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第四話 最善の世界 -Only_Sensitive_Existence- ②

 落下を続ける二人は空中で身をひねりながら、なんとかして背中を合わせた。

 一つに結わった髪を強風に煽られながら、ソラは笑いながら問うた。

「後悔はしていないかい、カナ?」

「何をですか?」

「本当なら僕なんかに付き合わずに、あそこでデータ冬眠に戻ることも出来ただろうに」

「まさか。わたし今、最高にわくわくしてるんですよ?」

「らしくないね。君がそんなことを言うなんて」

「そうですね。あなたと出会わなければ、こんな気持ちは覚えなかったでしょう」

 カナタは頷くと、静かに続けた。

「実を言えば、この世界はただの夢だと思ってた。九十億年を隔てた四月八日と九日の間に横たわる、あっというまの時間。魂の仮の宿。現生人類とか、幽体人類とか、そういうのにも興味がなかった。さっさとトーテムの業務を終えて、わたしはすぐにデータ冬眠に戻るつもりでさえいました。わたしにとっての現実は、お兄ちゃんのいる〝明日〟だけだったから」

 ソラは、真剣な顔をしてそれを聞いていた。

「でもわたしは、再建途中のバルドで色んなものを見聞きし、感じた。現生人類との望まない戦争に参加して、廃棄された空中都市に墜落して、長い旅をする羽目になった。そしてこの世界の美しいところとか、醜いところとか、そういう決して忘れられないような光景をたくさん瞳に刻んだ。この世界が夢でも、本当でも、それに心を動かされたわたしの意識だけはきっと本物だから……」

 そこで一息挟んで瞳を閉じると、カナタは続ける。

「今は、それがとても楽しい。あなたとなら、またそれができる」

 再び瞼を開いたカナタは、これまでにない最高の笑顔を浮かべていた。

 そうして最後に大きく息を吸い込むと、強い口調でソラに言い放つ。

「見に行きましょう。この世界を、余すことなく」

 それを聞くと、ソラは楽しそうに口角を吊り上げた。

 何も言わず、ガトリングガンを展開した機械兵装を構える。

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