2話 目覚め
暗い意識の底で、わたしは重力から切り離されていた。
身体はただ、ぬくもりに抱かれている。
それは、かつて知っていたはずの感覚ーー
胎児のころのような、原始的な安心感。
ここがどこであろうと構わない。
そう思えるほどに、穏やかな沈黙が続いていた。
けれど、意識がゆっくりと浮上してくる。
その輪郭がはっきりするにつれて、ぬくもりは、次第に異物へと変わっていった。
重たく、まとわりついて、逃れられない。
耐えきれず、目を開く。
視界の向こうにあったのは、歪んだ透明ーー
わたしを閉じ込める、ガラス管。
身体には無数のパイプが繋がれ、わたしはその中で、液体に沈められていた。
ぬくもりが、いや液体が、眼球に張りつき、視界を濁らせる。
そんな状況に動揺して今まで出来ていたはずの息ができない。
もがくほど一層息は遠ざかっていく、肺が焼けるように痙攣し、意識が弾ける。
口からこぼれた気泡は、言葉になり損ねた叫びの残骸のように、ゆっくりと浮かび上がっていく。
最後の空気が、喉の奥で途切れた。
つんざくような轟音とともに、ガラスが砕け、液体が奔流となって外へと逃げていった。
光。空気。重さ。
そのすべてが一度に押し寄せてーー
わたしは生まれた。
焼けるような痛み。
温かい液体を吐き出し、冷たい何かが流れ込む。
吐く。
吸う。
そして吐くーー
ぎこちなく、けれど確かに呼吸ができている。
深呼吸で息を整えていく。
呼吸とともに意識も落ち着いてきた。
なんでこんなことになってんだ
トラック、、そうトラックに――
そして、、そして、、、、、、、、、
現状を把握しようと頭をフル回転している。
そんなさなか、ガラスの奥にいる誰かに、いや、それに目を奪われる。
裸の、男性とも女性ともいえない中性的な顔立ちをした容姿端麗に見える。
だが、そんなことが気にならないくらいの嫌悪感が襲う。
それはところどころ肌から覗かせる金属ーー
生物にあるはずのないメタリックな人工物のせいだ。
よく見ると顔や腕に人工的な直線の切れ込みがある。
人工物が過度に人間に近いたために起きる嫌悪感、不思議の谷現象をそのまま表したような
そんな冒涜的なそれがわたしを見つめている。
恐怖に足がすくんで、それから逃れようとしてつまずく。
問題なのはその時に金属音が鳴ったこと、
そしてガラスの奥のそれも同じく動き出してつまずいていること。
落ち着き始めた呼吸がまた荒くなる
あぁ――理解した。
それはわたし
このつぎはぎが――
機械仕掛けの人形がわたし
落ち着け
ただ体に機械がまじってるだけだ、
どうってことない
自分に言い聞かせる。
それでも呼吸はいまだ荒れ狂っている。
ガラスの反射ではなく直接自分の腕を見て、手を動かす。
腕をひねり、こぶしを握る。
うん、わたしの腕だ
こんなメタリックな腕でも――




