56 蹂躙
南側では混乱が生じた。
ネオリアを撃墜した戦場に虎の子であるネオリアⅡを向かわせた。
ネオリアよりも反応速度と性能を向上させた技術部の自慢の機体だ。
例え、ネオリアを圧倒したとしてもものの数ではない。
更に圧倒して見せれば済むだけなのだから。
だが、その自信は打ち砕かれた。
まさか、瞬殺されるとは思いもしなかったからだ。
「ば、バカな」
技術部の人間たちは、驚きを隠せない。
負けるはずの無いネオリアⅡ。
彼らの絶対の自信作であり、驚異の性能を誇る機体。
それが瞬殺されたのだ。
「何故だ何故だ何故だ」
技術部の人間たちは、状況を整理するために撃墜されたネオリアⅡから
送られてきた情報の精査に入る。
今でも撃墜されたことは信じられないが、それは現実なのだ。
ならば、「どうして、どんな敵に」を原因追及に入る。
「回避行動急げ」
艦長の声が響く。
それ以上に空母の中では騒ぎが起こる。
迫りくる岩石の回避行動に大慌てなのだ。
慌ただしく動くクルーたち。
岩石の予測位置を計算し、回避運動に入る。
「何故、こうも追い詰められる!
敵は、どこにいた?
何をやっている貴様ら!
神の名の元に命ずる早く対処せんか!!」
更に、司祭長が喚き散らすという冷静な人間がいない状況と化した。
迫る岩石を回避する空母。
瞬殺されたネオリアⅡの事などもう眼中になかった。
「急ぎネオリアⅡを呼び戻せ、まだ敵はいるんだ。
今度こそネオリアⅡの力を示すんだ!」
技術部の人間たちは、もう一つのネオリアⅡの一団を呼び戻していた。
あの岩石の傍に何かがいる事は確定だ。
その何かが、今、空母に迫る。
ならばその何かに対処する為に虎の子であるネオリアⅡが必要となる。
ネオリアⅡの一団は、一般機を置いて引き返す。
空母は何とか回避行動をとり、
岩石を避けるがその裏に潜む脅威に気づけていなかった。
岩石の裏側から飛び出す機影が、空母の側面に突き刺さる。
当たり所が悪いのか、そのまま爆発炎上を始めた。
更に別の空母に機影が移動する。
空母の後方エンジン部を向けて突っ込んでくる。
そのまま、エンジン部を破壊しそのまま空母自体を吹き飛ばした。
轟沈した。
突然のことに残った空母と半壊した空母では混乱していた。
「乗組員の退艦を急がせろ!
もうこの艦はもたん!」
艦長は各員の退艦を急がせる。
半壊なのだが、すでにエンジンは火を噴いている。
完全に沈むまでそう時間はない。
半壊した空母は、脱出動いている。
敵の存在になど気にしていられない。
「何が起きている状況を確認しろ!
それから、脱出した味方の受け入れを急げ、
戦艦と支援艦にも連絡しろ!」
艦長の怒号が艦橋に響く。
残った空母は、敵を探し状況把握に大忙しだ。
そして、技術部の人間たちは、ネオリアⅡの呼び戻しに躍起になっていた。
「ネオリアⅡの空母近くに展開出来ました!」
「ならば敵を探せ!先ほど撃沈された空母の近くにいるはずだ。
探せ!!」
技術部の人間たちは、
近くにいると思われる敵を探す。
「誰か答えんか!
何が起きている!!」
司祭長はただ騒ぐだけで邪魔でしかない。
その中で
「敵機を確認!!
敵は一機!!弐番艦の傍に居ます。
識別信号確認!こ、これは西側代理戦【狂気の圧殺者】です!!!」
オペレーターの声が艦橋内に響く。
誰もが息を飲み、静まり返る艦橋内。
敵がいるのは理解できていた。
それが、まさか悪名高き【狂気の圧殺者】だ。
北側艦隊を殲滅し、南側代理戦でも脅威となった相手である。
悪夢と死をまき散らす西側の魔人。
それがすぐそばにいるのだ。
絶望が艦橋内を包む。
「何を静まり返る!!
まだ、ネオリアⅡが展開しているのだろう!
不意打ちで無ければ我らが使徒が負けるはずないだろう!!!」
司祭長の声が響く。
われに返る乗組員たち。
「そうだ、出撃した戦闘機を戻らせろ!!
西側の魔人と言えど、たかが一機だ!
まだ負けたわけだはない!!」
艦長の言葉がとどろく。
強がりなのは誰もが分かる。
一撃で空母を沈める相手だ。
いつこの艦も沈められるかわからない状況で、
艦長は強気に指示を出す。
まだ、負けたわけじゃない。
技術部の人間たちは、腹をくくる。
この状況で逃げ切ることは難しい。
出す予定じゃない機体が一つだけある。
それも対【狂気の圧殺者】用に作り上げた機体だ。
代理戦で惨敗した後に調整された機体。
北側と西側の戦いで唯一【狂気の圧殺者】にダメージを与えた機体。
それに似通った機体を準備はしていた。
技術部の人間たちの方針とは異なるが、保険として作り上げた機体。
それの準備に入る。
この状況で四の五の言っている暇はない。
生体端末を使い、砲撃戦と格闘戦に特化した人型機。
人が作り出した異物、それが今目覚めようとしていた。




