57 非常識
異形の人型機の中で
パイロットはつぶやいていた。
「理不尽を作り出しておいて、今更被害者面かよ。
戦争を…人を陥れる奴らはどいつもこいつも。
痛い思いもせず、命令するだけ。
モニターの向こうで映画やドラマを見るみたいに見るだけ。
安全な場所から言葉の刃を向けるだけ。
何でも神様に責任押し付けて逃げるだけ。
当事者意識のかけらもない加害者共が!!」
目の前に広がる火花と煙の向こうにいる南側最新機:ネオリアⅡ5機に
囲まれた空母を見据えていた。
南側最新機:ネオリアⅡ5機が、小型自動砲台:クリオネを展開して
残骸の上に立つ異形の人型機に襲い掛かる。
無数の光の針が異形の人型機に突き刺さる。
無数の爆発が起こる。
だが、その爆発すらも目視可能なくらいシールドが阻む。
今度は、異形の人型機が動く。
アンカーを撃ち出し、近くのネオリアⅡに引っ掛け、すぐに巻き取りを始める。
ネオリアⅡに向けて異形の人型機がその右腕を振り抜く。
ネオリアⅡはひしゃげ、爆発四散する。
異形の人型機は使ったアンカーをパージして新たなアンカーを撃ち出す。
次のネオリアⅡを捕まえる。
クリオネが、させじと砲撃してゆく手を阻む。
その砲撃をシールドがはじく。
そして、狙いすましたようにクリオネを狩るものが動き出す。
m.a.u.s Systemが、獲物に予測照準をかけ撃ち始める。
クリオネを予測ポイントに誘導するように撃ち、撃墜していく。
本体である異形の人型機と違う動きをするシステムに
翻弄され撃ち落とされるクリオネ。
クリオネの砲撃が当たらないわけではない。
むしろ、当たっている。
強力なシールドが阻んでいるだけだ。
クリオネは、小型である為シールドは張れない。
砲撃して移動してを行う為、バッテリーの消費が激しい為だ。
相手のシールドを複数攻撃で撃ち抜いているのだ。
手数の多さを利用していた。
目の前の相手は、それができない。
異常なまでの頑丈さを誇る。
手数だけではどうしようもない。
その上、クリオネを迎撃する為のシステムまで搭載している。
これでは、いくら優位を誇っても勝てない。
魔人と呼ばれる訳も分かる。
こんなバカげたスペックとバカげた手段の取る人間などいない。
だが目の前にそれを現実の物として立ちふさがる人間がいた。
異常な考え方を実行出来る異端者が…
南側空母から一機出撃する。
その異端者と戦う為の神の使徒を。
その姿は、
右腕にガントレットを
左腕にライフルとミサイルを付けた歪な人型機。
機体バランスなど無視したその機体が、今動き出した。
目の前で展開している味方機を気にせず、ミサイルを撃つ。
そのミサイルの餌食となるネオリアⅡ。
その機体を捕まえ盾にして、異形の人型機に肉薄する。
既に3機を屠った異形の人型機は、突然接近するネオリアⅡに驚く。
その一瞬をついて異形の人型機の左側に衝撃が走る。
右側に飛ばされた異形の人型機に更にネオリアⅡがぶつかる。
そして、ネオリアⅡをビームが突き抜けてくる。
シールドの使い過ぎで左腕のハンマーで受けるが、その衝撃とネオリアⅡの爆発で
目の前にいるはずの敵を見失う。
異形の人型機を操るノブテル・ミズマの顔に焦りが見える。
相手の考えが分からないからだ。
まるで目の前の相手を倒すためならどんなことをしていいいような考え方に。
『人が考える戦い方じゃねえだろ』
機体を制御をしながら、レーダーを確認する。
敵は、アメノミカゲ:ノブテル・ミズマ専用人型機を追いかけてきている。
味方もお構いなしで攻撃してくる。
明らかに今までとは違う戦い方だ。
『オレも大概だがコイツはその上を行ってやがる』
長期戦闘で疲れが見え始めているノブテル・ミズマは、思考が纏まらないでいた。
異常な奇襲に疲れが重なり、僅かに反応が遅れているのだ。
更に砲撃が追撃してくる。
予測できていたのかその攻撃を左腕側面でいなす。
爆発から後ろに飛ばされながら防御をして煙の向こうから現れる人型機を確認した。
「そうかい、テメエらもオレ対策してきてくれてんかよ!」
ノブテル・ミズマは狂暴な笑みを浮かべる。
使い物にならない人型機、欠陥機と言いながらも最終的に立ちふさがるのは、
同じ人型を選んでくる敵。
バカにする割に同じ欠陥機を使ってくることにバカらしさがこみ上げてくる。
宇宙戦闘だろうが、艦隊戦だろうが、戦略だろうが、最後に立ちふさがるのは、
シンプルなガチンコになるなんて誰も思わなかったのだろう。
向かってくる相手に後方に流されながらも
「せめて、人として終わられてやる!」
と、言ってアメノミカゲを前に進ませる。
撃ち込まれるビームを左腕側面で受けながら突っ込むアメノミカゲ。
南側人型機は、望むところ言うように真正面から向かっていく。
右手でガンガンと殴りつけてくる。お構いなしに。
左手は、隙間にライフルをねじ込もうとしながらも絶えずビームを撃つ。
戦い方に一貫性が無い。
「いてぇな!ガンガンと響くんだよ」
吠えながらもノブテル・ミズマは、
アメノミカゲの右腕を目の前の人型機にねじ込む。
右腕のハンマーが人型機の左肩を吹き飛ばす。
その衝撃にわずかに後ろに下がる人型機だったが、
お構いなしに前に出て右腕を叩き込む。
人型機の強化されていた右拳が、アメノミカゲの左腕側面に突き刺さる。
殴ることをやめない人型機は、アメノミカゲの左腕側面を殴り切る。
「やってくれるな!てめえ!」
殴ることをやめない人型機の右拳にアメノミカゲの右腕のハンマーが迎え撃つ。
お互いの右を叩きつけ合う。
防御もへったくれも無いどつき合いである。
それも右拳と右腕ハンマーが。
何処の
熱血格闘ものか、と思うほどの展開だ。
だが、ここは戦場。
熱い力比べをするアメノミカゲの後ろに最後に残ったネオリアⅡの銃口が向く。
小型自動砲台:クリオネはもうない。
だが、ネオリアⅡ自身の武器はまだあるのだ。
光の線が機体を突き抜ける。
光が突き抜けた機体は、爆発四散する。
そこに通信が入る。
「何、熱血格闘してんだよ!!ここ戦場だよ、場所くらいわきまえろよな!」
ノムイッカ・ラシタが呆れたという感じで話した。




