60 戦いの理屈
アメノミカゲ:ノブテル・ミズマ専用人型機と南側決戦機(輝聖教使徒専用型)の
激闘は続いていた。
だが、当のノブテル・ミズマはいらだっていた。
南側決戦機の攻撃がしつこいことにである。
相手は、戦艦並みのシールドを右拳にまとわせて殴りかかってくる。
アメノミカゲのハンマーも同じ理屈なので互角となる。
ハンマーには常に展開していたが、側面に展開するのは任意となる為、
そこを狙われると後手に回る。
その為今回は左腕が潰されたのだ。
ハンマー全体を常にシールド展開できればいいのだが、
今回はm.a.u.s Systemを使用していたので燃費が悪くなり
展開できなくなっていた。
「正直邪魔くさいなコイツ」
ノブテル・ミズマはいらだっていた。
本人はマイペースを好み、困っている人がいれば手貸ししてしまうお人よしでもある。
その言い分も「目障りだし、見捨てるとオレの精神衛生上よくないからだ」
と言う。
要は、お人よしで優しいのだ。
勿論、本人はそう言われると
「違う優しくなんかない。
後々気になって仕方ないからだ。オレ自身の為だ」
と言い切る。
それが、お人よしで優しいという事なのに。
そのくせ、面倒事を嫌う。
訳が分からないのだ。
当人は至って真面目なだのだが…
ノブテル・ミズマは、目の前の人型機を見据え、
「お前もしつこいんだよ!!」
南側決戦機の右拳をアメノミカゲの壊れた左腕で外側に受け流す。
勿論、無傷では済まない。
南側決戦機の右拳が纏うシールドでアメノミカゲの壊れた左腕は削られる。
手首から肘まで削り取られたが、そのかいあってか右拳は外側にずれた。
そのタイミングでアメノミカゲは右腕のハンマーを南側決戦機の腹部に叩き込む。
南側決戦機の腹部ははじけ飛び、爆発四散する。
そして、視線は更に先を見据えていた。
近くにいた空母にである。
「何が、神だ。
テメエの名前と責任をもって挑みやがれ」
そう言うと、そのまま空母に向う。
敵一般機と数回戦い、空母の甲板に降りるとそのまま甲板に右腕ハンマーを叩きつける。
めり込んだハンマーを振り抜き、甲板をえぐり取った。
その抉り取った甲板の穴に背中を向け、背中についた重粒子砲二門を撃ち放つ。
ビームは空母を貫き、火花と爆発を起こすが、撃沈までは至らない。
それを確認したノブテル・ミズマは、
「これで逃げれないだろ、後は勝手にしろ」
と言い捨てて、その場を離脱する。
その後、南側は抵抗できず瓦解して、騒動は終わりを告げた。
帰還した二人を西側の軍人たちが歓声で迎えた。
敗戦濃厚を覆したのだ、当たり前のと言えば当たり前の歓喜である。
ノムイッカ・ラシタは、それに答えるように話してたり、手を振っていた。
ノブテル・ミズマは、手を振るが真剣な顔つきは崩さなかった。
歓喜の中、悔しそうに自分の機体に視線をむけていた。
二人が艦橋に入ると上位軍人たちが出迎えた。
最初とは全く違う手のひら返しの態度で。
ノムイッカ・ラシタは愛想よく対応したが、
ノブテル・ミズマは不満げだった。
それを察したテノール・フォム・バースピリは、
二人を休ませたいといい、早々に切り上げさせた。
代理戦用戦艦に乗り込みチームのメンバーは一息つく。
機体の積み込みが始まっている中、各員は疲れ果てていた。
戦争を肌で感じ、その中にいたのだ。
代理戦であっても命の危険はある。
代理戦の緊張感とは違う緊張感の中に居たせいでメンバーの
精神的な疲労が大きくみんな疲れ果てていた。
その中でノブテル・ミズマはいらだっていた。
その彼にソプラ・バリトンが声をかけた。
「作戦は上手くいました。
ありがとうございます」
「そうだな」
ぶっきらぼうに返す彼に
「気に入りませんか?
今回の結果が…」
ソプラ・バリトンの優しい眼で彼を見つめる。
「ああ、気に入らない。
何のための代理戦なんだよ。
戦争を起こさない為じゃなかったのか?
なのに奴らが、こんな事起こさなけりゃ…」
ノブテル・ミズマは苦虫をかみつぶしたような顔でしかめた。
「…そうですね。
そうすれば被害は出なかったかもしれません。
でも別の意味での被害者は増えたかもしれません」
ソプラ・バリトンは言葉を静かに紡ぐ。
「どういう意味だ?」
「彼らは、信者を兵器の部品にしました。
今回の騒動を起こさなければ、更にその被害者が増えたかもしれません。
それをとどめた、とは思えませんか?」
「そ、それは…」
彼は、言葉に困った。
『それは結果論だ』
と、言いたかったが言えなかった。
言っても仕方ない事だと割り切っていたから。
理解はできた、でも納得はできなかった。
その矛先に困っているだけだとも理解できていた。
タダの癇癪でしかないことも分かっていた。
そして…
「そうですよね、代理戦で話を付けるって決めたのに破られたら迷惑ですよね。
ですけど、今回の紛争で救われた人もたくさんいます。
戦争を肯定するつもりはありません。
でも、救われた人や助かった人はいます。
アナタたちは、それに尽力した。それで納得していただけませんか?」
ソプラ・バリトンは、優しく、静かに語る。
「分かってはいる。オレの気持ち次第だという事も。
何でも救えるわけじゃないことも、ただ…」
ノブテル・ミズマはうなだれた。
「しょうがないわな、オレたちは神様じゃない。
割り切るしかない」
ノムイッカ・ラシタが言葉をつなぐ。
「そうね、次からはこんなことが起きないようにしてもらうしかないわ」
ジャスタ・ホワイトがつなぐ。
「この戦いに意味はある。
この痛みを知ることが大事なのだろう。
そして、その痛みを忘れないこと」
モハリド・アードをつぶやく。
「出来る事をやったんだそれでいいだろう。
できないことはどうやったって出来なんだから」
キム・リーロンは体を伸ばしながら言うと
「そうよ~、深く考えても~ダメなものはダメなのよ~。
次があるんだから~、次に生かせばいいのよ~」
チュク・ロイドカンが、会話に入る。
「そうです。あなた一人が責任を感じる必要はありません。
終わったことです。
それでも気に入らなければ次に生かして下さい。
期待しています」
ソプラ・バリトンは優しい笑みを浮かべていた。




