆助
「それも毎回、美しい季節の花を添えて。あっちらのお菓子も」 と紅。
「じゃあ、治助様に手紙を書きます。それを届けたら、松竹亭へ行く準備をしておくんなまし」
「あい!」二人は元気に返事をした。
飛び上がって喜ぶ治助様が目に浮かぶ。最近二人は人の良い治助様をこっそり応援しているのだ。
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「孔ちゃん、着物の気配を追えばいいんだよな」
「そうですよ、まるちゃん。着物には孔とまるちゃん、桜雅コンビの毛をくるんだ物を縫い付けておきました」
「おう!気配がよく分かるぜ。」
「私達も、ちゃんとわかるの〜」桜雅コンビも飛びながら答える。
平松の宮邸に入った物取りに、別の姫宮の着物を持たせて逃がした。
しかし帝の弟宮から何の反応もなく数日経っている。
そこから孔ちゃんと他の使役達は、着物の気配を、猫.犬.鳥に戻り追っていた。
「しかし着物は何処に行ったのだ?わかるかい孔ちゃん」
「帝の弟君でなければ次の察しはついてますが……」
「あっ!この屋敷から着物の気配がするです〜」
桜雅コンビが最初に屋敷に着いた。
「わかりました。ではちょっと作戦会議」使役達は一旦物陰に入った。
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ある屋敷の前で狆がパタリと倒れている。
「おい!ワンちゃん大丈夫かい?」
屋敷から門番が出てきて犬を抱きかかえた。綺麗な首輪に鈴がついている。
『吉原心花魁の犬 まる』
「うわっ!あんた、心花魁のお犬さんかい!こりぁ大変だ!」
門番は、慌ててまるちゃんを抱きかかえて屋敷の中に入っていく。
その瞬間孔ちゃんもゆったりと中に入り、庭の奥へ消えていった。
「おいおい、心花魁の犬を拾ったって本当か?う助」
「そうでございます。旦那様。水を飲ませて休ませたら元気になってきました。撫でると喜んで可愛いですよ!」
「そうか。この犬を連れて吉原にいったら、心花魁は喜んで直ぐ会ってくれるねぇ。こんな機会は一生ないよ。先ずは今日いらっしゃる左大臣にご報告して、一緒に返しに行くのはどうだろうか」
「そうですね旦那様。左大臣なら心花魁へのツテもお有りでしよう」
「お〜楽しみだよ!う助!」
にゃ〜お、にゃ〜。 ぴちゅ!
「ん?猫の鳴き声がするな。鳥もか!
う助、あまりうるさいなら追っ払っておくれ。左大臣をお出迎えする仕度をするんだ」
夕暮れ、男が輿で屋敷を訪れた。
「左大臣様。ようこそおいで頂きました」
「ああ直ぐにいとまする。で、着物は?」
「はい。こちらに。わざわざ盗んでまでどうするのですか? 綺麗な着物ですが…」
「あまり深入りせんことだ。所でそなた、何故犬など抱いているのだ」
「ふふ。左大臣様、この犬何と吉原の心花魁の犬なんですよ。うちの前で
倒れてるのを偶然見つけまして。」
「なんと!あの心花魁のかい?
それは大変だ。直ぐに私が届けよう」
「左大臣私もお連れくださいませ!」
「……分かった。着物のお礼はそれでいいか?」
「う〜んわかりました。結構です! 心花魁に会えるなら。」
「では、沙汰をまて」
左大臣は急ぎ自宅へ戻っていった。
「上々です、まるちゃん」
まるちゃん一人の部屋で、庭から声がした。孔ちゃんが暗闇で身を光らせている。
「桜雅コンビが左大臣を追ってます。私もこれから向かいます。では天女楼で」
「おう!待ってるぞ!」
まるちゃんがそう言った所で、
「さあさあ 出かけるよワンちゃん」
う助がまるちゃんを抱いていった。
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「旦那様!しゃんと下さいよ」
番頭がこればかりいっている。
「はぁぁぁ〜」
治助は大きなため息ばかりついていた。
心花魁から何も沙汰がない。今迄は待てば座敷に来てくれた。(かなりの日数だけど)
しかし最近天女楼にいない事が多い。本当は留守などと教えては貰えない。
仲良くなった禿の豆助.紅がそっと教えてくれた。
「花魁は送った花を見ているだろうか?もう枯れてしまったか?また新しいのを選ぼう……」
余りにも純粋で人のいい治助様。
これだから豆.紅も味方するのだろう。
(心花魁はどこに行ってるのだろう。
もう天女楼に戻ってる?
出かけて疲れたりはしてない?
そうだ、疲労回復の薬を届けてみようか?)
治助がまた心花魁の事を考えていると、
「ご主人様!お待ちの天女楼から連絡がきましたよ!」
その声に治助は飛び上がった。
「い 今行くよ!」
気もそぞろで手紙を見ると、何と心花魁直筆の手紙!
「治助様、いつも素晴らしいお花をありがとうございました。あっちは嬉しくてたまりません。
今夜、松竹亭で逢いとうございます」
たった四行 ありきたりの手紙。
しかし心花魁が手紙を直筆で書くという事自体が珍しい。
「ちょっと、直ぐ出かける準備だ。あ、その前に松竹亭の離れの仕度をお願いするのだよ。
季節の花々で飾り、今一番旬のもので料理を、そして花と料理にぴったりマリアージュしたお酒を出すように頼んでおくれ!マリアージュだよ!」
治助は、半ば自分にいい聞かせるように番頭に素早く告げた。
良く見るとその手紙には別の字で何か書いてあった。
「良かったね 治助様 豆助、紅」
ありがとう。豆ちゃん、紅ちゃん。
二人にも美味しいお菓子を持っていくよ。
豆.紅も少しずつ男心を掴む術を学んでいるのだった。
頑張れ!治助様。
隣で見ていた番頭は思っていた。




