第39話 ヴィジラン公爵、リュクシュール公爵
かぐやたちがME・GA・NE!で騒いでいる頃・・・。
「決行は明後日でいいですか?」
「ああ、それならば軍の準備にかかる時間も余裕で確保ができる。暗闇に紛れての行動が良いのだな?」
リュクシュール、ヴィジラン両公爵は予定を話し合っていた。ここは皇家が所有するルナポリス内の屋敷。もしも盗聴されていたとしてもそれはさらに罪を重ねるだけである。何より、それは不可能であるからこそ・・・。
「そうですね。あなたが皇家より管轄を任せられている暗殺部隊を使用するべきでしょう」
「!・・・なぜそれを知っている。あれの訓練は極秘であるし隊員も一般軍隊のなかに紛れている!」
「やはりそのようなものがあるのですね。あるという情報は入っていましたが、虚偽の内容かもしれないので一応確認させていただきました」
「お前・・・!陛下はなぜこのような怪しい人物を信じるのだ」
リュクシュール公爵の情報は精度が高いものが多い。その理由はリュクシュール公爵自身もわからない。いつの間にか頭に入っている。虚偽かもしれない。でも今まですべてが事実だったのだ。
「私はあなたがそんなにも簡単に情報をペラペラと喋るほうがよっぽど危険だと思いますが・・・。それに、これはセクレテール、いえトリスタン公爵でも知っているでしょう。」
「俺の脳が筋肉だけで作られているとでも言いたいのか?!」
「(あなたは脳筋でしょ)あなたはどう自分を見ているのですか?」
「そんなことはどうでもいい!暗殺部隊を使うことには賛成なのだがな?その・・・だな。俺はアイツらが嫌いなのだ!いちいち丁寧な仕事をだとかほざいて計算をチマチマと・・・」
ヴィジラン公爵は数字に弱いことは国中承知のことだから誰もそれに対して言うことはないだろう。だが・・・
「仕事は丁寧にしてください」
「それはそうだ!だが・・・力でねじ伏せればいいものをこの角度では成功率が・・・などと言われるとイライラするのだ!」
どこをどう見ても生粋の脳筋である。
ジェネラレッシモ・ヴィジランの今までの戦闘経験は138回、全勝である。それも素手での戦闘であったと言われている。叩き潰ればいい!という考えの人物なのだ。
娘のマニフィークの教育は妻が行ったためそのような思想はまだ少ないハズである。確約はしない。
「・・・ああ、先に伝えておきますが、私はしばらく城の文官棟で生活するので。何かあればそちらまでお越しください。少々臭うかもしれませんが」
「臭う?何がだ?」
「最近、息子が私の文官棟の執務室でエタノールの実験をしていまして・・・」
「息子?お前の息子は牢に入っていなかったか?」
嘲笑うかのような表情の中にわずかな疑問がまじる。しかしリュクシュール公爵はふっと冷たい笑みを浮かべて
「もう一人の下の息子ですよ。この子は私が育てました。上の息子は妻が育てましたが。実験が好きなようでそこは妻に似ていますね」
という。その明るい金の瞳には暗い憎しみの色が見え隠れして、それがさらなる怒りを表しているかのように・・・。
「お前にとってフォーボンは息子ではないのか?」
「まさか!そんなことはないですよ」
「ではなぜ、そこまで・・・」
「・・・すべてが終わればわかりますよ。もしも、終われば・・・」
自分が憎むモノ。それがすべてに悪影響を及ぼす。簡単に、人を変えてしまう。だから終わらせなければならない。
「計算高いお前にとってそれが最善なのであればそうなのかもしれないな」
「・・・最善かというのは人によって変わるでしょう。暗殺部隊の手配、よろしくお願いしますね」
「・・・わかっている。お前も覚悟を決めろ。これは陛下がお前を試すためでもあるのだから」
それはわかりきったこと。それでもヴィジラン公爵は真剣な表情でしっかりと憎しみに染まりきった相手の瞳をとらえる。
「大丈夫ですよ。私を罰して困るのは皇女殿下ですから」
「そうか」
これは破滅までの秒読み(カウントダウン)。それはあと・・・




