第65話 命の灯
ゆっくりと開いて門を見たエポックが後ずさる。
「何者だ」
囁くように聞くジェネラレッシモ。
「知るわけ無いです!」
上ずった声で思わず大きな声をだしてしまうエポック。その手には護身用の探検が握られていた。
「・・・こんばんは。ヴィジラン公爵閣下、エポック様」
門の奥から微かな女の声が聞こえる。ジェネラレッシモは眉をひそめた。
「知り合いか?」
「いえ、違うと思います」
エポックはゆっくりと門に近づいて大きく開くとまずギラリと光るものを見つけた。咄嗟に自分の剣を相手に突き刺す。実際それは正解だったのだろう。彼女が持っていたのは鉄の取っ手とナイフだった。
刺された腹を抑えながら女は膝をついた。しっかりと顔を見てみると
「・・・っ?!ソラティオ?!」
「な?!どけ!捕らえなければ・・・!」
自身がかつて筋肉ゴリラと称した帝国最強の騎士団長に突き飛ばされかけたがただただ立ちすくむもやしなエポック。
その視線はソラティオに固定されていた。
ソラティオは笑っていた。まるで太陽のような笑顔。
「・・・何故、何故笑っているのですか?」
初めて見た妻の上辺ではない笑顔に底しれない恐怖を感じてしまう。
「・・・だって・・・。貴方が・・・初めて・・・私のことを・・・見てくれた。・・・目を・・・合わせてくれた・・・!とっても・・・嬉しい!」
途切れ途切れに苦しそうに寂しそうに。それを上回る嬉しさで。そう言った。
「貴方が・・・私に興味がないのは・・・知ってた、から・・・。頑張って・・・気を引きたかった・・・から。明るい、フリして・・・名前の通りに・・・してみたのに。それでも・・・気にしてくれたこと・・・なんてなかったのに。やっと、やっと見てくれた!」
「私の気が引きたかったなら何故こんなことを?何故、父上と結託して・・・」
「お義父様が・・・貴方が・・・押し進めたいことだって言われて・・・。弟達を・・・裏切った。命を・・・かけたこと・・・だったんだよ?・・・逆効果だったなんて・・・」
エポックとジェネラレッシモは絶句した。
・・・・・・すべて、自分のためだった。そんなの・・・知らなかった。
ソラティオは最後に力を振り絞ってエポックの袖口を引っ張る。
「ずぅっとずっと、愛してる」
その言葉を最後にソラティオ・リュクシュール公爵夫人の火は消えた。




