第61話 始まり
「私から入りましょう」
クセのついた緑の髪に金の瞳を光らせてエポックは振り返る。
「なっ!却下だ。扉を開けたときに罠が作動したらどうする?!」
「無理ですね。父上はそんなに器用ではありません。うちの召使い達に命じたとしても無理かと」
「・・・死んでも知らんなからな」
考えるのが面倒になったのか早々に諦めてため息を付くジェネラレッシモ。
「ありがとうございます」
エポックは手をかけた。金の取っ手に。そのまますんなりと扉が開く。
中へ踏み込むとギシッと床が軋む。薄暗い通路はランプで照らされていた。炎のゆらめきが影を作る。それがまた・・・。
ジェネラレッシモが入ってきて開口一番に
「リュクシュール邸は豪華絢爛と聞いていたが。廃れているではないか」
と言った。
彼に続く隠密部隊・暗殺部隊の隊員もそれに頷く。
「それは何年前の話ですか?父上の金使いが荒いので豪華絢爛に保つための資金なぞ底をついていますよ」
つかれたような顔でそう返す。しかし、ジェネラレッシモは聞いていなかった。視線の先には
「それは貴方のせいでしょう、若旦那様」
煤で汚れたメイド服を着たメイドがいた。怒りと恨みに満ちた瞳でエポックを睨みつける。
「・・・今の当主はこの私です。父上の時代はもうすでに終わっているのですよ」
訂正するエポックの言葉を無視して言葉を続けた。
「旦那様はとても悲しまれていました。御子息が「これ」なのですから当然です」
乾いた、けれどねっとりとした笑いが通路に響く。
「・・・捕らえろ」
エポックをある程度尊重して黙っていたが自分と同格である「公爵」をバカにされたことでキレたジェネラレッシモの合図で隠密の一人が飛び出す。他のものはエポック、ジェネラレッシモを中心として周りを囲む。
「若旦那様!旦那様が馬鹿にされていた公爵に縋り付く気持ちはどうですか?!さぞ惨めでし・・・!」
「副団長を馬鹿にしないでいただきたい。少々脳筋であろうと力だけは我が国一番。騎士を志すものの憧れだ」
見事な拳で顎先を殴り失神させる班長。
・・・・・・脳震盪による失神だろう。失神させるのに失敗して相手を殺してしまったヴィジラン公爵と違ってできる男なのだろう。
鮮やかな格闘術を見せられて思わず現実逃避ともとらえることができることを考えてしまうエポックであった。




