第三話 現世人類のアタラクシア ⑬
着々と出立の準備は進んだ。
次に二人が足を運んだのは、地球再建事業のメカニックたちのもとだった。
修繕中のレシーバーが立ち並ぶ整備場で、改修を終えたカナタの躯体とともに姫野サヲリが待っていた。
「完成したよ。トーテム=ビバスバット、キミのために用意した新しい憑依媒体。疑似霊晶炉の代わりにアルマの器を動力に据えることで、外骨格装備状態でも内骨格に人工単子を呼び出せるようになった。あとはPHBメモリを並列化するだけだよ」
カナタの新しい器となる躯体は、修理が終わったというよりも、むしろまったくの新躯体となっていた。良くも悪くも機械的なシルエットを持っていたかつてのトーテムは見る影もなく、ツヤと丸みを帯びた先駆的な形状に置き換わっている。
それ自体がタッチパネルディスプレイである外装には、躯体状態を示す様々な幾何学模様や文字表示が踊る。関節の隙間から覗く霊晶製の透明な内骨格だけが変わらずにいた。
それを見たソラは、「内骨格は変わらないんだね」と言った。
「レシーバーシステムのアップデートは外骨格に重きが置かれてるんです」
そう説明してから、カナタは姫野のほうに向き直った。
「織姫さん、二つほど頼みがあるんです」
「なんだい? 私にできることなら、なんでも」
カナタは一本のPHBメモリを差し出して言った。
地図データの入ったものではない、もう一つのメモリ。
「旅の途中で知り合ったレシーバーのキャッシュデータです。ビシュバカルマンの一般機で、個体名はプルトンといいます。空きの端末ができたら、彼を呼び出して欲しいのです」
姫野は二つ返事でそれを受け取った。
「ん、分かった。二つ目はなにかな?」
「そのプルトンさんに、伝言を頼んで欲しいのです――」




