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早死にして転生したアラフィフですが異世界の江戸では人生愉快痛快です!  作者: 藍紫


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21 歌舞伎でときめく

21話まで一気に投稿しました。22話からは週2.3回 20時に1話ずつ投稿します。今後投稿曜日も決めていきます。よろしくお願い致します。


お忍びで遊びに来る帝とも、えり兄ちゃんとして、随分仲良くなった頃、皆で歌舞伎を観に行く日が決まった。



4人と使役達はまたえり姫の庭でお茶を飲んでいる。


「ねぇ、いよいよ明日行く、

『ドッキドキ!見るもの聞くもの初めてばかり!えり姫の歌舞伎ツアー』の件なんだけど……」


「心!あんたまた今度は随分長い名前つけたね〜……で何?」


「いやぁ友子!なんか楽しみでさぁつい長いツアー名つけちゃったよね!そんで皆の着物コーデはどうするか?とか、仕出し弁当は何かなって思って」


「……心を見てると『好きこそものの上手なれ』って言葉をいつも思い出すよ」


ちょっとニヤニヤの友子の笑顔。いつだって心は夢中になるとこうで、みていると懐かしくて嬉しかった。


「まぁ私だって楽しみだよ!だってさ、えりは今世では初めての外出でしょ?凄くない?初めてだよ!

どんだけ楽しみなんだろうね。ねっえり!」


「そうなの〜 私今世で初めて外にいくのよ!その上、江戸の歌舞伎座でしょ?いったいどんな感じなのって、もうワクワクよ〜

ねぇ、理央だって江戸の町は殆ど初めてでしょう?」


「そうですね!昔、京と江戸を行き来していた時以来でしょうか。

楽しみです。特に姫様とご一緒出来るのが!こんな日がこようとは、理央は盆と正月が一緒に来たみたいです」


……理央は、まるで二人だけのデートにでも行く様な顔だ。もうワクワクが止まらないみたいだなぁ。


「私達はお利口さんにお母ちゃんの懐て過ごすの〜 ちょっとだけ、お顔出してもいい?」


相変わらず可愛いなあんたら……

でも桜雅コンビはじっとできるかな?

まぁまぁそこは友子に任せて……


「あ!仕出し弁当 今回は夏なので

鱧が入っていますよ〜。


あとは朝採りの、とうもろこしのスープと、天ぷら。あと、鰻重かな。平川源外様の『土用は丑の日』を

松竹亭も宣伝中でね」


「やったぁ!鱧と鰻だぁ!夏のとうもろこしも良いね!すっごい美味しそうだよ〜

 鰻、そか、源外様から『土用の丑の日は鰻!』って始まったんだもんね……

ねぇ松江?平川源外ってやっぱりエレキテルとか作ったの?」


「もうそれはとっくに。今は抗生剤の様な薬作りに必死みたい。ねぇ友子」


「そうそう。うちと共同制作中だよ!早くできると心の所ももっと楽になるよね〜」


「そうだよ〜 っていうか心って、平松の宮邸(私の家)に最近頻繁に来てるけど、よく自由に外出できるね。天女楼の女将さんは大丈夫なの?私は嬉しいけど。ちょっと心配なの」


「ありがとうえり。でも大丈夫。

この間宮爺が帝自筆の『心は外出自由なり』という宸翰しんかんを持って来られたの。


えり兄ちゃん、『女将へ』なんて一筆

入れてくれたから、もうさ、女将感激しちゃって……だからノープロブレムなんだよ」


「そうか……良かったね心。皆心配してたからさ。

さぁ!心、みんなのコーデ考えてよ!

やりたいんでしょ?」


友子がいつまでも続くおしゃべりを、一旦制した。


「わ〜い!じゃあさ! えりは……」


心が嬉々として皆に着物を合わせ始めた。




翌日…… 夕方からの歌舞伎の演目

に合わせ、4人と理央は仕度を済ませ

た。


因みに今日は暑い夏の日で、どうして

も暑さに弱いまるちゃん、孔ちゃんはお留守番になり

、桜雅コンビは相思鳥のまま、友子の懐一緒に行く事になった。


到着した習志野屋の歌舞伎場は、まるで極彩色!

色とりどりの提灯に、彩られ沢山の

旗が立ち、多くの人で賑わっている。


あかりに照らされた歌舞伎所は正面には1枚目 2枚目と順番に役者の看板がかかっている。


柿色・黒・緑の3色の、舞台と客席を

引き幕も、直接見ると楽しい。


「わあ!理央!なんて綺麗なの!」


「えり姫様!ほんと凄いですね!」


まさに、外の世界が初めての二人は

『ドッキドキ!見るもの聞くもの初め

てばかり!えり姫の歌舞伎ツア―』


と伸のつけたツアー名の如く、楽しんでいる。


「今 人気なのは2枚目役者の団五郎だよ!溢れる様な色気のいい男っぷりで『流し目団五郎』で目の合った世の女性達が、腰砕けになるらしいよ〜

演目も楽しみだね!えり!」


「今日は『助八由縁江戸のすけはちゆかりのえどのうめ』でしょう!


私と理央はちゃんと歌舞伎の演目も

勉強したのよ。見るのは初めてだけど


楽しみで昨日は眠れなかったし、ねぇ理央」


「はい、姫様。あ!そこ足元に気をつけて下さいね……」



「えりと理央、ほんと目がキラキラし

てるよ!本当に今世の江戸は何もかも初めてなんだろね 良かったよ……」


「ほんとだよ友子!そんで今日の皆も凄く素敵だしね!どう?私似合う?」


「うふふん、バッチリよ松江!ほら、

歌舞伎見に来ている皆もこっちを見てるし〜」


心がそう言うと周りの皆に手を軽く振った。


「うわぁ!あれ天女楼の心花魁だろ!

輝くばかりの美しさだね〜初めてみたよ!」


今日の心は、阿波藍染の絽小紋(藍染めの夏の透けた生地の着物)に白の博多紗献上の帯。


夏らしく透ける着物と帯が涼やかだ。

島田に結った髪にまるちゃん簪をさしている。


「その隣は松竹亭の松江様だよ

今日も粋な着物だねぇ惚れ惚れする」


松江は白地の越後上布の小紋。

青い琉球紅型を染め上げた花の帯。

髪には孔ちゃんの服の刺繍柄が模された螺鈿簪らでんかんざしだ。


「その隣は薬問屋のお友様だね!

異国の美人って感じでまたいいねぇ」


友子は自分で仕入れた、目の覚めるようなグリーンとオレンジの柄のアフリカンバティックの小紋を着ていた。現地の男性からプレゼントされたそうだ。

流石友子、異国でもモッテモテね。


利休茶色(緑がかった薄茶色)の麻の兵児帯も柄にしっくり合っている。


心は皆が素敵と言われ、大満足だった。


「あの雪のような白い肌の美しい女人は、先日平松の宮様の所にいらしたという姫様かね?」


「隣にいるお付きの方も、何と麗しい方だろうか」


えり姫と理央も皆の注目の的だ。


「え〜 今日のえりは淡い水浅葱色(緑みがかった淡い青色)の小千谷縮で、丸紋のシボが可愛らしい小紋

。帯は絽綴れの流水文(透けている水の流れの模様)に枝の花が描かれ涼やかな一品です」


「うんうん。えりの色の白さを引き立てて良きね。 

理央もいい感じ」


「ありがと松江 では理央は…」


「何だかおしゃれチェックの人みたいだね。

いいけどさ」


心も乗ってきた!と思いつつ続ける。


「はい 理央はえりより少し濃いめの同系色の錆浅葱色の小千谷縮です。

上に納戸色(藍染めの渋みのある青緑色)の羽織を着せて、観劇クラスのフォーマル感を出しておりますよ狐の根付次巾着が粋ですね!」


「分かったよ。またコーデに精をだしたんだね。

心は寝不足ではないの?」


友子が笑いをこらえて言う。


「うん。ありがとう。今回は1つしか作ってないから

平気だよ!」


「え?コーデだけじゃないの?」


「ふふふ、先ず松江のとこのお弁当食べようよ!何かは後のお楽しみね」


皆は仕出し弁当を食べ始めた。


『助八由縁江戸のすけはちゆかりのえどのうめ』は、『助八』と言われる演目だ。


(ざっくりいうと源氏の宝刀・時切丸『とききりまる』を恋人の花魁秋巻と協力し助八が刀を奪い返すというストーリーです)



「団五郎!」「習志野屋!」と声が飛ぶ


豪華絢爛の衣装と団五郎の色気ある演技に、目が合った女性は何人かが気絶した…が、世話人に慣れた手つきで運ばれていった。


団五郎恐るべし!他の役者とは桁違いの人気である。



やたら光っている女人が『団五郎 こっち向いて』とかいた大きな団扇を掲げて叫びまくっている。


「何か前で叫んでる人、キラキラ光ってない?あ、

あの人神様でしょ!気の流れがあそこだけ違う!」


「あっ!弁天様だ!山で一回あった事あるわ。

でも何で向こうの推し活グッズ持ってんのかなぁ?」


松江と友子が言う方を見てみると、


「うわっ!弁天様じゃん!団五郎、弁天様まで虜にしちゃって……

っていうかそのうちわ!どこで手にいれたのよ〜」


思わず呟くと、弁天様は気がついたのかこっちを見て


「久しぶりだな心!また会ったの。

どうじゃこのファンサうちわは!

平松の宮に異世界のお土産でもらったのじゃ!

イケてるであろう?」


弁天様は念で私に話しかけ、無邪気に手まで振っている。


「弁天様〜 念ってこういう時に使うのですかね…

宮爺もファンサうちわなんか、神様に差し上げてぁ…

私が頭を抱えてぶつぶついっていると


「おお弁天様か!以前神の会議にお付きの者として参加して以来お見受けしました。相変わらずお美しい」


「まぁ理央、そうですか」


まぁそんなに多くの人にバレないしいいか。 

そっとしておこう『触らぬ神に祟りなし』って言うし。本当に神様だけどさ。という訳で、必死に団五郎にうちわをアピールする弁天様をそっとしておいた。



その後は皆「助八」に夢中になって観ていた。


休憩時間の際、えり姫が

「私お花畑(トイレの事)に行ってまいります」と一人で席を立った。


場所は数メートルしか離れておらず、皆もそのまま一人で行かせたのだ。


しかし、暫く経ってもえりは帰ってこ

ない。理央が顔面蒼白になりだした。



「姫様!姫様が戻りません!ど どうすればっ!」


「いやぁ大丈夫だよ。様子見てくる」


そう言って、友子が見てくるも、

既に厠はもぬけの殻だった。  


「えり?どこ〜?」

皆で手分けして、観覧席や売店別の厠も探してみるが

えりの姿はない。


「えりは何処にいったかね」


「何で数メートル先の厠から戻らないの?

友子が行った時はもういなかったんでしょう」


「姫様の気配は消えてはいませんが、人が多過ぎて、この姿では気配を追えません!」


理央が更に焦り出す。


「しようがないなぁ 美桜 雅!えりを探して!」


智美が2匹を懐から出すと、2匹はその場を二周し、その先へ飛んでいった。



えりは迷っていた。厠を出た時に、


「あら、あなたは伸花魁達といらして

いた姫さんじゃないの?」


と声を掛けられた。


「はい えりと申します」


えりは丁寧にお辞儀して答える。


「あらまぁ姫さん!可愛いらしいね!ちょっとこっちに寄ってきな!私ら丁度菓子を食べ始めたんだ」


「まぁ 恐れいります……」


えりは親切な人に、沢山のお菓子をご馳走になった。


すると周りからも、どんどん声がかかる。


「姫さん、こっちも美味しい茶が入っているから寄って飲んで行きな!」


「こっちの団子もどうだい?名物の団五郎の団子だよ!」


「皆様、ご親切にありがとうございます」


えり姫は方々の席で、頂き物を食し、一人一人丁寧にお礼を言って回った。



さてその後戻ろうとしたら……迷ってしまったのだ。


「あら……どうしましょうね 皆はどこかしら?」


えりがやっと困りだした時、


「お嬢様、どうされました?」


声をかけた者がいた……



暫くすると、美桜 雅2匹が飛びながらえり姫を案内してきた。……が!


姫は男性に手を引かれて戻ってきたのだ。


「皆〜 遅くなってごめんねぇ」


「姫様!あのっ……そのお方は?」


理央はかなり焦っている。


「私が迷ってたら案内してくださってえ〜っと……」


「皆様挨拶が遅れ、大変失礼致しました。私は栄屋の2枚目役者、浦安団子郎と申します」


間近で見る団五郎は流石、『目で女を差し殺す 流し目団五郎』と言われるだけあって、溢れ落ちる色気だ。


歌舞伎の時と違い、低く喋る声も何とも心地よい。


(こっ、これは!誰でも好きになっちゃうわ。全くやるねぇ、団五郎!)


私は密かに考えていた。すると団五郎


「心花魁 ご無沙汰してます」と言ってきた。


「わぁ団五郎さん!一度あっちの所にも旦那さんときてくれましたね〜」


(そうだった。一度顔を合わせていたんだっけ。その日は初めて袖を通した着物に夢中で、あまり見てなかったのよね。ごめん、団五郎……)



「松江様もお久しぶりです」


「この間の会席ぶりで御座いますね」


「皆様とご一緒だと姫様に伺いまして

ご挨拶ついでにお連れしたのです。丁度楽屋に皆様をお呼びしようと、思ってましたので……」


「そうでしたの」

 

松江もちょっと嬉しそうだ。


「それで、その異国柄の素晴らしいお着物の方は薬問屋のお友様ですか?」


「あら、私の事までよくご存知で」


「この江戸の事なら。私共の大切なお客様になるかもしれませんので」


団五郎はそう言うとえり姫の手を取り、じっと姫を見つめながら挨拶した。


「えり姫様、今後ともこの浦安団五郎を末永くよろしくお願い致します」


「ふぁ…ふぁい!」


えり姫は頭から手の先まで真っ赤にしてやっと答えている。


えり姫は慌てて扇子をだして火照った顔をあおいだ。


「あれ、姫様これ…何ですか?」

団五郎が扇子を眺めている。


「え?」

えりが布地の扇子を見ると、


『ドッキドキ!見るもの聞くもの初めてばかり!

えり姫の歌舞伎ツアー』


と、大きく刺繍がしてあった。ダサっ。


「わぁ!心〜!」


えりが驚き更に真っ赤になっていると


「ははは!姫様は、何とも可愛らしい方でございますね」


団五郎は白い歯をみせて笑った。



理央がもう少しで、団五郎にくってか

かりそうになるのを、


「役者は皆やる挨拶だから……」


と友子が何とかなだめている。



その後、団五郎は桟敷で皆と軽いお喋

りをして、帰っていった。


(流石人気の歌舞伎役者、女心を知り抜いてるね……これで嫌いになる女性はなかなかいないわ)


前世アラフォーだし、今は花魁だから、冷静に見れて良かったよ。


まぁ吉原でも歌舞伎役者に尽くしまくっている姐さん達も多いけど。あの男ぶりじゃあそうなるね。


「なかなか素敵な役者さんよね〜仕出し弁当や料亭でお会いするけど、今時、浮名を流す事もない、真面目

な役者さんだよ」


松江も気分が良さそうである。


「思い出した。そういえば自分のお師匠さんの為に、漢方薬をうちの店に買いにきてたわ。良くなるまでずっとね。偉いよ団五郎!」


「あのね、私達が飛んでえり様の所に行った時も、『おや?何と可愛い小鳥なんだろう。

姫様を探しに来たのかい?気をつけて飛ばないと廊下は狭いからぶつかってしまうよ』ってとっても優しかったのよ」


「いい奴じゃん 団五郎!」


私達は皆で団五郎を褒めまくっていた。


理央は苦虫を潰した様な顔で、爪を噛んでいる。


ところが、えりがずっと話に加わらない。小声でブツブツ呟いている。



「ん?さっきからずっと黙ってるけど

えり、どうした?大丈夫?疲れちゃった?」


私はえりに声をかけた。


「好き……」 


「ん?なに?」


「好きになっちゃったぁぁぁ!」


えりが叫んだ。


「うわぁぁぁ!」


理央も続けて叫んだ。



その日から理央は高熱を出して寝込んでしまった。


あ〜あ、これはこれは。理央は寝込んでしまうし、

えり兄ちゃんがこの事を知ったらどうなっちゃうんだろう。


寝込む位じゃ済まないんじゃあ。

ああ、頭が痛くなってきたよ……


大嵐の予感。私は色々考えてぐったりしていた。


「心、気持ちは分かるけど、しようがないよ。えりはきっと初めての恋だよ何も知らない子の淡い恋心。

今迄何も体験してこなかったんだもの。素直に応援してあげたくない?」


「友子、そうだね私達はそうしなきゃね!」


「何なら私の店でお食事会してもいいじゃない。

えり兄ちゃんにも少しは成長してもらわなきゃ、

これから困るし」


「よしじゃあ……」私は少し考えて、

『えり姫の初恋!皆で密かに応援していこう会』発足です!」


「お〜!」

「じゃ、皆で決起集会をしようよ!」


私達は早速宴会の準備を始めた。






*************************


えっと〜 明日の仕出し弁当の準備を伝えるねぇ。


松江は、明日の歌舞伎を観に行く為の、仕出し弁当のイメージを伝えた。


先ずね、夏だから鱧!梅を乗せてさっぱりさせてね。


今の季節美味しい朝どれのとうもろこしを、冷たいスープと天ぷらにして頂戴。ご飯は小さめの鰻重。あとシソとゴマ、じゃこを混ぜたおにぎりも準備して食べやすいように。


他は任せるわ。出来たら一つ持ってきてね。確認するから。


そう言うと、松江は部屋の真ん中に橙色の長椅子をおいて本を読み出した。


久しぶりの三国志である。


「うわぁ! そうよ 何度も挨拶にいくの〜 それで心が動くのよ〜!」


「う〜ん そこで悠々と琴をひけるかぁ〜!凄…」


ついつい独り言が出てしまう。


「松江様、相変わらずでございますね そんな松江様も孔は良きですが」


側についていた孔が松江にいう。


「明日は暑い夏ですね……孔は

暑さは苦手にございます。明日はまるちゃんと留守番役でいたいのですが」


「あ〜孔はそれをいうために、今日は少し暑くてもちゃんとついて来たのか」


「ふふふ。松江様、流石にございます。孔の思惑を読まれるとは」


「ふっ……王たるものこのくらいは」


「あっぱれ!あっぱれにございます

松江様!」


時々、急に始まる王と軍師ごっこに、二人はノリノリだった。


「……大丈夫だろうか松江様。独り言をずっと話してるけど」


女中のお輝には使役が見えていない。お輝は松江がかなり心配になった。


孔は眼鏡をキラーンとさせて、


「では気合をいれ、まるちゃんとお留守番を致しましょう」


と呟きニヤリとした。



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