表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
九十億年のカナタ/新世界系少女ふたり旅  作者: 朝野神棲
第三話 現世人類のアタラクシア
46/64

幕間ⅱ 相互不干渉のダーザイン ②

 その空域では、百機以上にも及ぶトーテムたちが飛び交っていた。

 戦況は、一言で言っても阿鼻叫喚だった。

 三次元的に空を移動する小さな影たちに、次々と急所を貫かれては墜落していく。

 ほとんど瞬間移動のように空を駆ける敵たちの姿を、カナタはすぐには把握できなかった。

「! 接近警報!」

 ぼうっとしていたカナタは表情を変えると、武器である実体剣を引き抜いた。

 危ないところで、敵の斬撃を防ぐことに成功する。

 ぎりぎりと鍔を競り合うことで、ようやくカナタは自分と切り結ぶ相手の姿を認識した。

 そして武器を振り下ろす敵の姿は――自分と大差のない同い年くらいの美少女だった。

「ヒト……!」

 驚愕したカナタは、外部スピーカーに切り替えるとエスペラント語で叫んだ。

『あなたが、ホモ=ヌーメノン?』

「だとしたら、なんだ!」という声が返ってくる。

『わたしの知ったことじゃありません! Noeランタイム適用! 人工単子顕現!』

 内骨格に自分の身体の表象を浮かび上がらせたカナタは、左脚で少女を蹴り上げた。

 少女はぬるりとそれを避けると、カナタの背後にまわった。

『――ッ!』

 カナタは反射的にスラスターを吹かして少女から距離をとった。間一髪で刺突を免れる。

 カナタは武器を構え直しながら、少女へと再接近していった。

 わたしは、こんなわけのわからないことにこれ以上付き合うつもりは無い!

 こんな世界、さっさとおさらばして、元通りの明日に帰るんだ!

 決して交わることのない二人の宇宙が、剣を切り結ぶ。

 すると二人の上空が、真っ白に染まり上がる。

 トーテムかヌーメノンかは分からないが、誰かが戦略兵器を投入し始めたのだ。

 少女はカナタと格闘しながら、非難するように声を張り上げた。

「あんたたちは、あんなものまで使うのか!」

『こんなの知りません! 彼らが勝手に――ッ!』

 そこまで言ったところで、バーチャルコクピット内に新しい警告が表示される。

『偏重力警報! 重力鋲が崩されたのッ?』

 すぐに二人は、見えない力によって大きく姿勢を崩した。

「なんだよっ、これ……ッ!」

『あなたたちの無思慮のせいでッ!』

 同時にたけりながら、懐に入りあった二人が最後の攻撃に出る。

 結果は相討ちだった。

 カナタは少女の身体を組み伏せ、少女はカナタの推進器を破壊していた。

 それと同じ瞬間、二人のいる空域を支えていた重力鋲が完全に破損した。

 異常な強重力が発生し、周辺の構造物やヌーメノン、トーテムたちを潰し崩していく。

『この大バカ! もういいからしっかり掴まってなさい!』

「バカはそっちだ! トーテムのあんたが、新人類ぼくらを助けようだなんて――」

『うるさい! 大人しくしてて! 別にわたしは、殺し合うつもりなんてないんです!』

 二人は組み合ったまま、外殻と地上とを結ぶ宇宙塔の外壁へと急降下していった。

 鼓膜を破るようなけたたましい衝突音ののち、世界は再び静寂に還った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ